コンチネンタル・ディバイド・トレイル

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コンチネンタル・ディバイド・トレイル
CDTロゴマーク
全長3100mi (4989km)
所在地アメリカ合衆国
指定国立自然歩道(National Scenic Trail)、1978年指定
登山口北側: ウォータートン湖, グレイシャー国立公園, モンタナ州 , カナダ・米国境
南側: クレイジー・クック・モニュメント, ビッグ・ハチェット山地, ニューメキシコ州 , 米・メキシコ国境
用途ハイキング、一部乗馬、一部マウンテンバイク
標高
最高地点グレイズ・ピーク(Grays Peak)、コロラド州、14,278 ft (4,352 m)
最低地点コロンバスニューメキシコ州、3,900 ft (1,200 m)
ハイキング
期間4月から10月
視界大陸分水嶺
危険雪崩土砂崩れ荒天アメリカグマハイイログマピューマ脱水症状低体温症、滑落
ウェブサイトhttp://www.continentaldividetrail.org/
トレイル地図

コンチネンタル・ディバイド・トレイル(Continental Divide Trail、正式名称:Continental Divide National Scenic Trail、略称:CDT)は、メキシコカナダの間の3,100マイル (5,000 km)に及ぶアメリカ合衆国の国立自然歩道英語版である。コンチネンタル・ディバイドとは、アメリカ大陸の分水嶺英語版を意味する。このトレイルは、ロッキー山脈に沿った北米大陸の分水嶺をたどり、モンタナ州アイダホ州ワイオミング州コロラド州ニューメキシコ州の5つの州を通過する。モンタナ州では、トリプル・ディバイド峠(ハドソン湾大西洋太平洋の3つの分水嶺である トリプル・ディバイド・ピーク英語版の近く)を通る。このトレイルは専用歩道と小さな道路の組み合わせからなり、70%程度が整備されている。未整備の部分は、未舗装または舗装道路を歩いて移動する必要がある。このトレイルの北端には、グレート・ディバイド・トレイル英語版が接続しており、カナダ北部のジャスパー国立公園のカクワ湖まで進むことも可能である。

コンチネンタル・ディバイド・トレイルは、アパラチアン・トレイルパシフィック・クレスト・トレイルとともに、スルーハイカー(thru-hiker)愛好家らは、米国の長距離ハイキングのトリプル・クラウン英語版と呼んでいる。

スルーハイキング[編集]

トレイル全体をハイキングしようとする人は年間200人程度で、約6か月かかる。1977年にデイブ・オデルはトレイルを歩き通した、また同じ年にダン・トーピーはニューメキシコ/コロラド州境からカナダのロブソン山まで長距離ハイキングした。ドイツの長距離ライダーであるギュンター・ワムサー(ティエラ・デル・フエゴからアラスカへ行く途中)[1]、およびオーストリアのソニア・エンドルウェーバー(メキシコからの残りの旅で彼に加わった)は、土地管理局英語版の4匹のマスタング(小型の野生馬)とともに完歩した、2007~2009年の3年間の夏季のことである[2]

2009年9月のグレイシャー国立公園

2007年、フランシス・タポン英語版は、コンチネンタル・ディバイド・トレイル(CDT)でラウンド・バックパッキング・ツアー「ヨーヨー」を初めて行った人物である、彼はメキシコからカナダへ行き、その後メキシコへ戻った、これには7か月を要した[3][4][5][6][7]。この7か月の行程は5,600マイル(9,000km)以上に及んだ[8]。タポンは、北へ向かう際には最も遠回りで、風光明媚で、標高が高く、困難なルートを取り、一方、南に戻るときには、より適切なルートを取った[9]アンドリュー・スカーカ英語版は、2007年に6,875マイル(11,064km)のグレート・ウェスタン・ループ英語版の一部としてCDTを組み込み完歩した[10]

CDTを完歩した最年少者はリード・ギョネスである。13歳の彼女は父親のエリック・ギョネスとともに、2013年4月15日~9月6日に、北上するハイキングをおこなった[11][12]

ニューメキシコ州[編集]

