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[[広島県]][[高田郡]]川根村（現在の[[安芸高田市]]）出身<ref name="hiroshima"/>。旧制三次中学（現在の[[広島県立三次高等学校|三次高校]]）、[[広島高等学校 (旧制)|旧制広島高校]]卒業。三代続いた[[医者]]の息子で、医者になることを望まれたが[[解剖]]を嫌い[[九州大学]][[農学部]]に進み[[育種学]]を専攻。中学時代は落第もしたが大学時代の成績は優秀で、[[1935年]]卒業時には九大からただ一人推薦されて[[農林省]][[農業試験場|農事試験場]]に採用された。農林技官として関東東山農業試験場（現在の[[埼玉県]][[鴻巣市]]）に赴任し[[小麦]]の品種改良などを研究。5年後の[[1940年]]、[[新潟県]]農事試験場に転勤し[[水稲]]新品種育成試験地の主任となる。ここで水稲育種指定試験と新品種の育成を行い十数品種の端緒を作った。当時、働き盛りの青壮年の職員はほとんどが戦争に駆り出されていたが、高橋は[[徴兵検査]]三ヶ月前の野球大会で腹部を蹴られて[[膵臓]]が破裂、「兵に向かず」として[[兵役]]を免れ、念願の育種の仕事を続けることが出来たのだった。同試験地の試験田は二[[ヘクタール]]もあり、栽植本数は約20万本にも達する<ref name="iza151030">{{Cite news|url=https://www.iza.ne.jp/article/20151030-PZEMDZOBERI6PLY6FTS5JJYCOA/|title=[[産経新聞#コラム『産経抄』|産経抄]] 米のブランド戦国時代|author=|date=2015年10月30日|accessdate=2022年9月25日|newspaper=[[産経デジタル|iza]]|publisher=[[産業経済新聞社]]|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210910030323/https://www.iza.ne.jp/article/20151030-PZEMDZOBERI6PLY6FTS5JJYCOA/|archivedate=2021年9月10日}}</ref>。水稲育種の仕事は、それを1本1本丁寧に見て回りいろいろな形質を調べ、優秀な系統を選抜するという作業である<ref name="iza151030"/>。高橋はこれらの管理を一人で行い、新たな人工交配作業に取り組んだ<ref name="iza151030"/>。 |
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[[太平洋戦争]]末期、敗色濃厚となった[[1944年]]7月末、高橋が取り組んだ[[品種改良|人工交配]]が晩生種の「農林22号」を母とし、早生種の「[[水稲農林1号|農林1号]]」を父とする組み合わせだった<ref name="koseizaidan"/><ref name="iza151030"/><ref name="niigata">{{Cite web|url=https://www.pref.niigata.lg.jp/sec/nosanengei/1342040428024.html|date=2019-08-30|title=コシヒカリのエピソード 1 ～交配から系統の育成まで～戦時下の混乱の中、コシヒカリの両親を交配|accessdate=2022年9月27日|website=農林水産部 農産園芸課|publisher=[[新潟県庁]]}}</ref><ref>{{Cite web|url=https://www.city.nagaoka.niigata.jp/elibrary/ayumi/nagaoka03/s21.html|title=市政のあゆみ 戦後復興期 昭和21年|accessdate=2022年9月27日|website=長岡市政ライブラリー|publisher=[[長岡市役所]]}}<br />{{Cite journal|和書|title=【書評】岸康彦著『食と農の戦後史』 |url=https://doi.org/10.5874/jfsr.5.2_85 |author=白石正彦 |journal=フードシステム研究 |volume=5 |issue=2 |pages=85-87 |year=1998 |doi=10.5874/jfsr.5.2_85}}<br />{{Cite web|url=https://ginmi.jp/anecdote|title=魚沼産コシヒカリ誕生秘話|accessdate=2022年9月27日|website=厳選吟味|publisher=三幸通商}}</ref><ref>{{Cite book |和書 |author = 菅洋 |authorlink=菅洋 |title = 稲 |year = 1998 |publisher = [[法政大学出版局]] |id = 978-4-588-20861-4 |pages=265-266 }}</ref>。