「超絶技巧練習曲」の版間の差分

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[[ラザール・ベルマン]]、[[クラウディオ・アラウ]]、[[ジョルジュ・シフラ]]などが知られる。また若いピアニストが[[ヴィルトゥオーソ]]性を示すためにレパートリーに選ぶことが多く、近年では[[フレディ・ケンプ]]、[[小菅優]]、[[アリス=紗良・オット]]、[[ボリス・ベレゾフスキー (ピアニスト)|ボリス・ベレゾフスキー]]などが録音している。超絶技巧練習曲集第3稿を、85歳で全曲録音に成功するピアニストもいる<ref>{{Cite web |url =http://www.tobu-trading.com/classic_cd/?p=9544 |title =御歳85歳!フランスの大ベテラン、ワイエンベルクが弾く! リストの超絶技巧練習曲集!日本語解説付き! |publisher =www.tobu-trading.com |date = |accessdate =2018-11-20 }}</ref>。
[[ラザール・ベルマン]]、[[クラウディオ・アラウ]]、[[ジョルジュ・シフラ]]などが知られる。また若いピアニストが[[ヴィルトゥオーソ]]性を示すためにレパートリーに選ぶことが多く、近年では[[フレディ・ケンプ]]、[[小菅優]]、[[アリス=紗良・オット]]、[[ボリス・ベレゾフスキー (ピアニスト)|ボリス・ベレゾフスキー]]などが録音している。超絶技巧練習曲集第3稿を、85歳で全曲録音に成功するピアニストもいる<ref>{{Cite web |url =http://www.tobu-trading.com/classic_cd/?p=9544 |title =御歳85歳!フランスの大ベテラン、ワイエンベルクが弾く! リストの超絶技巧練習曲集!日本語解説付き! |publisher =www.tobu-trading.com |date = |accessdate =2018-11-20 }}</ref>。


演奏困難な第2稿の全曲録音は、[[レスリー・ハワード (ピアニスト)|レスリー・ハワード]]のリスト全曲集に含まれるものが代表的。[[ジャニス・ウェバー]]もCDを出していたが、絶版<ref>[https://www.amazon.co.jp/Liszt-Transcendental-Studies-Janice-Weber/dp/B075K5T3FT Liszt:Transcendental Studies] CDは品切れだが、ダウンロード配信という形で存続。</ref>。[[マッシモ・ゴン]]が全曲演奏を達成<ref>[http://ml.naxos.jp/album/8019038348543 超絶技巧練習曲集 S139/R2b] ml.naxos.jp; ライブラリーではR2bとなっているが誤りである。</ref>し、[[イディル・ビレット]]は69歳で全曲録音に成功<ref>[http://ml.naxos.jp/work/1325614 12の大練習曲 S137/R2a] ml.naxos.jp</ref>している。このように、必ずしも演奏不可能、というわけではなくなった。このほか、[[ジン・ウェンビン]]がアジア人で初の全曲録音を達成している<ref>[http://ml.naxos.jp/work/5457904 リスト:ピアノ曲全集 45 - 12の大練習曲(ジン・ウェンビン)] ml.naxos.jp</ref>。
演奏困難な第2稿の全曲録音は、[[レスリー・ハワード (ピアニスト)|レスリー・ハワード]]のリスト全曲集に含まれるものが代表的。[[ジャニス・ウェバー]]もCDを出していたが、絶版<ref>[https://www.amazon.co.jp/Liszt-Transcendental-Studies-Janice-Weber/dp/B075K5T3FT Liszt:Transcendental Studies] CDは品切れだが、ダウンロード配信という形で存続。</ref>。[[マッシモ・ゴン]]が全曲演奏を達成<ref>[http://ml.naxos.jp/album/8019038348543 超絶技巧練習曲集 S139/R2b] ml.naxos.jp; ライブラリーではR2bとなっているが誤りである。</ref>し、[[イディル・ビレット]]は69歳で全曲録音に成功<ref>[http://ml.naxos.jp/work/1325614 12の大練習曲 S137/R2a] ml.naxos.jp</ref>している。このように、必ずしも演奏不可能、というわけでは全くなくなったが、第2稿のライブ演奏はやはり第3稿よりは少ない。このほか、[[ジン・ウェンビン]]がアジア人で初の全曲録音を達成している<ref>[http://ml.naxos.jp/work/5457904 リスト:ピアノ曲全集 45 - 12の大練習曲(ジン・ウェンビン)] ml.naxos.jp</ref>。


