アクチュアリー

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アクチュアリー (actuary) とは、ビジネスにおける将来のリスクや不確実性の分析、評価等を専門とする専門職のことである。「保険数理士」「保険数理人」などと訳されることもあるが、保険計理人と紛らわしいため、「アクチュアリー」とそのまま呼ぶことが多い。

目次

[編集] 概要

ビジネスにおける将来のリスクや不確実性の分析、評価等を専門とする専門職あるいは職種[1]のことである。

歴史的には、アクチュアリーという職業が成立したのは生命保険分野からであったとされ、発祥の地は英国であるとされる。(→#歴史)

国ごとにアクチュアリーの状況は大きく異なる。日本では、アクチュアリー団体に所属している者をもって「アクチュアリー」と呼ばれており、まずアクチュアリーの準会員になるのに平均8~9年程度が必要ともされ、準会員数は2008年3月末時点で830名、正会員数は2008年3月末時点で1,219名である[2]。それに対して、米国では2003年時点で正会員が約10,000名で日本の約10倍に及ぶ。ただいずれにせよ、弁護士や会計士と比べると圧倒的に人数が少ない専門職[3]である。(→#各国におけるアクチュアリー)

アクチュアリーは、大学において数学や統計学を専攻した人の割合が高い。

[編集] 歴史

歴史的には、アクチュアリーという職業が成立したのは生命保険分野からであったとされる[4]。つまり伝統的には生命保険会社で活躍する存在であり、近代的生命保険業とアクチュアリーは密接に結びついている、とされる。アクチュアリーの発祥の地は英国であるとされる。

生命保険のように人々が資金を出し合い、リスクが顕在化した人を助ける制度は、頼母子講をはじめ古くから存在した。これに対し、個々の加入者のリスクを測定することによって合理的な保険料を徴収することとしたものを近代的生命保険というが、その加入者のリスク測定にはアクチュアリーの存在が不可欠だった。

また「アクチュアリーが活躍する伝統的分野は、生命保険損害保険年金の三分野」[5]とも言われ、アクチュアリーの業務は保険数理、年金数理に基づく保険料、および責任準備金と呼ばれる契約債務の評価などの計算業務を中核にして発展してきた[6]。よって、アクチュアリーは生命保険会社、損害保険会社、信託銀行の年金部門、社会保険を担当する公的組織(厚生省、厚生労働省、公的共済組織 等)、あるいはアクチュアリー系コンサルティング会社などに所属して数理計算業務に携わっていることが多かった[7]

上述のごとく、リスク測定=死亡率算定から出発したアクチュアリーであるが、近年は、確率論の進歩と金融工学の発展により、生命保険損害保険企業年金といった伝統的な分野だけでなく、金融の世界で数理を扱う領域を幅広く取り扱うようになってきている。

[編集] 各国におけるアクチュアリー

アクチュアリー団体に所属している者をもって「アクチュアリー」と呼ぶ。日本以外の項目では各国のアクチュアリー団体について述べる。

[編集] 日本

日本において「アクチュアリーになる」とは、「日本アクチュアリー会の正会員になる」とほぼ同義である(外国のアクチュアリー会の正会員もアクチュアリーと呼ばれる)。年金数理人や、保険計理人になるための条件の一つは、日本アクチュアリー会の正会員であることである。2008年3月末現在、日本アクチュアリー会の正会員数は1,219人である(正会員以外も含めた全会員数は3,765人)。

日本アクチュアリー会の会員資格には正会員のほか、準会員、研究会員があり[8]、下記の1次試験・2次試験とも合格すれば正会員、1次試験全科目に合格すれば準会員、それ以外が研究会員である。受験資格は原則として大学を卒業していること。一度に全科目に合格する必要はないが、1次試験にすべて合格しなければ(つまり準会員にならなければ)2次試験は受験できない。したがって最短では2年で正会員資格が取得できることになるが、実際には全科目合格までにかかる期間の平均は8年あるいは9年と言われており、資格試験のなかで難関資格として挙げられることが多い。

  • 1次試験科目(5科目)
    • 数学
    • 生保数理
    • 損保数理
    • 年金数理
    • 会計・経済・投資理論
  • 2次試験科目(下記のいずれかのコースで、各2科目)
    • 生保コース(生保1、生保2)
    • 損保コース(損保1、損保2)
    • 年金コース(年金1、年金2)

1次試験が基礎的な内容を問う試験であるのに対し、2次試験はアクチュアリーとしての実務を行う上で必要な専門知識および問題解決能力を有するか否かを判定する試験とされ、実務的な内容が多く問われる。2次試験は生保・損保・年金のいずれかのコースで合格すればよく、どのコースでも正会員資格に区別はない。ただし、それぞれの分野の実務は大きく異なることから、「生保アクチュアリー」「損保アクチュアリー」「年金アクチュアリー」なる表現を使うことがある。

なお、日本アクチュアリー会は日本で唯一のアクチュアリー団体であり、保険業法第122条の2第2項に基づく、金融庁の指定法人である。アクチュアリーの育成・研修のほか、保険数理に関する調査研究を行い、日本の保険会社の責任準備金の計算基礎である標準死亡率の作成なども行う。

アクチュアリー職の募集条件には、アクチュアリー会の正会員だけでなく「アクチュアリー資格試験受験者」も含められていることがある[9]

[編集] 米国(損保以外)

米国のアクチュアリー会はSociety of Actuariesという。会員数(正会員:FSA, 準会員:ASAの合計)およそ1万人。

米国では2003年4月時点で会員数は17,300名(日本の約5倍)[10]。正会員数は約10,000名(日本の約10倍)。生損保会社のアクチュアリーは約7,200名、コンサルティング会社のそれは約6,000名となっており、(日本に比べて)コンサルティング会社の割合が非常に大きい[11]

正会員試験の専門分野は、Finance/ERM, Investment, Indivisual Insurance, Retirement, Group & Healthの5つ。現在、MBA, CFA, CPA, MFE, FRM等のその他専門職との差別化を目指し、試験制度等の改革が目覚しい。日本の会員資格と比べると、Finance/ERM(近年発展が目覚しい), Investment(数年前までは新分野であったが既に多くの会員を有する), Healthが明確に存在することが特記事項である。

[編集] 英国

英国のアクチュアリー団体は、Institute of ActuariesとThe Faculty of Actuariesの2つがある。

[編集] インド

インドのアクチュアリー団体はActuarial Society of Indiaという。近年、会員数の伸びが目覚しい。student会員(準会員になる前の者)も含めるとその数は5000人(2006年現在)にのぼり、3年前はその半分にも満たない会員数であった。

[編集] 著名なアクチュアリー

矢野恒太(1865-1951)
第一生命の創立者で、日本アクチュアリー会の初代代表。もともと医師であり、第一生命創立前は日本生命の社医をしていたこともある。
大館義雄(1906-1949)
日本アクチュアリー会の第1回正会員試験で全科目満点で合格した(アクチュアリー試験の成績優秀賞「大館賞」の由来。現在は大館賞とは呼ばず、理事長特別賞という名称になっている)。利源別配当方式の導入などの業績がある[12]
レディントン(Frank Redington)
英国のアクチュアリー。金利変動が保険会社の正味価値に及ぼす影響を軽減する運用戦略として「イミュナイゼーション」を考案した。
ウィルキー (David Wilkie)
英国のアクチュアリー。確率論的な長期金利モデルの一つである「ウィルキーモデル」を考案。
エリザ・ライト (Elizur Wright)
米国の政府アクチュアリー。解約返戻金の最低価格を定める「不没収価格法」を作った。

[編集] 架空のアクチュアリー

ウォーレン・シュミット (Warren Schmidt)
映画「アバウト・シュミット」の主人公(by Jack Nicholson)。
ルービン フェファー (Reuben Feffer)
ラブコメ映画"Along came polly"の主人公(by Ben Stiller)。

[編集] 関連文献

  • 田中周二、松山直樹「統計学とアクチュアリーの現代的課題」日本統計学会誌、2004年9月
  • 岡本 量太、林 勲、奥村 英二「アクチュアリー --- 保険・年金数理のプロフェッショナル」ビジネス教育出版社、1999年

[編集] 出典

  1. ^ アクチュアリー
  2. ^ 日本アクチュアリー会 平成19年度事業概況
  3. ^ 田中周二、松山直樹「統計学とアクチュアリーの現代的課題」日本統計学会誌、2004年9月 p.42
  4. ^ 田中周二、松山直樹 同論文 p.42
  5. ^ 田中周二、松山直樹 同論文 p.42
  6. ^ 同論文 p.42
  7. ^ 同論文 p.42
  8. ^ 会員資格としては、このほかに名誉会員および賛助会員がある。
  9. ^ アクチュアリー
  10. ^ 田中周二、松山直樹 同論文 p.42
  11. ^ 田中周二、松山直樹 同論文 p.42
  12. ^ 社団法人日本アクチュアリー会100年史 p.405

[編集] 関連項目

[編集] 外部リンク