ケチョウセンアサガオ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
ケチョウセンアサガオ
Datura inoxia at night.jpg
ケチョウセンアサガオ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 w:Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 w:Magnoliopsida
: ナス目 Solanales
: ナス科 Solanaceae
: チョウセンアサガオ属 Datura
: ケチョウセンアサガオ D. inoxia
学名
Datura inoxia Mill.
和名
ケチョウセンアサガオ(毛朝鮮朝顔)
英名
thorn-apple
Indian-apple
sacred datura

ケチョウセンアサガオ(別名アメリカチョウセンアサガオ 学名Datura inoxia)はナス科の種である。英名ではthorn-apple・ downy thorn-apple・ Indian-apple等別名が多い。中央アメリカおよび南アメリカが原産で、現在はアフリカアジアオーストラリアヨーロッパに分布する。

学名はしばしば D. innoxia として引用される。その D. inoxia との命名は、イギリスの植物学者フィリップ・ミラーが最初に1768年に種を記載したとき、ラテン語の innoxia(無害の意味)をスペルミスしたことによる。 かつて、Datura meteloides という名が用いられていたが、今はその名は放棄されている[1]

特徴[編集]

通常0.6〜1.5mの高さに達する低木の一年生植物である。 その茎や葉は植物全体に灰色がかった外観で、短く灰色がかった柔らかい毛で覆われている。そのは羽状脈をもつ楕円形の葉身を持っている[1]

花は、直径10cm前後、長さ12〜19cmで、白く、トランペットの形をしている。花は最初に真っすぐに伸び、後下方に傾斜する。開花時期は初夏から晩秋まで。花からは芳香を発する。

熟す前の果実
熟し開いた果実

果実は直径約5cm、卵形のとげのあるカプセルをなす。熟すと開いて割れ、種子を分散させる。 分散のもう一つの手段は、果実が持つとげであり、動物の毛に巻き込ませて遠方へ運ばせるものである。 種子はハイバネーション機能を持っており、土壌中で何年も生きることができる。種子だけでなく、この植物の全体がデリリアントとして作用し、オーバードーズをもたらす可能性が高い。


日本では栽培されているものもあるが、野生状態のものも多く、農耕地の周辺や荒れ地などに見られる。

毒性[編集]

この植物の全体が危険なレベルの毒を含んでおり、人間や家畜やペットを含む他の動物が摂取すると死にいたる場合がある。 国や地域によってはこの植物を購入、売却または育成することが禁止されているところがある[1]

栽培と用途[編集]

栽培する場合、通常、種子から栽培されているが、根茎を凍結保存し、翌年の春に植えることもできる[1]

ケチョウセンアサガオは、他のチョウセンアサガオの種と同様、非常に有毒なアルカロイドであるアトロピンスコポラミン(ヒヨスチン)、およびヒヨスチアミンが含まれている。 アステカ人はplant toloatzinと呼び、スペインによる征服以前の長い間、それらの成分の鎮痛剤としての作用を見出し、傷の湿布など多くの治療目的のために使用した。 多くのアメリカ原住民は、幻覚や通過儀礼のための幻覚剤としてこの植物を使用している。古代において効果的な疼痛緩和のためにアルカロイドを使用する点においては、高度な有毒植物であるマンドレイクベラドンナヒヨスに非常に類似している[2]

この植物による中毒は、通常、現実と空想を識別する能力の完全な無力化、高体温、頻脈、奇行(おそらく暴力的な行動)、および痛みを伴う光過敏の結果による重度の瞳孔拡大であり、これらの症状が数日間続く。 顕著な健忘も報告されている[3]

この植物の毒性が現れるにはおおまかに5:1のバラツキがあり、それが成長している年齢や、地域の気象条件に依存する。 この広いバラツキは、ケチョウセンアサガオを薬剤として使用するにあたって非常に危険なものとさせた。 伝統的な文化では、被害が生じないように、豊富な経験と詳細な植物の知識を持っている必要があった[1]。 しかしこのような知識は現代文化では通用していない。 1990年代と2000年代に米国メディアは、青年および若年成人が意図的にチョウセンアサガオを摂取してから、死にかけたり、重病になったことを報じている[4]

また、その魅力的な大きな葉、大きな白い花、そして独特の厄介な果物の観賞植物として世界中で植えられている。 しかしこの植物は現在、いくつかの場所で外来種と考えられている。 例えば綿とそのライフサイクルの類似性のため、それは綿畑では厄介者となっている。また、潜在的な種子汚染物質である。

類似種[編集]

ケチョウセンアサガオはチョウセンアサガオ( Datura metel )に、早期の科学文献でそれと混同されている点でわかるように、非常によく似ている。 チョウセンアサガオは、同様の効果が11世紀のペルシャイブン・スィーナーによって記述されたことからわかるように旧世界の植物である。

またシロバナヨウシュチョウセンアサガオは小さな花や鋸歯縁の葉を持っていることで異なり、Datura wrightiiは、広い5裂の花(ケチョウセンアサガオでは5条の筋があり浅く10裂する)を持っていることで異なる。 ケチョウセンアサガオは縁から1〜3mm程度でアーチによって吻合する葉の中肋の両側に約7〜10支脈を持っている点で、シロバナヨウシュチョウセンアサガオ・チョウセンアサガオとは異なる。 他の類似する4種と異なり、二次葉脈の吻合はない。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e Preissel, Ulrike; Hans-Georg Preissel (2002). Brugmansia and Datura: Angel's Trumpets and Thorn Apples. Buffalo, New York: Firefly Books. pp. 117–119. ISBN 1-55209-598-3. http://www.amazon.com/Brugmansia-Datura-Angels-Trumpets-Apples/dp/1552095584. 
  2. ^ Richard Evans Schultes (1970年1月1日). “The plant kingdom and hallucinogens (part III)”. pp. 25–53. 2007年5月23日閲覧。
  3. ^ Erowid Datura Vault : Effects”. Erowid. 2010年6月1日閲覧。
  4. ^ Suspected Moonflower Intoxication (Ohio, 2002)”. CDC. 2006年9月30日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]