最も平易な初稿を好むピアニストも若干名おり、[[イディル・ビレット]]、[[シモーネ・ジェナレッリ]]<ref>[https://www.amazon.com/%C3%89tude-douze-exercices-No-Major/dp/B00PUOPFJC/ref=sr_1_12?ie=UTF8&qid=1526119152&sr=8-12&keywords=Etude+en+douze+exercices Étude en douze exercices, No. 1 in C Major, S. 136: Allegro con fuoco] 2014年11月17日配信 2018年5月17日閲覧</ref>、[[ウィリアム・ウォルフラム]]は全曲を吹き込んでいる。オリヴィア・シャム、大井和郎が抜粋を録音している。
最も平易な初稿を好むピアニストも若干名おり、[[イディル・ビレット]]、[[シモーネ・ジェナレッリ]]<ref>[https://www.amazon.com/%C3%89tude-douze-exercices-No-Major/dp/B00PUOPFJC/ref=sr_1_12?ie=UTF8&qid=1526119152&sr=8-12&keywords=Etude+en+douze+exercices Étude en douze exercices, No. 1 in C Major, S. 136: Allegro con fuoco] 2014年11月17日配信 2018年5月17日閲覧</ref>、[[ウィリアム・ウォルフラム]]、[[大井和郎]]は全曲を吹き込んでいる。オリヴィア・シャムほかが抜粋を録音している。


[[シモーネ・ジェナレッリ]]<ref>{{Cite web |url =https://store.cdbaby.com/cd/simonejennarelli6 |title =Études d'exécution transcendante, S. 139 |publisher =store.cdbaby.com |date = |accessdate =2018-11-20 }}</ref><ref>{{Cite web |url =https://store.cdbaby.com/cd/simonejennarelli5 |title =Étude en douze exercices |publisher =store.cdbaby.com |date = |accessdate =2018-11-20 }}</ref><ref>{{Cite web |url =https://store.cdbaby.com/cd/simonejennarelli8 |title =12 Grandes Études |publisher =store.cdbaby.com |date = |accessdate =2018-11-20 }}</ref>はすべての版をデジタル配信している。
[[シモーネ・ジェナレッリ]]<ref>{{Cite web |url =https://store.cdbaby.com/cd/simonejennarelli6 |title =Études d'exécution transcendante, S. 139 |publisher =store.cdbaby.com |date = |accessdate =2018-11-20 }}</ref><ref>{{Cite web |url =https://store.cdbaby.com/cd/simonejennarelli5 |title =Étude en douze exercices |publisher =store.cdbaby.com |date = |accessdate =2018-11-20 }}</ref><ref>{{Cite web |url =https://store.cdbaby.com/cd/simonejennarelli8 |title =12 Grandes Études |publisher =store.cdbaby.com |date = |accessdate =2018-11-20 }}</ref>はすべての版をデジタル配信している。

2020年3月8日 (日) 10:46時点における版

超絶技巧練習曲(ちょうぜつぎこうれんしゅうきょく、フランス語Études d'exécution transcendante, サール番号:S.139, ラーベ番号:R.2b)は、ハンガリーのピアニスト、フランツ・リストの作曲した、ピアノのための12の練習曲である。2度にわたる改訂が行われている。

概要

歴史

  • 1826年(15歳) - フランス(op.6)、ドイツ(op.1)で初稿を出版。「すべての長短調のための48の練習曲」(実際には12曲)というタイトルであった。サール番号はS.136。
  • 1837年(26歳) - パリ、ミラノ、ウィーンにて第2稿「24の大練習曲 Op.6」(実際には12曲)が出版される。献呈は彼の師でもあるカール・ツェルニーに。サール番号はS.137。
  • 1840年 - 「マゼッパ」を改作。
  • 1852年(41歳) - 第3稿が出版される。今日もっとも頻繁に演奏されているのはこの稿である。この曲集についても第2稿同様にカール・ツェルニーに献呈された。

構成

すべて異なる調で書かれている。2曲組で同じ調号の長調と短調(平行調)とし、2曲ごとに調号の♭がひとつずつ増えていく。この事とタイトルから、初版と第2版とでは全ての調性を網羅しようとしていたが結局断念して12曲に落ち着いたと考えられる。初版と第2、3版では曲順が異なる。

以下は第2、3版の構成である。特記したもの以外は第1版の曲を改作したもの。テンポの変更も記す。

  1. ハ長調『前奏曲』(Preludio) - Presto
  2. イ短調 - Molto vivace a capriccio → Molto vivace
  3. ヘ長調『風景』(Paysage) - Poco adagio
  4. ニ短調マゼッパ』(Mazeppa) - Allegro patetico → Allegro
  5. 変ロ長調『鬼火』(Feux follets) - Equalmente → Allegretto
  6. ト短調『幻影』(Vision) - Largo patetico → Lento
  7. 変ホ長調『英雄』(Eroica) - Allegro deciso → Allegro
  8. ハ短調『荒々しき狩』(Wilde Jagd) - Presto strepitoso → Presto furioso
  9. 変イ長調『回想』(Ricordanza) - Andantino
  10. ヘ短調 - Presto molto agitato → Allegro agitato molto
  11. 変ニ長調『夕べの調べ』(Harmonies du soir) - Lento assai → Andantino
    • 第1版の第7曲を移調・改作。
  12. 変ロ短調『雪あらし』(Chasse-neige) - Andantino → Andante con moto

第2版にはタイトルはまだついておらず、『マゼッパ』の題がついたのは1840年の改作からである。また第2版のみつけられる愛称ではあるが、シューマンが特に第6番、第7番、第8番の3曲を以下のように評した。

嵐の練習曲、恐怖の練習曲で、これを弾きこなせる者は世界中探してもせいぜい10人くらいしかあるまい。へたな演奏家が弾いたら、物笑いの種になる事だろう。

まれにだが、第3版の第10番ヘ短調を俗称で『熱情』と呼ぶことがある。

以下は初版の構成である[1]

  1. ハ長調 - Allegro con fuoco
  2. イ短調 - Allegro non molto
  3. ヘ長調 - Allegro sempre legato
  4. ニ短調 - Allegretto
  5. 変ロ長調 - Moderato
  6. ト短調 - Molto agitato
  7. 変ホ長調 - Allegretto con molta espressione
    • 第2版以降、移調して11番に移動。
  8. ハ短調 - Allegro con spirito
  9. 変イ長調 - Allegro grazioso
  10. ヘ短調 - Moderato
  11. 変ニ長調 - Allegro grazioso
    • 第2版以降削除。
  12. 変ロ短調 - Allegro non troppo

第2稿

第2稿の「24の大練習曲」については良く演奏される第3稿に比べるとはるかに難度が高い。しかし、演奏効果は第3稿の方が高いという見識が一般的なので、第2稿がコンサートで演奏される事はほとんど無いに等しい。かの大ピアニストクラウディオ・アラウ、偉大なピアノ教師ゲンリフ・ネイガウスの2人ともが「演奏不可能」との見解で一致している。

ロベルト・シューマンの音楽エッセイ集『音楽と音楽家』には、1837年時点での「24の大練習曲集」についてのエッセイが収められており、内容は以下のようになっている。

前にも言った通り、この曲は巨匠による演奏で聴かなければならない。できる事ならば、フランツ・リスト自身による演奏がいいだろう。しかし、たとえリストが弾いても、あらゆる限界を超えたところや、得られる効果が、犠牲にされた美しさに対して、充分の償いとなっていないようなところでは、耳障りな箇所がたくさんあるだろうと思う。しかし何はともあれ、来るべき冬の彼の到着は、心から待ち遠しい。

つまり、第2稿はリスト本人の技術をもってしても、十分な表現力をこめた演奏は非常に困難であるとシューマンは言っていたことになる。

録音

前述のように演奏・録音されるのはもっぱら第3稿である。ショパンの練習曲ほどではないが演奏される機会が多く、ピアノの演奏会用練習曲では代表的な存在である。知名度が突出した曲がないことや、全12曲でCD1枚に収まる長さ(65~70分程度)のため、全曲録音される場合が多い。

ラザール・ベルマンクラウディオ・アラウジョルジュ・シフラなどが知られる。また若いピアニストがヴィルトゥオーソ性を示すためにレパートリーに選ぶことが多く、近年ではフレディ・ケンプ小菅優アリス=紗良・オットボリス・ベレゾフスキーなどが録音している。超絶技巧練習曲集第3稿を、85歳で全曲録音に成功するピアニストもいる[2]

演奏困難な第2稿の全曲録音は、レスリー・ハワードのリスト全曲集に含まれるものが代表的。ジャニス・ウェバーもCDを出していたが、絶版[3]マッシモ・ゴンが全曲演奏を達成[4]し、イディル・ビレットは69歳で全曲録音に成功[5]している。このように、必ずしも演奏不可能、というわけでは全くなくなったが、第2稿のライブ演奏はやはり第3稿よりは少ない。このほか、ジン・ウェンビンがアジア人で初の全曲録音を達成している[6]

最も平易な初稿を好むピアニストも若干名おり、イディル・ビレットシモーネ・ジェナレッリ[7]ウィリアム・ウォルフラム大井和郎は全曲を吹き込んでいる。オリヴィア・シャムほかが抜粋を録音している。

シモーネ・ジェナレッリ[8][9][10]はすべての版をデジタル配信している。

脚注

  1. ^ a b リスト(作曲)リスト:12の練習曲(作品1番)』小林秀雄 校訂、全音楽譜出版社〈Zen-on piano library〉、2006年2月。ISBN 9784111140206http://shop.zen-on.co.jp/p/1140202013年5月31日閲覧 
  2. ^ 御歳85歳!フランスの大ベテラン、ワイエンベルクが弾く! リストの超絶技巧練習曲集!日本語解説付き!”. www.tobu-trading.com. 2018年11月20日閲覧。
  3. ^ Liszt:Transcendental Studies CDは品切れだが、ダウンロード配信という形で存続。
  4. ^ 超絶技巧練習曲集 S139/R2b ml.naxos.jp; ライブラリーではR2bとなっているが誤りである。
  5. ^ 12の大練習曲 S137/R2a ml.naxos.jp
  6. ^ リスト:ピアノ曲全集 45 - 12の大練習曲(ジン・ウェンビン) ml.naxos.jp
  7. ^ Étude en douze exercices, No. 1 in C Major, S. 136: Allegro con fuoco 2014年11月17日配信 2018年5月17日閲覧
  8. ^ Études d'exécution transcendante, S. 139”. store.cdbaby.com. 2018年11月20日閲覧。
  9. ^ Étude en douze exercices”. store.cdbaby.com. 2018年11月20日閲覧。
  10. ^ 12 Grandes Études”. store.cdbaby.com. 2018年11月20日閲覧。

関連項目

外部リンク