カルトっQ!丸刈りータ☆で大脱走

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カルトっQ!丸刈りータ☆で大脱走 』(原題:Super Best Friends、直訳:スーパー・ベスト・フレンズ)はアメリカのコメディ・セントラルのテレビアニメシリーズ『サウスパーク』の第68話(シーズン5第3話)である。2001年7月4日に放送された。監督はトレイ・パーカー、脚本はパーカーとマット・ストーン

内容は新興のカルト宗教への風刺が趣旨であるが、それに対抗する存在として伝統的な宗教を中心とする偉人・神達のグループ「スーパー・ベスト・フレンズ」が初登場する。この中には、イスラム教の預言者であるムハンマドも登場するが、そのためにイスラム教の教えである偶像崇拝の禁止に触れて物議を醸し、一般に再放送などはされない回である。また、このグループには、新宗教であるモルモン教ジョセフ・スミスや、アクアマン(アメコミのヒーロー)に似た[1]シーマン(Sea Man)も含まれているといったジョークもある。

記念回の第200話でスタンの言う「デビッド・ブレインの宗教団体の件」とはこのエピソードのことである。

あらすじ[編集]

ストリート・マジシャンのデビッド・ブレインがサウスパークにやってくる。彼は鮮やかな手品で住民達を魅了し、セミナーに参加すれば同じように手品が使えるようになると宣伝する。しかし、これはブレインが教祖を務める新興宗教団体「ブレイントロジー」の罠であり、セミナーに参加した主人公4人組とバターズは、司会者の言うがまま入団してしまう。おかしいと思ったスタンはすぐに脱会するものの、完全に洗脳されたカイルは残ることを宣言する。教団から命を狙われたスタンはイエス・キリストに相談し、かねてよりカルト教団に危機感を持っていたイエスは快く協力する。

スタンとイエスは、新しい信者の獲得を目論むブレイントロジーのデンバーでの集会に突入し、ブレインの手品に対し、イエスは魚とパンを増やす奇跡を行う。しかし、古臭く胡散臭いイエスの手品よりブレインの鮮やかな手品の方がウケ、スタンらの目論見は失敗してしまう。ブレインの実力を知ったイエスは自分一人では手に負えないことを認め、同じ伝統的な宗教の偉人達の集まりである「スーパー・ベスト・フレンズ」で対応することを決める。

その頃、ブレイントロジーは、連邦政府に対し免税特権のある正式な宗教団体と認定されるため活動を行っていたが、却下される。そこでブレインは信者達にワシントンD.C.まで行進させ、抗議の集団自殺の実行を命令する。これを聞いたカイルは教団が間違っていることに気付き、カートマンに共に脱会するよう持ちかける。賛成したカートマンであったが、教団に密告し、カイルは透明なプラスチック製のドームに閉じ込められてしまう。

リンカーン記念館前に集結した信者達はリフレクティング・プールで溺死という集団自殺を決行し始める(しかし、池の水深は1フィートしかないため、うつ伏せになって死ぬまで我慢する必要がある)。次々と信者達が自殺する中、カートマンはカイルのドームにホースで水を入れ始め溺死させようとする。

スーパー・ベスト・フレンズが到着し、ブレインを止めようとするが、ブレインはリンカーン像を動かして迎え撃つ。一方、スタンはプールの中でカイルを捜し始め、ケニーの死体を発見する。いつものパターンで「なんてこった、ケニーが殺されちゃった!」と叫ぶと、カイルが「この人でなし!」と呼応したため、この掛け声を頼りにスタンはカイルを見つけ出すことに成功する。しかし、スタンではドームからカイルを救出することができない。

街を破壊しつくすリンカーン像に苦戦するイエスらはモーゼに助言を求め、モーゼは対応策としてジョン・ウィルクス・ブース像の作成を提案する。イエスらは瞬く間にブース像を造り上げ、リンカーン像を倒す。また、この時の衝撃で、カイルのドームが破壊され、カイルも助かる。さらにイエスらはこれ以上の犠牲者を出さないためにプールを凍結させ、泳ぐのが苦手で長時間水中で我慢できなかったカートマンも死なずに済んだ。

すべての打つ手を失ったブレインは捨て台詞を吐くと、用意していたロケット艇で逃げ出す。途方に暮れる信者たちを前にスタンは「金銭の要求や自殺を強要する宗教は間違ってる」「宗教にはそれぞれの教義があるがそれらを互いに認め合い協力しよう」とスピーチし、カイルと仲直りする。

ブレイントロジー[編集]

作中に登場するブレイントロジーは架空の宗教団体であるが、DVDコメンタリーのパーカーの解説によれば、モデルはサイエントロジーである。なお、デビッド・ブレインは実在のマジシャンであるが、当然のことながらサイエントロジーとは何の関係もない。サイエントロジーに関してはその後もしばしばそれを揶揄するネタが挿入されたが、第137話(シーズン9第12話)『クローゼットで捕まえて』(原題:Trapped in the Closet)では、サイエントロジーが実名で登場し、1話全部を使って皮肉られている。

ムハンマドの登場[編集]

ムハンマド本人が登場するために、2011年現在、サウスパークのウェブサイトにて、この回を見ることは不可能である[2]

後にしばしばサウスパークではムハンマドの登場がネタになっており、どうしても登場せざるをえない時には検閲の黒塗りといった表現で登場しているが、この回に限っては中東系の男性という風体でムハンマドが出ていた。

脚注[編集]

  1. ^ Amos N. Guiora, Freedom From Religion: Rights and National Security, Oxford Univ Pr, 2011, p. 128.
  2. ^ Douthat, Ross (2010年4月25日). “Not Even in South Park?”. New York Times. http://www.nytimes.com/2010/04/26/opinion/26douthat.html 

外部リンク[編集]