ラゴズィン・システム

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ラゴズィン・システム
abcdefgh
8
a8 black rook
b8 black knight
c8 black bishop
d8 black queen
e8 black king
h8 black rook
a7 black pawn
b7 black pawn
c7 black pawn
f7 black pawn
g7 black pawn
h7 black pawn
e6 black pawn
f6 black knight
d5 black pawn
b4 black bishop
c4 white pawn
d4 white pawn
c3 white knight
f3 white knight
a2 white pawn
b2 white pawn
e2 white pawn
f2 white pawn
g2 white pawn
h2 white pawn
a1 white rook
c1 white bishop
d1 white queen
e1 white king
f1 white bishop
h1 white rook
8
77
66
55
44
33
22
11
abcdefgh

ラゴズィン・システム (Ragozin System) は、チェスオープニングの1つで、クイーンズ・ギャンビット・ディクラインド (1.d4 d5 2.c4 e6) の一変化である。1.d4 d5 2.c4 e6 3.Nc3 Nf6 4.Nf3 Bb4で出来た形がラゴズィン・システムの基本形である[1]

ニムゾ・インディアン・ディフェンスによく似たオープニングで[2]、ニムゾ・インディアンからの手順前後でこのオープニングになることもある[3]1960年東ドイツ(当時)ライプツィヒで開催された第14回チェス・オリンピアードで対局されたジツェスク対フィッシャー戦では1.d4 Nf6 2.c4 e6 3.Nc3 Bb4と指されニムゾ・インディアンになったが[4]、その後4.e3 0-0 5.Bd3 d5 6.Nf3 Nc6と進行しラゴズィン・システムに変化した[5]

主な変化[編集]

5.e3 0-0 6.Bd3 Nc6 7.0-0 dc 8.Bxc4 Bd6 9.Bb5 e5 10.Bxc6 ed 11.Nxd4 bc 12.Nxc6 Qd7[2][6]

この進行は形勢互角である[6]

白の5手目では他に5.cdや5.Qa4+と指す手もある[2]。5.cdと指すと5.… ed 6.Bg5 h6 7.Bh4 g5 8.Bg3 Ne4 9.Nd2! Nxc3 10.bc Bxc3 11.Rc1 Ba5と進行し[2]、5.Qa4+と指すと5.… Nc6 6.e3 0-0 7.Bd2 a6 8.Qc2 dc 9.Bxc4 Bd6と進行する[2]。なお5.Bg5と指すとヴィエナ・ヴァリエーションに変化し[2]、5.Qb3と指すと5.… Nc6 6.e3と進行しニムゾ・インディアンに変化する[2]

白の6手目では他に6.Bd2と指す手もある[2]。以下6.… Nc6 7.a3 Bxc3 8.Bxc3 Ne4と進行する[2]。この手順中白の7手目で7.Qc2と指すと7.… dc 8.Bxc4 Bd6 9.Bb5 e5と進行する[2]

白の7手目で7.a3と指す手は1961年に対局されたレシェフスキー対フィッシャー戦で白のレシェフスキーが指した手で[7]、以下7.… Bxc3+ 8.bc Na5 9.Nd2 c5 10.0-0 b6 11.cd ed 12.f3 Re8と進行し互角の形勢となった[7]

白の8手目で8.a3??と指すと8.… Bxc3 9.bc cdと進行し白は駒損になる[7]

黒の8手目で8.… Bxc3と指すと白に9.bcと指され白のポーンの形が良くなる[8]。また8.… Bd7と指しても9.h3 Bd6 10.e4 e5 11.Bg5と進行し白が指しやすい展開となる[2]

白の9手目では他に9.Nb5や9.Qc2と指す手もあるがどちらの手も形勢互角の展開となる[9]。9.Nb5と指すと9.… Be7 10.h3 a6 11.Nc3 Bd6 12.e4 e5と進行し[9]、9.Qc2と指すと9.… e5 10.h3 Qe7 11.Bd2 Bd7 12.Rae1 Rae8と進行する[9]

黒の9手目で9.… Ne7と指すのは弱気な手[9]

白の10手目で10.deと指すと黒に10.… Nxe5と指され白の9手目の意味が無くなる[9]。また10.d5と指しても黒に10.… Ne7と指された後11.e4 c6と進行し黒にポーンの交換を強要され白が指しにくくなる[9]

黒の10手目で10.… bcとビショップを取ると白に11.deと指されてビショップとナイトフォークされて黒は駒損になる[6]。また10.… e4??と指すと白に11.Bxe4と指されてビショップを逃げられてしまう[6]

白の11手目では他に11.Bxb7や11.edと指す手もある[6]。11.Bxb7と指すと11.… Bxb7 12.Nxd4 Qd7と進行し形勢互角[6]。11.edと指す手は前述のジツェスク対フィッシャー戦で白のジツェスクが指した手で[6]、以下11.… Bxb7 12.Bg5 Re8 13.Qd3 c5 14.dc?? Bxh2+と進行し白のジツェスクが投了した[10]。この後15.Nxh2とビショップを取っても黒に15.… Qxd3とクイーンを取られクイーンとビショップの交換になり勝負にならない[11]

参考文献[編集]

脚注・出典[編集]

  1. ^ 『定跡と戦い方』、127-129、133頁。
  2. ^ a b c d e f g h i j k 『定跡と戦い方』、133頁。
  3. ^ 『やさしい実戦集』、125-126頁。
  4. ^ 『やさしい実戦集』、123-124頁。
  5. ^ 『やさしい実戦集』、124-126頁。
  6. ^ a b c d e f g 『やさしい実戦集』、128頁。
  7. ^ a b c 『やさしい実戦集』、126頁。
  8. ^ 『やさしい実戦集』、126-127頁。
  9. ^ a b c d e f 『やさしい実戦集』、127頁。
  10. ^ 『やさしい実戦集』、128-130頁。
  11. ^ 『やさしい実戦集』、130頁。
  12. ^ ISBNコードは新装版のもの。