エレクトロン貨

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紀元前6世紀頃に鋳造されたと思われるリディア王国の貨幣

エレクトロン貨(エレクトロンか、Electrum )とはメソポタミア時代すなわち紀元前670年頃に存在したリディア王国の世界最古の鋳造貨幣である。

リディアのエレクトロン貨はバクトロス川の河床から得られた大粒の砂金、すなわち自然金に極印を打ったものであり、自然金は数%から数十%の銀を含む自然合金である。およびは化学的性質および原子半径が類似し、互いに親和力が強く、完全固溶体を形成し自然界では共存することが多い。

エレクトロン(elektron )とはギリシャ語で琥珀を意味し、これを摩擦により帯電させて静電気の研究を行ったウィリアム・ギルバートが、現在でも電気の意味を表すエレクトリック(electric )という言葉を初めて作った。また金銀合金の淡黄色が琥珀を連想させるものであることから、琥珀金すなわちエレクトラムelectrum )という言葉が生まれた。

ケンブリッジ学派の鼻祖といわれるアルフレッド・マーシャルは、金銀比価を安定させる秘策として、金銀合金の貨幣を鋳造しこれを本位貨幣として流通させるのが理想であるが、この合金は人工的には合成が困難であり、現実には例えば金貨1枚に対し銀貨10枚を組み合わせて兌換を行ない流通させるのがよいであろうと説いた[1]。しかしこの金銀合金は実際には金および銀を電気炉で鎔解すれば容易く得られる。

また日本の江戸時代の金貨すなわち、小判一分判二分判二朱判および一朱判はすべて金銀合金のエレクトロン貨幣であった。マーシャルは極東の日本でエレクトロン貨幣が鋳造され流通していたことは全く念頭になかったようである[1]

参考文献[編集]

  1. ^ a b 三上隆三 『江戸の貨幣物語』 東洋経済新報社、1996年