「ケトン」の版間の差分
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== 合成法 == |
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*[[アルコール|第二級アルコール]]を[[クロム酸酸化]]や[[スワーン酸化]]などで酸化するとケトンが得られる。 |
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:<chem>RR'CH-OH +</chem> 酸化剤 <chem>-> R-C(=O)-R'</chem> |
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* [[ハロゲン化アシル]]と[[ギルマン試薬]]を反応させるとカップリングによりケトンが生成する。 |
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:<chem>RC(=O)Cl + R'_2CuLi -> R-C(=O)-R'</chem> |
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* [[ハロゲン化アシル]]や[[エステル]]等と有機リチウム試薬や[[グリニャール試薬]]等の求核剤を反応させることによりケトンが生成する。 |
* [[ハロゲン化アシル]]や[[エステル]]等と有機リチウム試薬や[[グリニャール試薬]]等の求核剤を反応させることによりケトンが生成する。 |
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:<chem>RC(=O)Cl + R'M -> R-C(=O)-R'</chem> |
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しかしこの反応では、生成したケトンがさらに求核剤と反応することでアルコールへと変換される(反応の項を参照)。 |
しかしこの反応では、生成したケトンがさらに求核剤と反応することでアルコールへと変換される(反応の項を参照)。 |
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* [[フリーデル・クラフツ反応]]によるアシル化で芳香族ケトンを得ることができる。 |
* [[フリーデル・クラフツ反応]]によるアシル化で芳香族ケトンを得ることができる。 |
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:<chem>RC(=O)Cl + ArH + AlCl3 -> R-C(=O)-Ar</chem> |
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* [[アルケン]]を[[オゾン酸化]]すると2分子のケトンが得られる。 |
* [[アルケン]]を[[オゾン酸化]]すると2分子のケトンが得られる。 |
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=== 反応性 === |
=== 反応性 === |
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化学的には比較的安定であるが、[[グリニャール試薬]]や[[有機リチウム]]など、求核性の強い有機金属とは反応し、続いて酸で[[加水分解]]すると第三級アルコールが得られる。 |
化学的には比較的安定であるが、[[グリニャール試薬]]や[[有機リチウム]]など、求核性の強い有機金属とは反応し、続いて酸で[[加水分解]]すると第三級アルコールが得られる。 |
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:<chem>R-C(=O)-R' + R''MgBr -> RR'R''C-OH</chem>(加水分解後) |
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また、[[水素化アルミニウムリチウム]]や[[ボラン]]などで還元すると第二級アルコールになり、[[クレメンゼン還元]]や[[ウォルフ・キッシュナー還元]]ではメチレン化合物 R-CH<sub>2</sub>-R' になる。 |
また、[[水素化アルミニウムリチウム]]や[[ボラン]]などで還元すると第二級アルコールになり、[[クレメンゼン還元]]や[[ウォルフ・キッシュナー還元]]ではメチレン化合物 R-CH<sub>2</sub>-R' になる。 |
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:<chem>R-C(=O)-R' + LiAlH4</chem> など <chem> -> RR'CH-OH</chem> |
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:[[画像:Clemmensen Reduction Scheme.png|250px|クレメンゼン還元]] クレメンゼン還元 |
:[[画像:Clemmensen Reduction Scheme.png|250px|クレメンゼン還元]] クレメンゼン還元 |
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酸触媒下に2分子のアルコールと脱水縮合させると[[アセタール]]が得られ、これはケトンの保護法のひとつである。 |
酸触媒下に2分子のアルコールと脱水縮合させると[[アセタール]]が得られ、これはケトンの保護法のひとつである。 |
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:<chem>R-C(=O)-R' + 2 R''OH + H^+ -> RR'C(OR'')2</chem> |
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[[ウィッティヒ反応]]や[[マクマリー反応]]により、アルケンに変えることができる。 |
[[ウィッティヒ反応]]や[[マクマリー反応]]により、アルケンに変えることができる。 |
2018年11月23日 (金) 21:05時点における版
ケトン (ketone) は R−C(=O)−R'(R, R' はアルキル基など)の構造式で表される有機化合物群。身近な物質の中では、除光液として用いられるアセトン (R, R' が -CH3の場合) が代表例である。
R または R' が水素原子であるときは、アルデヒド、環状不飽和炭化水素のパラ位がカルボニル基になっているものはキノンと呼ばれる。
命名法
ケトンを命名する場合は、カルボニル基の位置を示す数字とともに、対応するアルカンの語尾に one をつけるか、接頭語 oxo を用いる。
(→IUPAC命名法)
例: 2-ブタノン (2-butanone) / 2-オキソブタン (2-oxobutane)
合成法
- 酸化剤
しかしこの反応では、生成したケトンがさらに求核剤と反応することでアルコールへと変換される(反応の項を参照)。
この副反応を防ぐために、ワインレブアミドを中間体として経由するケトン合成法が知られている。
- フリーデル・クラフツ反応によるアシル化で芳香族ケトンを得ることができる。
物性・反応性
物性
水素結合性はアルコールほど強くはないが、カルボニル基が持つ極性のため、低分子量のケトンは極性溶媒、非極性溶媒を問わず溶解性は良好である。
反応性
化学的には比較的安定であるが、グリニャール試薬や有機リチウムなど、求核性の強い有機金属とは反応し、続いて酸で加水分解すると第三級アルコールが得られる。
- (加水分解後)
また、水素化アルミニウムリチウムやボランなどで還元すると第二級アルコールになり、クレメンゼン還元やウォルフ・キッシュナー還元ではメチレン化合物 R-CH2-R' になる。
- など
酸触媒下に2分子のアルコールと脱水縮合させるとアセタールが得られ、これはケトンの保護法のひとつである。
ウィッティヒ反応やマクマリー反応により、アルケンに変えることができる。
ほか、アルドール縮合、バイヤー・ビリガー酸化、シュミット反応、ヴィルゲロット反応など、ケトンを基質とする化学反応は数多い。
検出法
ケトンとアルデヒドとを区別するには、還元性を持たないケトンは銀鏡反応やフェーリング反応を起こさないことが利用できる。ただし、糖のケトースは、ケトン構造を持つにも関わらず、還元性を有するため、この方法でアルドースと区別することはできない。メチルケトン構造の検出のためには、ヨードホルム反応が利用できる。
薄層クロマトグラフィーでは 2,4-ジニトロフェニルヒドラジンを呈色試薬として用いることで検出できる。
その他
最も単純なケトンはアセトン(プロパノン)で、工業的にはクメン法によって作られる。糖尿病の際に排泄されるケトンは主としてアセトンである。これは糖や脂肪を代謝する際に自然に生成するもので、過剰に生成されると血中に排出されて毒性を発揮することになる。これを予防するには代謝を改善することが必要である。
主鎖の炭素がケイ素に置き換わった構造(R-Si(=O)-R')はシラケトン(silaketone)と呼ばれる。