チャタム級軽巡洋艦

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チャタム級軽巡洋艦

1911年に撮られた「チャタム」
艦級概観
艦種 軽巡洋艦
艦名
前級 ウェイマス級
次級 バーミンガム級
性能諸元
排水量 常備:5,400トン
満載:-トン
全長 139.6m
水線長 131.0m
全幅 14.9m
吃水 4.9m
機関 ヤーロウ式石炭・重油混焼水管缶12基
+パーソンズ直結タービン2組4軸推進
最大出力 25,000hp
最大速力 25.5ノット
航続距離 16ノット/4,500海里
燃料 石炭:1,240トン、重油:260トン
乗員 475名
兵装 Mk XII 15.2cm(45口径)単装速射砲8基
4.7cm(50口径)単装速射砲4基
53.3cm水中魚雷発射管単装2門
装甲 舷側:76mm(水線部)
甲板:10~38mm
司令塔:102mm

チャタム級軽巡洋艦 (英語: Chatham class Light cruiser) はイギリスオーストラリアが建造した軽巡洋艦[1][2]。本級の基本設計はタウン級軽巡洋艦を元にしていたために、本級はタウン級のサブグループの一つに分類されている[注釈 1]

概要[編集]

本級はタウン級軽巡の第三グループにあたり[注釈 1]、1910年度計画により6隻が建造された[7]ブリスベン (HMAS Brisbane) のみ、オーストラリアのコッカツー工廠で建造された[8][注釈 2]。 3隻(チャタム、タブリン、サウサンプトン)が本国艦隊に、本級3隻(シドニー、メルボルン、ブリスベーン)と準同型艦アデレード (HMAS Adelaide) が[10]英連邦オーストラリア海軍で就役した[7]。第一次世界大戦では、オーストラリア海軍の軽巡シドニー (HMAS Sydney) が、ドイツ帝国海軍軽巡エムデン (SMS Emden) を撃沈する殊勲を立てた[11]

第一次世界大戦後の1920年、イギリス海軍はネームシップのチャタム (HMS Chatham) をニュージーランド戦隊に貸与した[12]。だが燃費の悪さから1922年に除籍され、1924年にイギリスへ送り返された[注釈 3]。 3隻(チャタム、タブリン、サウサンプトン)は1926年に売却された[7]。1930年代後半になると旧式化した本級はアデレードを残して除籍される[注釈 4]。 代艦としてイギリスはオーストラリア海軍にパース級軽巡洋艦3隻を[16]、ニュージーランド海軍にリアンダー級軽巡洋艦を貸与した[17][注釈 5]

艦形[編集]

本級の船体は長船首楼型船体を採用していた。艦首は前方に傾斜したクリッパー型の艦首から中央部に主砲の「Mk I 1915年型 15.2cm(50口径)速射砲」を防盾の付いた単装砲架で1基、司令塔を基部とする艦橋と単脚式の前部マストが立つ。等間隔に並ぶ4本の煙突の舷側は艦載艇置き場となっており、艦載艇は2本1組のボート・ダビットが片舷5組で計10組により運用された。左右の舷側甲板上に15.2cm速射砲が防盾の付いた単装砲架で片舷3基ずつ配置されていた。甲板一段分下がった箇所で後部マストと見張り所が立ち、後部甲板上に15.2cm主砲が後ろ向きに1基が配置された。

兵装[編集]

主砲[編集]

15.2cm(45口径)速射砲のイラスト
「ブリスベーン」の15.2cm(45口径)速射砲

主砲は本級から「Mk XII 1913年型 15.2cm(45口径)速射砲」を採用した。その性能は重量45.36kgの砲弾を仰角15度で12,344mまで届かせられるこの砲を単装砲架で8基を搭載した。砲架の俯仰能力は仰角15度・俯角7度で旋回角度は240度の旋回角度を持っていたが実際は上部構造物により射界の制限を受けた。砲の旋回、砲身の上下・砲弾の装填の動力は人力を必要とした。発射速度は毎分5~7発である。

備砲、魚雷兵装[編集]

他に近接火器として「ヴィッカース 1900年型 Mk I 4.7cm(50口径)速射砲」を採用している。1.5kgの砲弾を仰角12度で5,120mまで到達できた。単装砲架は360度の旋回角度を持っていたが実際は上部構造物により射界の制限を受けた。俯仰は仰角30度・俯角5度で発射速度は毎分25発だった。これを単装砲架で4基を搭載した。他に主砲では手に負えない相手への対抗として53,3cm魚雷発射管を単装2基ずつ装備した。

機関[編集]

本級はヤーロウ式石炭・重油混焼水管缶12基とパーソンズ式直結タービン2基2軸を組み合わせて最大出力25,000shp、最大速力25.5ノットを発揮した。なお、「サウサンプトン」のみタービンはブラウン・カーチス式だった。機関配置は第一次大戦前の「装甲巡洋艦」と同じく機関区前部にボイラー室、後部に機関室を置く旧時代的な配置を採っていた。

出典[編集]

注釈[編集]

  1. ^ a b 第一グループがブリストル級軽巡洋艦[3]、二番グループがウェイマス級軽巡洋艦である[4]。三番グループが本級、四番グループがバーミンガム級軽巡洋艦であった[5]。またギリシャが発注したバーケンヘッド級軽巡洋艦もイギリス海軍に在籍していた[6]
  2. ^ 準同型艦アデレード (HMAS Adelaide) もコッカツー工廠で建造された[9]
  3. ^ イギリスはニュージーランド戦隊にダナイー級軽巡洋艦2隻(ダニーディンダイアミード)を貸与した[13][14]
  4. ^ 21隻建造された旧タウン級軽巡のうち、第二次世界大戦に参加したのはアデレードだけだった[15]
  5. ^ オーストラリア海軍(シドニーパースホバート[18]、ニュージーランド海軍(リアンダーアキリーズ[19]

脚注[編集]

  1. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 18aイギリス/軽巡洋艦「チャタム」級 CHATHAM CLASS
  2. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 62aオーストラリア/軽巡洋艦「チャタム」級 CHATHAM CLASS
  3. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 16イギリス/軽巡洋艦「ブリストル」級 BRISTOL CLASS
  4. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 17イギリス/軽巡洋艦「ウエイマス」級 WEYMOUTH CLASS
  5. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 19aイギリス/軽巡洋艦「バーミンガム」級 BIRMINGHAM CLASS
  6. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 20イギリス/軽巡洋艦「バーケンヘッド」級 BIRKENHEAD CLASS
  7. ^ a b c 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 18b.
  8. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 62c.
  9. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 63aオーストラリア/軽巡洋艦「バーミンガム」級 BIRMINGHAM CLASS
  10. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 19b.
  11. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 62bシドニー Sydney
  12. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 71a〔戦利・貸供与艦〕ニュージーランド/軽巡洋艦「チャタム」 CHATHAM
  13. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, pp. 31–33イギリス/軽巡洋艦「ダナイ―」級 DANAE CLASS
  14. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 71b〔戦利・貸供与艦〕ニュージーランド/軽巡洋艦「ダナイ―」級 DANAE CLASS
  15. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 63b.
  16. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 82イギリス/軽巡洋艦「改リアンダー」級 MODIFIED LEANDER CLASS
  17. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 81イギリス/軽巡洋艦「リアンダー」級 LEANDER CLASS
  18. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 143オーストラリア/軽巡洋艦「改リアンダー」級 MODIFIED LEANDER CLASS
  19. ^ 世界の艦船、近代巡洋艦史 2009, p. 144ニュージーランド/軽巡洋艦「リアンダー」級 LEANDER CLASS

参考文献[編集]

  • 世界の艦船 増刊第46集 イギリス巡洋艦史」(海人社)
  • 編集人 木津徹、発行人 石渡長門「<第1部> 近代巡洋艦の成長」『世界の艦船 2010.No.718 近代巡洋艦史』株式会社海人社〈2010年1月号増刊(通算第718号)〉、2009年12月。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]