南オセチア紛争 (2008年)

第二次南オセチア紛争
南オセチア紛争中
グルジア国内南オセチアの位置(左上の四角内はグルジアの位置を示している)。 南オセチア内、薄く塗られている地域は、当紛争前にグルジアが実効支配していた地域
時 2008年8月1日 – 継続中 場所 グルジア 現況 Conflict ongoing
衝突した勢力
南オセチア ロシア アブハジア (コドリ渓谷;Kodori Valley)	グルジア
指揮官
エドゥアルド・ココイトゥイ ドミトリー・メドヴェージェフ アナトーリー・セルジュコフ マラート・クラフメートフ セルゲイ・バガプシュ	ミヘイル・サアカシュヴィリ ダヴィード・カゼラシュヴィリ ザザ・ゴガヴァ
戦力
1大隊(総勢3000と想定) 2大隊(総数不明) 数百名の志願兵(消息筋) 1,000名の志願兵(アブハジア発表)	1大隊 総数不明
被害者数
不明 15人死亡 150人負傷(2008年8月9日現在) 2機の航空機	48名以下の戦闘員と民間人が死亡(2008年8月9日現在), 複数の航空機が撃墜された
民間人の犠牲者数不明; 南オセチアからは1,600名死亡 90名負傷(8月9日まで)とされ、グルジアは非公式な犠牲者数を100前後としている。
ロシアからの情報によると、30,000人以上の避難民が発生している(人口70,000人中).

2008年の南オセチア紛争は、グルジア軍と、親ロシアの南オセチア分離主義者によって大規模な戦闘があった後、2008年8月に始まった。停戦合意後、グルジアから分離独立を求め国際的には独立国と承認されていない地域である南オセチアの首都、ツヒンワリを掌握するため、グルジアが奇襲攻撃を開始。

ロシアがこれに反応し、翌8日には国境を越えて南オセチアへ侵攻、戦車や野戦砲など地上部隊をツヒンワリに進軍させ(参照:ツヒンワリでの戦闘 (Battle of Tskhinvali) )、両国による戦闘が本格化した。

ロシア大統領ドミトリー・メドヴェージェフは、ロシア連邦軍の進軍に関し、南オセチアにおけるロシア国籍を持つ民間人を保護するためであると説明した。 グルジア大統領 (President of Georgia) ミヘイル・サアカシュヴィリは、グルジアはロシアの侵略に対し防衛を行っているだけである、またロシア軍がグルジアの民間人に対して爆撃を行っていると述べた。

経過

• 2008年8月7日 グルジア軍が南オセチア自治州に侵攻。
• 2008年8月8日 ロシア軍が自国民の保護を名目に同州に侵攻し、グルジア軍との戦闘を開始。
• 2008年8月9日 グルジア軍が一時制圧していたツヒンワリをロシア軍が解放。同時にロシア軍によるグルジア全土への空爆が始まる。また、北京五輪開会式に出席していたウラジーミル・プーチン首相が北オセチア入りして陣頭指揮にあたる。これに対してグルジアのミヘイル・サアカシュヴィリ大統領は戒厳令を発令し、グルジア全土の「戦時状態」を宣言。即時停戦をロシア側に求めたものの、ロシア政府はこれを拒否。
• 2008年8月10日 南オセチアと同じくグルジアからの分離・独立を求めて事実上独立状態にあるアブハジア自治共和国の一部を支配するグルジア軍に対してロシア軍が空爆し、戦火がアブハジアにまで拡大。また、ロシア海軍の黒海艦隊がグルジア沿岸に展開した。これらのロシア軍の猛攻と圧力により、グルジア軍が同日南オセチアから撤退。

背景

グルジアの狙撃手(2004年の小規模なグルジア-オセチア間の敵対時)

詳細は「南オセチア紛争」および「グルジア・ロシア危機 (2008年)」を参照

オセット人はドン川流域に分布する民族である。13世紀のモンゴル帝国の侵略によって、自らの地域を追われカフカスに移動し、現在ロシア国内である北オセチアと、現在ほとんどの国がグルジアの一部と認めている南オセチアに定住した。 南オセチアには、地域内70,000人のうち、1/5の14,000人のオセット人が居る。 同地域は、ルクセンブルグの1.5倍の面積がある。 南オセチア人は、BBCに報道されたとおり、北オセチアの同じ民族と結集を望み、トビリシのグルジア政府 (Government of Georgia) の市民であることを望まなかったため、1991年から1992年の南オセチア紛争で、グルジアから分離独立した。(2,000人以上が死亡したとされている))

ロシア、北オセチア(ロシアの一部)、南オセチア、グルジアから、合計500の部隊で1992年の停戦内容を監視する平和維持軍が派遣された。グルジアは、分離主義者に肩入れするロシアを非難している。モスクワはこれを否定している。 ここ何年かで、分離主義者とグルジア軍の突発的な衝突により、数十人が死亡している。 サアカシュヴィリは、グルジア共和国内で、南オセチアに「大規模な自治」が付与される和平案を提示したが、分離主義者は完全な独立を望んだ。

今日、多くの南オセチアの住民は、ロシアのパスポートを持つロシア市民となっている。BBCによれば、「南オセチア7万人のうち、半分以上が、ロシアのパスポートを渡すと言うモスクワの提案を採用した」 ドミトリー・メドヴェージェフは、90%の南オセチア住民がロシアのパスポートを保有していると主張している。ロシアは、これをもとに「住民を保護するための介入」を正統な行為と主張している。

詳細

8月1日から8月7日まで: 前哨戦

8月1日の遅く、グルジア軍と南オセチアの準兵士との武力衝突があり、6名が死亡、21名が負傷した。双方とも、相手が先に攻撃してきた、と主張している。8月3日、ロシア政府は南オセチア住民に対し、難民としてロシア国内への緊急避難を認め、この日に20台のバスを差し向けている。

その後の数日、戦闘は散発的に続いた。8月6日、グルジアは装甲兵員輸送車(APC)1台と3名のグルジア軍平時維持部隊が負傷したと発表した。その夜には4名が死亡し、グルジア軍は夜明けと共に砲撃を再開した。南オセチアの住民は再び避難を始め、グルジア軍は戦車、大砲、兵士を国境付近に移動させた 。グルジアの内務長官 (Vano Merabishvili) は、8月7日の戦闘で10名以内のグルジア兵が死亡したと発表した。

グルジア大統領のサアカシュヴィリは8月7日19:10のテレビ生放送で、「南オセチアの戦闘地域では住民が銃撃にさらされ、現在も大砲、戦車、自走砲による集中砲火を浴びている。どちらが不法なのかは明らかである。さらには迫撃砲や擲弾筒も使われ始めている」と述べている。もっともこの日の終わりに、サアカシュヴィリ大統領は一方的に停戦を宣言し、「どんな形でもよいので」として、話し合いを要求している。その条件として、南オセチアの完全自治を長期的に認めること、ロシアも協定に加わること、恩赦を実施すること、国際機関の仲裁による停戦とすること、などを挙げた。