「抒情小曲集」の版間の差分
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2018年5月23日 (水) 11:55時点における版
『抒情小曲集』(じょじょうしょうきょくしゅう、ノルウェー語: Lyriske stykker)は、エドヴァルド・グリーグが1867年から1903年にかけて作曲した、全66曲からなるピアノ曲集。6~8曲ごとにまとめられて出版され、全10集からなる。
「蝶々」(作品43-1)、「春に寄す」(作品43-6)、「トロルドハウゲンの婚礼の日」(作品65-6)などはとりわけ有名。
個々の曲名は、音楽之友社「グリーグ 抒情小曲集 1・2」(舘野泉解説)による。
第1集 作品12
1867年に出版。この時期は、ニーナ・ハーゲルップとの結婚の年で、翌1868年にピアノ協奏曲を作曲するなど、充実した創作期の作品である。後の作品集と比較すると、音形は単純で、複雑な技巧は必要としないながらも、すでにグリーグらしさは発揮されている。
- アリエッタ
- 変ホ長調。ポコ・アンダンテというゆったりとしたテンポで開始される。この曲はおよそ34年後に、『余韻』として戻ってくる。
- ワルツ
- 単純な曲ではあるが、グリーグならではの味わいをもつ。
- 夜警の歌
- 妖精の踊り
- 民謡
- ノルウェーの旋律
- アルバムの綴り(アルバムリーフ)
- 祖国の歌
- 短いながらも、堂々とした曲。
第2集 作品38
1883年に出版。第1集から16年の隔たりがある。ピアノ協奏曲、『ペール・ギュント』の音楽を作曲し、名声は揺るがないものとなったが、以降ピアノや歌曲、室内楽作品等を中心に手がけるようになっていく。
- 子守り歌
- その名の通り、静かで美しい作品。主部はト長調。ト短調の中間部からト長調への転調が、絶妙。
- 民謡
- メロディ
- ハリング(ノルウェー舞曲)
- 飛びはね踊り
- スプリング・ダンスとも訳される。ノルウェーの舞曲の一種である。
- エレジー
- ワルツ
- ホ短調。ポコ・アレグロ。
- カノン
- 起伏の大きな、左右の手の対旋律による進行。シューマンの影響がうかがえる。
第3集 作品43
第2集の翌年に作曲されたが、出版は1886年。ヨーロッパ各地への演奏旅行の合間に書かれた曲。全体的に春の喜びに溢れている。
- ちょうちょう(蝶々)
- 細かい流れるような音列が蝶々の飛翔を表現している。分散された音符の中からしっとりわき上がるメロディは、優しさにあふれている。
- 孤独なさすらい人
- 故郷にて
- 小鳥
- 32分音符のトレモロが小鳥のさえずりを表現している。アレグロ・レッジェーロ(軽やかに)。
- 愛の歌
- 非常に甘美な旋律をたっぷりと歌いながら演奏する。
- 春に寄す
第4集 作品47
1888年に出版。作品は1885年に遡るものもある。「アルバムの綴り」、「ハリング」、「飛びはね踊り」等、他の曲集と重複する名前の曲がある。
- 即興的ワルツ
- アルバムの綴り
- メロディ
- ハリング
- メランコリー
- 飛びはね踊り
- 悲歌(エレジー)
第5集 作品54
1891年に出版。「抒情小曲集」の中心をなす完成度の高いもの。最初の4曲は作曲者により「抒情組曲」として管弦楽へ編曲されている。
- 羊飼いの少年
- 憂いをおびたフルートの響きを模した旋律。
- ノルウェーの農民行進曲
- 小人の行進
- 原曲名は「トロルの行進」であるが、巨大なトロルではなく、茶目っけのある子供のようなトロルをイメージしている。
- 夜想曲
- スケルツォ
- 鐘の音
- 空5度の和音を中心とした旋律。生前、グリーグはこの曲の出版を認めなかった。
第6集 作品57
1893年に出版。フランスの保養地マントンで作曲された。祖国への郷愁とヨーロッパ的なスタイルが同居している。
第7集 作品62
1895年に出版。トロルドハウゲンで作曲された。体調が次第に悪化していった時期の作品。第5、6集と比べ地味なため玉石混淆と言われることもあるが、むしろ芸術性は高まりグリーグ後期の繊細で洗練された自然美が描かれる。
- 風の精
- 感謝
- フランス風セレナード
- 小川
- 夢想
- 家路
- 3部形式。家路を急ぐ主部と、過去を回想するカンタービレの中間部とからなる。
