日本における駐車と停車
停車(ていしゃ)は、車両等が一時的に停止すること。
基本的には車輪を用いた乗り物がどこかで一時的に停まることを指す。
日本の道路交通法においては、「車両等が停止することで駐車以外のものをいう。」とされ、継続的な停止とされる駐車とは区別される。
以下は、日本の道路交通法による停車に関する規制について詳述する。
停車とは
車両等が停止することで駐車以外のものをいう。具体的には次のような場合がある。
- 人の乗降のための停止
- 客待ち(人待ち)は、駐車となる
- 五分を超えない貨物(荷物)の積みおろしのための停止
- 荷待ちは、駐車となる
- 法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するための一時停止
- 以下、例示
- 他との衝突その他の危険を予防し、防止し、または危険を回避するため
- 行き違いのための待ち合わせなどのため
- 赤信号や一時停止の道路標識、踏切の直前において
- 道路外との出入りにおいて歩道や路側帯を横断する場合のその直前において
- 横断歩道・自転車横断帯やその手前の直前で駐停車している他の車両の側方を通過してその前方に出ようとする直前において
- 横断歩道・自転車横断帯、交差点、道路外との出入りや進路変更その他において、他の歩行者や優先車両等に対して
- 乗降中の路面電車の後方において
- 発進しようとする乗合自動車や、交差点での右左折または道路外に出るためあらかじめその場所の手前で進路変更しようとしている車両が、進路変更の合図を出している場合に譲るべき場合において
- 交差点の近傍で緊急自動車等に避譲するため
- 交差点等への進入および停止の禁止に従うため
- 歩道を通行している普通自転車または路側帯を通行している軽車両が歩行者に対して
- 身体障害者等、視聴覚障害者、老人、児童、幼児などが通行・横断中のため
上記以外の、客待ち、荷待ち、五分をこえる貨物の積みおろし、故障もしくはその他の理由による継続的な車両等の停止、または、運転者が車両を離れて直ちに運転することができない状態にある場合(放置駐車)については、駐車となり、停車とはならない。
駐車および停車を合わせて「駐停車」という。
放置駐車、駐車については同項目を参照。
駐停車の禁止
駐停車違反の際に、
- 放置駐車であった場合
- 駐車および停車が禁止されている場所(駐停車禁止場所)において違反した場合
には、そうではない場合に比べてそれぞれ、交通違反の罰則や反則金、行政処分の基礎点数が加重されている。
なお、交差点等への進入および交差点等での停止禁止の規制は、駐停車禁止の規制とは法的根拠を別にする。「交差点等への進入および停止の禁止」を参照。
駐停車を禁止する場所
道路交通法上、停車が禁止される場所では、通常は駐車も禁止される(駐停車禁止)。
車両が、以下のような場所や場合において駐停車した場合は、駐停車違反となる。ただし、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合を除く。
- 駐停車禁止の道路標識・道路標示により駐停車が禁止されている場所
- 交差点、横断歩道、自転車横断帯、踏切、軌道敷内、坂の頂上付近、勾配の急な坂又はトンネル
- 交差点の側端又は道路のまがりかどから5m以内の部分
- 横断歩道又は自転車横断帯の前後の側端からそれぞれ前後に5m以内の部分
- 安全地帯が設けられている道路の当該安全地帯の左側の部分及び当該部分の前後の側端からそれぞれ前後に10m以内の部分
- 路線バス・トロリーバス・路面電車の停留場等を表示する標示柱又は標示板が設けられている位置から10m以内の部分(当該停留場等に係る運行系統に属する乗合自動車・トロリーバス・路面電車の運行時間中に限る)
- 踏切の前後の側端からそれぞれ前後に10m以内の部分
駐停車の方法
車両が、以下の駐停車の方法に従って駐停車しなかった場合は、駐停車違反となる。ただし、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合を除く。
- 人の乗降又は貨物の積卸しのため停車するときは、できる限り道路の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないように停車する。
- 駐車するときは、道路(車道)の左側端に沿い、かつ、他の交通の妨害とならないように駐車する。
- なお、駐停車するときに、車道の左側端に接して路側帯がある場合には、法令に従ってその路側帯内に入り(詳細は「路側帯」を参照)、かつ、他の交通の妨害とならないように駐停車する。
- ただし、道路標示等により駐停車の方法が指定されているときは、その方法に従い駐停車する。
時間制限駐車区間における駐停車
時間制限駐車区間における駐車は、「時間制限駐車区間」を参照。
なお、時間制限駐車区間において人の乗降又は貨物の積卸しのため停車するときは、道路標示等により指定されている駐停車の方法に従い停車する。パーキング・メーターやパーキング・チケットを作動させる必要は通常はない。
駐停車禁止の適用除外
駐車禁止が適用除外される場合については、「駐車禁止の適用除外」を参照。
以下のような場所、方法や場合等においては、「駐停車を禁止する場所」の項にかかわらず停車ができる。
- 法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合 (※「駐停車の方法」および「時間制限駐車区間」の項のいずれも適用除外。)
- 路線バス・トロリーバス・路面電車がその属する運行系統に係る停留所等で乗客の乗降のため停車するとき (※「駐停車の方法」の項には従う。「時間制限駐車区間」の項は適用除外。)
- 「停車可」の道路標識により停車可とされている場所(※「駐停車の方法」および「時間制限駐車区間における駐停車」の項に従う。)
- 都道府県公安委員会の規則により、駐停車禁止の指定から除外されている場合。この場合は、それらの道路標識・道路標示による効力が及ばないだけである事に注意が必要である。例えば、道路標識等が無くとも駐停車禁止となるような場合など(法定駐停車禁止場所など)には、依然として駐停車禁止である[注釈 1]。なお東京都の例では、駐車禁止の指定からの適用除外はあっても、駐停車禁止の指定からの適用除外は規定されていない[1]。
高速道路等における駐停車
高速自動車国道および自動車専用道路においては、上記に拘わらず、以下の例外となる場合を除いて、原則駐停車禁止である。
- 法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合。
- 路線バスが、その属する運行系統に係る停留所等において、乗客の乗降のため停車し、又は運行時間を調整するため駐車するとき。
- 駐車の用に供するため区画された場所において停車し、又は駐車するとき。
- 故障その他の理由により停車し、又は駐車することがやむを得ない場合において、停車又は駐車のため十分な幅員がある路肩又は路側帯に停車し、又は駐車するとき。
- 料金支払いのため料金徴収所において停車するとき。
- 渋滞で停車することが止むを得ない場合。
サービスエリア等における駐停車枠外は元より、加速車線・減速車線・登坂車線においても駐停車禁止である。本線車道・加速車線・減速車線・登坂車線やその路側帯・路肩等(以下、本線車道等とその近傍と略す)での駐停車(最低速度違反を含む)は、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合を除いて、非常に危険な行為である。特に、路肩や非常駐車帯、トンネル内で故障や休養などのために漫然と駐停車している自動車に後続車が激突するなど重大事故が多発している(ただし、後続車の責任も免れる訳ではない)。
本線車道等とその近傍においては、路側帯・路肩、非常駐車帯などの中に駐停車していたとしても、脇見や居眠りなどの後続車が突入・激突する重大事故が多く発生している。
また、本線車道等とその近傍において、渋滞や混雑など(法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため)により、一時停止または徐行もしくは、本線車道を最低速度制限未満の速度で通行するなどの場合においても、後続車の注意を喚起し追突事故を防止するために、非常点滅表示灯を点灯させる事が、法令上の規定はないが、事実上推奨されている。
違反への制裁
- 駐停車禁止場所への放置駐車 3点 反則金又は放置違反金 普通車 18,000円
- 駐停車禁止場所へのその他の違反 2点 反則金 普通車 12,000円
- 交差点等進入禁止違反 1点 反則金 普通車 6,000円
- 駐停車禁止場所での停車により、例えば横断歩道内または横断歩道前後5mに自動車等を停車させ、横断歩道を渡ろうとしている歩行者を後続車の視界から遮った場合などは、自動車等の運転者及び使用者等が事故の損害賠償責任を負うこともある。場合によっては、自動車運転過失致死傷罪に問われることもある。
駐停車禁止の理由
駐停車が禁止されている場所は、交通が複雑に交錯する場所など、危険な場所やその近傍が中心である。障害物が路上に存在する事は、著しい交通の妨害や危険を生じさせる。そのため、駐停車違反となるような場合には、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため一時停止する場合を除いて、駐車はもとより、人の乗降又は貨物の積卸しのための短時間の停車であっても、法規上は禁止されている。
駐車禁止の理由の項目も参照のこと。
停車スペース
路線バスなどが乗降のため一時停車するような場合でも、交通の円滑を確保するために、バス停留所に「バスカット」等が設置されている。そのようなスペースは一般車のための駐停車場ではなく、運行時間内に駐停車すると、駐停車禁止場所での(放置)駐車違反となり加重処罰の対象となる。
交差点等への進入および停止の禁止
また、駐停車禁止等の規制とは別に、車両等の交差点等への進入および交差点等での停止を禁止する規制がある。これは、以下の場所において車両等が、その場所での停止を禁止するとともに、その場所で停止する事になるおそれがある場合は、予めその場所への進入を禁止するものである。
脚注
注釈
出典
- ^ 東京都道路交通規則、昭和46年11月30日東京都公安委員会規則
関連項目
外部リンク
- 橋本愛喜 (2021年3月9日). “世間が知らない「トラックが路上駐車をする理由」”. Yahoo!ニュース. 2021年7月20日閲覧。