交配作業を無事終え9月下旬に[[籾|種モミ]]として収穫されたこの[[雑種]]が[[コシヒカリ]]の始まりとなる<ref name="iza151030"/><ref name="niigata"/><ref>{{PDFlink|[http://www.nohken.or.jp/32-10-nishio379-392.pdf 西尾敏彦『(特別寄稿）水稲在来品種考』]}} [[農業・食品産業技術総合研究機構]] 日本農業研究所研究報告『農業研究』第32号 2018年 p.391</ref>。この後、戦争の激化で翌[[1945年]]の育種事業は全面中止が決定、育種中の育種材料は、全てモミのまま長期保存することになった<ref name="niigata"/>。また終戦わずか半月前の8月、空襲により高橋の自宅も丸焼けになり、長年にわたって集めた育種に関する資料も一切に焼失した。しかし高橋が手がけた種子の保存状態は非常に優れ、一年のブランクはあったが、戦後[[1946年]]、育種事業が再開され「農林22号 × 農林1号」のモミは試験田にまかれた<ref name="niigata"/>。[[発芽]]、[[生長]]は非常に良好で同年秋、この雑種第一代が誕生した。刈り取りを済ませた同年11月、高橋は人事異動により6年間勤務した新潟を去り、再び関東東山農業試験場へ転任した。高橋はこの後のコシヒカリの育成には全く関わることなく、コシヒカリはこの後、高橋から引き継がれた多くの後進によって創られることとなる<ref name="niigata"/>。 |
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関東東山農業試験場へ転任後は同所で技術部長、栽培第二部長となり[[連作|田畑輪換]]の研究などに功績を残した。[[1957年]]、東海近畿農業試験場（現在の[[三重県]][[津市]]）に転任、栽培第一部長を務め[[水田]]技術の改善や被災水田対策などを行う。 |
関東東山農業試験場へ転任後は同所で技術部長、栽培第二部長となり[[連作|田畑輪換]]の研究などに功績を残した。[[1957年]]、東海近畿農業試験場（現在の[[三重県]][[津市]]）に転任、栽培第一部長を務め[[水田]]技術の改善や被災水田対策などを行う。 |
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== 参考文献・ウェブサイト == |
== 参考文献・ウェブサイト == |
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*粉川宏 『コシヒカリを創った男』 1990年 [[新潮社]] |
* 粉川宏 『コシヒカリを創った男』 1990年 [[新潮社]] |
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*西澤楯雄 『コシヒカリ伝説 -雪国の正倉院とコメ文明- |
* 西澤楯雄 『コシヒカリ伝説 -雪国の正倉院とコメ文明-』 1989年 名著刊行社 |
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*酒井義昭 『コシヒカリ物語 日本一うまい米の誕生』 1997年 [[中央公論社]] |
* 酒井義昭 『コシヒカリ物語 日本一うまい米の誕生』 1997年 [[中央公論社]] |
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*[https://web.archive.org/web/19990418072009/http://www.afftis.or.jp/senjin/kosi1.htm 日本の「農」を拓いた先人たち (社)農林水産技術情報協会]（Internet Archive） |
* [https://web.archive.org/web/19990418072009/http://www.afftis.or.jp/senjin/kosi1.htm 日本の「農」を拓いた先人たち (社)農林水産技術情報協会]（Internet Archive） |
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2022年11月10日 (木) 10:47時点における版
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高橋 浩之（たかはし ひろゆき、1908年3月2日 - 1962年1月23日）は、日本の農林省官僚、農林技官。コシヒカリ生みの親[1][2]。
経歴