第8集 作品65
1896年に出版。ピアニストの舘野泉によれば、第5曲をはじめとして「バラード調」の曲が多い。
- 青春の日々から
- 哀愁を帯びたメロディと、躍動的な中間部が対照的な、やや大規模の曲。
- 農民の歌
- 憂うつ
- サロン
- バラード調で
- トロルドハウゲンの婚礼の日
- 抒情小曲中でもっとも大規模で、人気のある曲。
第9集 作品68
1898年に書かれ1899年に出版。2~3分の小さな曲ばかり。第4曲と第5曲は1899年にグリーグ自身がオーケストラ(基本は弦楽合奏だが第4曲のみオーボエとホルンが1本ずつ使用されている)に編曲している。
- 水夫の歌
- 輪郭のはっきりした快活な曲。2分の2拍子、ハ長調というのもわかりやすい。
- おばあさんのメヌエット
- おばあさんにしては軽快で動きの激しいメヌエット。
- あなたのそばに
- ロマンティックで甘美なメロディ。愛妻ニーナへの想いを綴った曲。
- 山の夕べ
- 山羊笛を摸す単音のメロディが続き(オーケストラ版ではこれをオーボエが延々と吹く)、中間部ではffで最高潮に達する。
- ゆりかごの歌
- ホ長調。アレグロ・トランキラメンテ。pの目立つ曲。グリーグ夫妻はひとり娘をわずか1歳で失った(その後は子供に恵まれなかった)。その子への追想の曲となっている。
- 憂うつなワルツ
第10集 作品71
20世紀に入り、1901年5月に5曲を作曲。1901年に出版。
- 昔々
- スウェーデン民謡とノルウェー舞曲による3部形式の曲。
- 夏の夕べ
- ノルウェーの夏の夕暮れをグリーグらしい独特な曲で仕上げている、とても美しく抒情的な曲である。
- 小妖精
- こちらの駆け回る妖精は、おなじみのトロルではなく、パックである。
- 森の静けさ
- レントの落ち着いた曲。ppで始まり、pppで終わる。
- ハリング
- 過去
- 半音ずつの下降で、抒情小曲集全体の終わりを告げる。
- 余韻
- 第1集 第1曲の「アリエッタ」を3拍子に変奏したワルツ。最初のト音および終結のト音にはフェルマータが付けられ、余韻を残す。
全曲を録音したピアニスト
- ユハニ・ラゲルスペッツ
- ホーカン・アウストボ
- ダニエル・アドニ
- ゲルハルト・オピッツ (RCA)
- エヴァ・クナルダール (BIS)
- 舘野泉
- アイナル・ステーン=ノックレベルグ (ナクソス)
- フローリアン・ヘンシェル
- エヴァ・ポブウォツカ
- アルド・チッコリーニ (Cascavelle)
関連項目
- 抒情組曲 (グリーグ)
- 抒情小曲集 (室生犀星) - 室生犀星の詩集
- 純情小曲集 - 萩原朔太郎の詩集
外部リンク
- 抒情小曲集 第1集 作品12の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- 抒情小曲集 第2集 作品38の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- 抒情小曲集 第3集 作品43の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- 抒情小曲集 第4集 作品47の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- 抒情小曲集 第5集 作品54の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- 抒情小曲集 第6集 作品57の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- 抒情小曲集 第7集 作品62の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- 抒情小曲集 第8集 作品65の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- 抒情小曲集 第9集 作品68の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- 抒情小曲集 第10集 作品71の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト