ウィーナー=ヒンチンの定理

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ウィーナー=ヒンチンの定理: Wiener–Khinchin theorem)は、広義定常確率過程パワースペクトル密度が、対応する自己相関関数のフーリエ変換であることを示した定理。ヒンチン=コルモゴロフの定理(Khinchine-Kolmogorov theorem)とも。

定義[編集]

連続の場合、


S_{xx}(f)=\int_{-\infty}^\infty r_{xx}(\tau)e^{-j2\pi f\tau} \ d\tau

であり、ここで

r_{xx}(\tau) = \operatorname{E}\big[\, x(t)x^*(t-\tau) \, \big] \

は、統計的期待値を使って定義した自己相関関数であり、

S_{xx}(f) \

は、関数 x(t)\, のパワースペクトル密度である。なお、自己相関関数は積の期待値を使って定義している。また、定常確率関数は二乗可積分ではないので、一般に x(t)\, のフーリエ変換は存在しない。

アスタリスクは複素共役を意味し、確率過程が実数値に関するものである場合は省略可能である。

離散の場合、

 S_{xx}(f)=\sum_{k=-\infty}^\infty r_{xx}[k]e^{-j2\pi k f}

となる。ここで

r_{xx}[k] = \operatorname{E}\big[ \, x[n] x^*[n-k] \, \big] \

であり、また

S_{xx}(f) \

は、関数の離散値 x[n]\, についてのパワースペクトル密度である。標本化された離散時間シーケンスであるため、スペクトル密度は周波数領域で周期性がある。

応用[編集]

線型時不変系で入力と出力が二乗可積分でない場合、すなわちフーリエ変換が存在しない場合、その解析にこの定理が利用される。ここから、LTIシステムの出力の自己相関関数のフーリエ変換は、システムのインパルス応答のフーリエ変換の平方をシステムの入力の自己相関関数のフーリエ変換をかけたものと等しい、という系が導かれる。これは、システムの入出力信号にフーリエ変換が存在しない場合(二乗可積分でない場合)でも成り立つ。

信号の自己相関関数のフーリエ変換が信号のパワースペクトルだということは、出力のパワースペクトルが入力のパワースペクトルにパワー伝達関数をかけたものに等しいことを意味する。

この系は、システムのパワースペクトルの予測に使われる。

その他の定義[編集]

スペクトル密度自己相関の記事にあるような無限積分を使った定義によれば、ウィーナー=ヒンチンの定理は単純なフーリエ変換の対であり、フーリエ変換のある二乗可積分な関数なら容易に証明できる。この定理はフーリエ変換の存在しない信号の定常過程に適用されることが多く、その自己相関関数は無限積分ではなく期待値を使って定義されることが多い。工学分野ではこのような形式で表すことが多いが、そうすると名前の由来であるアレクサンダー・ヒンチンノーバート・ウィーナーアンドレイ・コルモゴロフの貢献がよくわからなくなる。

参考文献[編集]

  • Chapter 6 of Digital and Analog Communications Systems by Leon W. Couch II, Sixth Edition, Prentice Hall, New Jersey, 2001, pp. 406-409