広島県高田郡川根村（現在の安芸高田市）出身[1]。旧制三次中学（現在の三次高校）、旧制広島高校卒業。三代続いた医者の息子で、医者になることを望まれたが解剖を嫌い九州大学農学部に進み育種学を専攻。中学時代は落第もしたが大学時代の成績は優秀で、1935年卒業時には九大からただ一人推薦されて農林省農事試験場に採用された。農林技官として関東東山農業試験場（現在の埼玉県鴻巣市）に赴任し小麦の品種改良などを研究。5年後の1940年、新潟県農事試験場に転勤し水稲新品種育成試験地の主任となる。ここで水稲育種指定試験と新品種の育成を行い十数品種の端緒を作った。当時、働き盛りの青壮年の職員はほとんどが戦争に駆り出されていたが、高橋は徴兵検査三ヶ月前の野球大会で腹部を蹴られて膵臓が破裂、「兵に向かず」として兵役を免れ、念願の育種の仕事を続けることが出来たのだった。同試験地の試験田は二ヘクタールもあり、栽植本数は約20万本にも達する[3]。水稲育種の仕事は、それを1本1本丁寧に見て回りいろいろな形質を調べ、優秀な系統を選抜するという作業である[3]。高橋はこれらの管理を一人で行い、新たな人工交配作業に取り組んだ[3]。
太平洋戦争末期、敗色濃厚となった1944年7月末、高橋が取り組んだ人工交配が晩生種の「農林22号」を母とし、早生種の「農林1号」を父とする組み合わせだった[2][3][4][5][6]。交配作業を無事終え9月下旬に種モミとして収穫されたこの雑種がコシヒカリの始まりとなる[3][4][7]。この後、戦争の激化で翌1945年の育種事業は全面中止が決定、育種中の育種材料は、全てモミのまま長期保存することになった[4]。また終戦わずか半月前の8月、空襲により高橋の自宅も丸焼けになり、長年にわたって集めた育種に関する資料も一切に焼失した。しかし高橋が手がけた種子の保存状態は非常に優れ、一年のブランクはあったが、戦後1946年、育種事業が再開され「農林22号 × 農林1号」のモミは試験田にまかれた[4]。発芽、生長は非常に良好で同年秋、この雑種第一代が誕生した。刈り取りを済ませた同年11月、高橋は人事異動により6年間勤務した新潟を去り、再び関東東山農業試験場へ転任した。高橋はこの後のコシヒカリの育成には全く関わることなく、コシヒカリはこの後、高橋から引き継がれた多くの後進によって創られることとなる[4]。
関東東山農業試験場へ転任後は同所で技術部長、栽培第二部長となり田畑輪換の研究などに功績を残した。1957年、東海近畿農業試験場（現在の三重県津市）に転任、栽培第一部長を務め水田技術の改善や被災水田対策などを行う。
晩年は肺結核が悪化して療養生活に入った。1962年、わが子の栄光を知ることはなく[3]、肺癌により53歳で死去した。死後、勲四等瑞宝章が授与されている。
著書に『水田移植栽培の技術』（池隆肆共著、1949年、覚張書店）、『水田農業の新技術』（1950年、朝日新聞社）、『稲作』（渋澤梅次郎共著、1953年、朝倉書店）、『稲作増収の基本技術-稲の語る稲作-』（1960年、富民協会）などがある。
脚注
出典
- ^ a b “平成22年度県内市町の財政状況資料集”. 添付資料 Ⅵ.各市町素材集 先人の伝記. 広島県庁. p. 262 (2020年). 2022年9月27日閲覧。
- ^ a b 伊藤充『新潟県歴史シリーズ第4回 新潟の米はまずかった～新潟米の歴史～』 (PDF) 新潟県教職員厚生財団 『厚生財団』第107号 2014年1月1日 p.8
- ^ a b c d e f “産経抄 米のブランド戦国時代”. iza (産業経済新聞社). (2015年10月30日). オリジナルの2021年9月10日時点におけるアーカイブ。 2022年9月25日閲覧。
- ^ a b c d e “コシヒカリのエピソード 1 ～交配から系統の育成まで～戦時下の混乱の中、コシヒカリの両親を交配”. 農林水産部 農産園芸課. 新潟県庁 (2019年8月30日). 2022年9月27日閲覧。
- ^ “市政のあゆみ 戦後復興期 昭和21年”. 長岡市政ライブラリー. 長岡市役所. 2022年9月27日閲覧。
白石正彦「【書評】岸康彦著『食と農の戦後史』」『フードシステム研究』第5巻第2号、1998年、85-87頁、doi:10.5874/jfsr.5.2_85。
“魚沼産コシヒカリ誕生秘話”. 厳選吟味. 三幸通商. 2022年9月27日閲覧。 - ^ 菅洋『稲』法政大学出版局、1998年、265-266頁。978-4-588-20861-4。
- ^ 西尾敏彦『(特別寄稿）水稲在来品種考』 (PDF) 農業・食品産業技術総合研究機構 日本農業研究所研究報告『農業研究』第32号 2018年 p.391
参考文献・ウェブサイト
- 粉川宏 『コシヒカリを創った男』 1990年 新潮社
- 西澤楯雄 『コシヒカリ伝説 -雪国の正倉院とコメ文明-』 1989年 名著刊行社
- 酒井義昭 『コシヒカリ物語 日本一うまい米の誕生』 1997年 中央公論社
- 日本の「農」を拓いた先人たち (社)農林水産技術情報協会（Internet Archive）
