確率測度

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統計物理学では、確率測度を使うが、使われる全ての測度が確率測度であるわけではない[1][2]

数学では、確率測度(probability measure)は、可算加法性のような測度の性質を満たす確率空間の中で、事象の集合上に定義された実数値函数英語版(real-valued function)である[3]。確率測度とさらに一般的な測度(面積体積のような概念を含む)との考え方の差異は、確率測度は全確率空間に対しては 1 にならねばならないことである。

直感的には、加法性とは、測度により 2つの独立した事象の合併に対応した確率は、事象の確率の和とならねばならない、つまり、サイコロを投げたとき「1 もしくは 2」に対応した値は「1」と「2」に対応した値の和となっていなければならないことを言う。

確率測度は、物理学からファイナンスや生物学まで様々な分野に応用を持っている。

定義[編集]

3つの事象を単位区間へ写像する確率測度

確率空間上で函数 μ が確率測度であることを要求することは、

  • μ は、単位区間 [0, 1] では、空集合に対しては 0 を返し全空間では 1 を返す結果でなければならない。
  • μ は、各々が互いに分け隔てられている集合の中の全ての可算な集まりに対し、
 \mu\Bigl(\bigcup_{i \in I} E_i\Bigr) = \sum_{i \in I} \mu(E_i)
という性質である可算加法性(countable additivity)を持たねばならない。

例えば、それぞれ 1/4, 1/4, 1/2 の確率を持つ 3つの要素 1, 2, 3 が与えられたとすると、{1, 3} に与えられる確率は、右の図で示しているように、1/4 + 1/2 = 3/4 である。

P(B \mid A) = \frac{P(A \cap B)}{P(A)}.

として定義された二乗の交叉の条件付き確率は、P(A) が 0 でない限り、確率測度であるという要求を満たす[4]

確率測度は、より一般的なファジー測度英語版(Fuzzy measure)の考え方とは異なっている。ファジー測度では、ファジー値をたし上げると 1 となる必要はないし、加法性は集合の包含関係の順序関係に取って代わられる。

応用例[編集]

実際の金融の動きに基づいた金融市場の空間へ確率を割り当てたマーケット測度(Market measures)は、確率測度の例である。この例は、デリバティブの値付けなどの、数理ファイナンスで興味を持たれている[5]。実際の金融市場で、マルチンゲール測度英語版(martingale measure)(リスク中立測度とも言うが)は、同じリスク中立測度(つまり、対応するリスク中立密度函数を使い計算された)の観点から将来支払われる価格の期待値が、資産の現在価格であるとした確率測度であり、リスクのないレート英語版(risk-free rate)で価格引き下げ英語版(discounted)された確率測度である。市場での価格資産として使われるはずの一意的な確率測度が存在する場合、市場をTemplate:仮リスク(complete market)と呼ぶ[6]

直感的にチャンスや可能性を表す測度の全てが全て、確率測度であるとは言えない。例えば、統計力学の系の基本的な考え方は測度空間ではあるが、測度がいつも確率測度であるわけではない[1]。一般に、統計物理学では、「状態 A であるような系 S の確率は p である」という形のセンテンスを考えると、自由度がひとつの系の場合には確率測度が定義できるように思えるが、合同関係(under congruence)の下での確率測度を、系の幾何学が常に定義するわけではない[2]

確率測度は、数理生物学でも使われる[7]。例えば、比較配列分析英語版(sequence analysis)において、確率測度は配列の中にアミノ酸がある可能性によって定義されることもある[8]

参照項目[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ a b A course in mathematics for students of physics, Volume 2 by Paul Bamberg, Shlomo Sternberg 1991 ISBN 0-521-40650-1 page 802
  2. ^ a b The concept of probability in statistical physics by Yair M. Guttmann 1999 ISBN 0-521-62128-3 page 149
  3. ^ An introduction to measure-theoretic probability by George G. Roussas 2004 ISBN 0-12-599022-7 page 47
  4. ^ Probability, Random Processes, and Ergodic Properties by Robert M. Gray 2009 ISBN 1-4419-1089-1 page 163
  5. ^ Quantitative methods in derivatives pricing by Domingo Tavella 2002 ISBN 0-471-39447-5 page 11
  6. ^ Irreversible decisions under uncertainty by Svetlana I. Boyarchenko, Serge Levendorskiĭ 2007 ISBN 3-540-73745-6 page 11
  7. ^ Mathematical Methods in Biology by J. David Logan, William R. Wolesensky 2009 ISBN 0-470-52587-8 page 195
  8. ^ Discovering biomolecular mechanisms with computational biology by Frank Eisenhaber 2006 ISBN 0-387-34527-2 page 127

さらに先の文献[編集]