サン・イーサイドロ(ニューメキシコ州)英語版近くのラ・リーナ原生自然保護区研究エリアのCDT

ニューメキシコ州のCDTは約700マイル (1,100 km) と長く、水の確保が限られる[13]。このため、地元のボランティアグループが、トレイルに沿った重要ポイントに水の貯蔵所(通常、プラスチック製ガロンボトル)を用意してくれている[14][15]。CDTの南端地点は以下の3つある。1)ビッグ・ハチェット山地英語版の東にあるCDT公式のクレイジー・クック記念碑、2) ニューメキシコ州のアンテロープ・ウェル英語版、3)ニューメキシコ州コロンバス付近。3つすべてが ニューメキシコ州の長靴底英語版内にある。コロンバスの近くの終点は大陸分水界(アニマス山地英語版を参照)ではなく、コロンバスの近隣にあり、その近隣の村は、毎年開催される250マイル (400 km)に及ぶ「ヴィリスタの2国間パレード(Cabalgata Binacional Villista)」の北の終点でもある。

クレイジー・クック記念碑は、CDTの最も一般的に認識されている出発点または終点であるが、そこは遠隔地にあり、宿泊施設やその他のサービスがないため、CDTをハイキングまたはサイクリングする人にとって、コロンバスが正当な代替開始地点または終了地点と見なされている。メキシコのパロマスの国境検問所から3マイル(4.8km)に位置するコロンバスには、2つの質素なホテル、ガソリンスタンド、いくつかの小さなカフェ、米国郵便局、銀行、自動車整備、食料品店 がある。コロンバスには、メキシコの革命家パンチョ・ビリャと彼の支持者「ヴィリスタ(Villista)」による1916年のコロンバスの戦い英語版の際の、国定歴史建造物がある。村には、このコロンバスの戦いと、アメリカ陸軍将軍「ブラックジャック」パーシングが率いたいわゆる「パンチョ・ビリャ遠征英語版」を記念する2つの博物館と州立公園がある。

クレイジー・クック記念碑(公式の南の終点)から、トレイルは山野を行くけもの道として始まる。ローズバーグ(ニューメキシコ州)英語版までの公式ルートは、今後この経路に基づいて調査されるだろう[16]。コロンバスからのルートは、ローズバーグへの遊歩道である。

ニューメキシコ州内CDTのその他の注目すべき点は次のとおりである。

コロラド州[編集]

コロラド州 Weminuche原生自然保護区のCDT

CDTは、コロラド州南部のサンファン山地英語版や中央部のサワッチ山脈英語版など、コロラド州の標高の高い原生山岳地帯の多くを通過する。ほとんどの地域で、トレイルはよく案内標識が整備されている。約200マイル (320 km) は、コロラド・トレイルと共通となっている。CDT自体は、より高い高度で曲がりくねって約650マイル (1,050 km) 続いている。その年の積雪状況とハイカーの個々のスケジュールに応じて、代替ルートを利用できる。雪が続くなどの天候不良を避けるためのサンファン山脈のクリード・カットオフのルートはその例である。コロラド州の「モンスーン期間」である7月と8月下旬には午後に雷雨が発生するので、積雪期と比較考慮しなければならない。コロラド州のCDTは、州内の14,000フィート(4,300 m)級の多くの山へ立ち寄るルートとなっている。州内のCDTには、明確な案内標識がついたトレイルがない区間があるが、ジョナサン・レイやジム・ウルフが発行している地図が役立つ[17]。コロラド州のCDTの一部は、まだ原野の中のトレイルである。

コロラド州内CDTのその他の注目すべき点は次のとおりである[18]

ワイオミング州[編集]

ワイオミング州のグレート・ディバイド盆地では、少し暖かさを伴って、雷と雹の嵐が何の前触れもなく発生する、隠れる場所はない。

CDTが通過する5つの州のうち、ワイオミング州には最も多様な地形がある。そのひとつが、州の中央にあるグレート・ディバイド盆地として知られる広野の大部分をハイキングすることである。ハイカーは、グレート・ディバイド盆地内の分水嶺ルートを決定しなければならない、なぜなら、実際の大陸分水嶺は、内陸流域を形成し、ワイオミング州南部で分岐しているからである。最短ルートは、ほとんどの年で水を補給できない可能性が高い中央を通るルートである。さらに北に行くと、CDTはウインド・リバー山脈の山岳地帯の「ベンチ」を通り、州の北西部のアブサロカ山脈を通過する。グランドフィナーレイエローストーン国立公園で、CDTはイエローストーンの南の奥地からオールド・フェイスフルを経由し、その後西に出てアイダホ州に向かう。

ワイオミング州内のその他の注目すべき点は次のとおりである。

アイダホ州[編集]

レムヒ峠で大陸分水嶺を横切る:ルイス・クラーク探検隊が1805年8月12日に見たのと同じ光景

イエローストーン国立公園を出て、ワイオミング州北の境界から、アイダホ州センテニアル山地に入る。次の数百マイルの間、CDTは大陸分水嶺をたどっていく。この分水嶺はアイダホ州とモンタナ州の境界でもある。次に、トレイルはアナコンダ山脈を通ってモンタナ州ビュートに向かって東に向かう。

