キリスト教系の新宗教
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
キリスト教系の新宗教では、キリスト教の系列の新宗教について解説する。
目次 |
[編集] 異端と異教
ユダヤ教内の改革運動として始まったキリスト教は、伝統宗教として確立する以前から、絶えず正統と異端の対立によって自己規定を更新してきた。伝統宗教としてのキリスト教内部では、ニカイア・コンスタンティノポリス信条を告白する宗教集団がキリスト教であり、この中にあってキリスト教としての自己認識を保ちつつ正統教義から自覚的に逸脱するものを異端、教団外部にあるものを異教と呼ぶ。
[編集] 広義のキリスト教と新宗教
これに対して宗教学の立場からは、広義のキリスト教、すなわち聖書を経典としキリストを唯一の救世主と認める宗教を一般にキリスト教と認めようとする立場もある。またそのような広義のキリスト教に対して、聖書より上位の立場にある経典をもつ教団を「キリスト教系」または「キリスト教派生」という場合もある。
後者の立場からは、伝統宗教としてのキリスト教から分岐した、もしくはなんらかの影響を受けて成立したと考える新宗教 (いわゆる新興宗教) は、キリスト教系の新宗教であると表現される。
これに対して前者の立場からは、伝統宗教の外部に多数の「異教」こと新宗教があると考えられる。
[編集] 新宗教側の主張
キリスト教系の新宗教の中には、歴史的連続性をもつ伝統宗教は本来の教義から離れており、その教団設立の歴史とは別の信仰の次元で、自分たちの教義は初期キリスト教との連続性を持っており、自分たちこそ唯一正統な「キリスト教」であると考えるものも多く見られる。なおこの「非歴史的連続性・教義的連続性」の意識の傾向は一般にキリスト教と見られる一部プロテスタント教会にもしばしば見出される。ただし、プロテスタント正統主義の教理的連続性を保つ教会が新宗教と呼ばれることはないので、キリスト教と新宗教の相違は、歴史的キリスト教会の正統教理を認めるか否かにあるかといえる。
[編集] 近年の動き
なおニカイア・コンスタンティノポリス信条を告白する教会の間では、互いの教説を異端とみなしつつも宗教運動としての同根性を認め、関係を修復しようとする試みが千年以上に渡って持たれて来たが、それらの試みは近代に到るまでほとんど実効を有さなかった。しかし20世紀より、差異よりも同根性や類似性に着目し、相互理解を促進し継続的な対話をもち、キリスト教としての一体性を回復しようとする傾向が見られる。例えばカトリックの第2ヴァティカン公会議には他教派の神学者もオブザーバーとして招待された。東方教会においては、非カルケドン派(単性論教会)と正教会の交流、ネストリオス派教会(アッシリア教会)と正教会などの間に対話がもたれている。わけても全世界的な運動として、世界キリスト教評議会における教派間の交流をあげることができる。こうした教派間の交流のなかでもローマ教皇とコンスタンディヌーポリ総主教の相互破門の解消は、いまだ教義上の一致を見ないとはいえ、キリスト教会史最大の対立である東西教会の分裂解消に向けた、キリスト教史上特筆すべき事柄といえる。
また2000年のローマ・カトリックの聖年では、カトリック、プロテスタント連盟、正教会が合同で『ルカによる福音書』の多言語版を作成しイタリア国内のホテルに備え付けるという試みがなされている[1][2]。このような動きは、新宗教の隆盛に際して伝統宗教の側が自らの伝統性を再確認する動きともいえ、新宗教の影響のひとつとみなすこともできるだろう[要出典]。
[編集] 成立史についての考察
歴史的なキリスト教会は、異端が興ってきた時、これに対抗し、聖書に基づいて真理を定義するため信条を作成した。また、宗教改革時代のローマ・カトリック教会は聖書に基づかない付加的な教義を持っていた。このためプロテスタントは聖書に基づいて信仰告白を作成した[3]。マルティン・ルターの「聖書のみ」は教会の伝統のうち、聖書に基づかない教義を排除し、ローマ・カトリックの解釈の準拠枠を外して、神のことばである聖書の福音を取り出そうと企図した。この解釈戦略はほとんどのプロテスタント教会に採用される。
グーテンベルクの活版印刷によって供給された大量の聖書は、このため基本的に解説を持たない。たとえばルター訳聖書は、聖書文書それぞれに序文を付すのみで、本文には特段の注釈をつけていない。ルターやカルヴァンといったプロテスタント神学者の聖書解釈に飽き足らない、啓蒙思想とその影響を受けた自由主義神学が登場するまでは、聖書の権威は認められ、プロテスタントは正統教理の枠内にとどまっていたが、自由主義神学の高等批評は正統教理にとらわれない、聖書の多様な私的解釈を許すことになった。そして、独自の読みを立てる集団、すなわち数々の宗派を生み出していく。
近世以降の西ヨーロッパにおける、聖書解釈のこのような多様性に、キリスト教派生の新宗教の数が多い一因はもとめられよう。
またエキュメニズムは諸宗教との積極的なダイアローグを行っており、世界教会協議会では混合宗教(シンクレティズム)が中心的議題であった。エキュメニカル運動の宗教多元主義が新宗教の誕生に至ると指摘されている[4]。
キリスト教系の新宗教は歴史的キリスト教会が定義してきた信条と信仰告白を否定するところに特徴がある。
[編集] 新宗教で、キリスト教系に分類されるもの
- 末日聖徒イエス・キリスト教会 (モルモン教)
- 世界基督教統一神霊協会 (統一協会)
- 原始福音(神の幕屋)
このうち、エホバの証人、モルモン教、統一協会は、キリスト教界において一般に三大異端と呼ばれる[5]。
[編集] 脚注
- ^ World Report 352, July/August, 2000 - O-21 Momentum Grows Worldwide, United Bible Societies, 2000年7-8月号、2008年8月12日閲覧。
- ^ World Report 332, Europe-Middle East Region, United Bible Societies, 1998年7-8月号、2008年8月12日閲覧。
- ^ ロイドジョンズ『教会とは何か』いのちのことば社
- ^ 宇田進『現代福音主義神学』いのちのことば社
- ^ 尾形守『異端見分けハンドブック』
[編集] 参考文献
- 『異端見分けハンドブック』1998年 尾形守著 プレイズ出版 ISBN 4938764342
- 『「エホバの証人」の教えと聖書の教え』ウィリアム・ウッド著 いのちことば社
- 『「エホバの証人」の反三位一体論に答える』ウィリアム・ウッド著 いのちのことば社
- 『モルモン教とキリスト教』ウィリアム・ウッド著 いのちのことば社
- 『キリストの神性と三位一体』内田和彦著 いのちのことば社
- 『クリスチャンのための諸宗教ハンドブック』いのちのことば社 ISBN 4264015340