アイダホ州内のCDTで注目すべき点は次のとおりである。

モンタナ州[編集]

モンタナ州のボブ・マーシャル原生自然保護区でキャンプするためハイキングしているボランティアら。モンタナ州原生自然協会は、トレイルプログラムであるモンタナ州CDTを通じて無料のボランティア休暇を調整手配している。

CDTのモンタナ州部分は、ほぼ完全に山岳地帯にあり、南部のアイダホ州境に沿って走り、その後ルイス・アンド・クラーク国立森林公園と2つの国立原生地域を経由して、最初はビュートのほうへ東に、そしてグレイシャー国立公園に北に向かう。州内のCDTの約110マイル (177 km) がグレイシャー国立公園を横断している。

モンタナ州内のCDTのその他の注目すべき点は次のとおりである。

モンタナ州原生自然協会(Montana Wilderness Association)は、CDT北部の主要な非営利パートナーである。MWAのスタッフは、献身的なボランティアと代理店パートナーの助けを借りて、モンタナ州とアイダホ州における980マイル(1,580km)のCDTに関連して働いている[19]

脚注[編集]

  1. ^ Wamser, Günter (2007) Der Abenteuerreiter - In 11 Jahren mit Hund und Pferden von Feuerland nach Mexico Verlag Günter Wamser, 384 pages, ISBN 978-3-00-021527-8.
  2. ^ Wamser, Günter / Endlweber, Sonja (2009) Im Wilden Westen - Die Abenteuerreiter unterwegs in den Rocky Mountains Verlag Abenteuerreiter, 432 pages, ISBN 978-3-00-027702-3.
  3. ^ Tilin, Andrew. (June 2008) "The Onion vs. Mr. Magoo - On your mark, get set ... hike. Inside a 5,600-mile footrace on the country's hardest trail.". Backpacker Magazine. Retrieved November 2, 2013.
  4. ^ M. Biggers, Ashley. (March 2008) "There & Back Again", New Mexico Magazine
  5. ^ Bastone, Kelly (August 2008) "Taking the High Way: Thru-hiking the Continental Divide Trail," 5280, pp. 70-73. Denver magazine reports on Francis Tapon's first-ever yo-yo of the CDT.
  6. ^ Wilt, Bernie. "PBP Episode 31 - CDT Yo-Yo". PracticalBackpacking.com. Retrieved November 2, 2013.
  7. ^ Reese, Janet. (19 June 2007). "5 questions for long-distance hiker Francis Tapon". Rocky Mountain News. Retrieved November 2, 2013.
  8. ^ Stienstra, Tom. (March 9, 2008). "Good time to take inventory on gear - and yourself". San Francisco Chronicle. Retrieved November 2, 2013.
  9. ^ Manning, John. (April 8, 2008) "Francis Tapon: The first person to yo-yo America’s wildest trail talks heating, eating and the philosophy of lightweight". TGO Magazine. Retrieved November 2, 2013.
  10. ^ Duane. “2007 Adventurer of the Year: The Walking Man”. National Geographic Adventure. 2012年2月10日閲覧。
  11. ^ "Salem 13-Year-Old Youngest to Hike Triple Crown". Columbian. 4 Nov 2013.
  12. ^ "Ore. Girl, 13, Youngest to Claim Triple Crown". USA Today. 27 Oct 2013.
  13. ^ Bob Julyan, Tom Till, William Stone (2001) New Mexico's Continental Divide Trail: The Official Guide Big Earth Publishing, 320 pages, ISBN 1-56579-331-5.
  14. ^ New Mexico”. Continental Divide Trail Alliance (2008年5月). 2008年10月20日閲覧。
  15. ^ Continental Divide National Scenic Trail”. Bureau of Land Management, New Mexico. 2008年10月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年10月20日閲覧。
  16. ^ Southern Terminus
  17. ^ Continental Divide Trail Society - Marketplace”. www.cdtsociety.org. 2018年3月15日閲覧。
  18. ^ <Colorado's Continental Divide Trail by Tom Loranc Jones & John Fielder Apr 2003>
  19. ^ CDT Montana Volunteer Trail Stewardship Program”. Montana Wilderness Association. 2013年2月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年4月20日閲覧。

関連項目[編集]

その他のトリプル・クラウンのトレイル
接続している国立景観歩道(National Scenic Trail)
接続している国立歴史歩道(National Historic Trail)
接続している米国の長距離トレイル

外部リンク[編集]