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カメロケラス

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カメロケラス
生息年代: オルドビス紀中期からシルル紀ウェンロック世, 470.0–425.0 Ma
ケンタッキー州北部のカメロケラスの化石
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 頭足綱 Cephalopoda
亜綱 : オウムガイ亜綱 Nautiloidea
(四鰓亜綱 Tetrabranchia
: エンドセラス目 Endocerida
: エンドセラス科 Endoceratidae
学名
Cameroceras
Conrad1842
下位分類群
  • C. alternatum
  • C. hennepini
  • C. inaequabile
  • C. inopinatum
  • C. stillwaterense
  • C. trentonenseタイプ標本

カメロケラス学名Cameroceras、「気房のある角」の意[1])は、主にオルドビス紀の間に生息していた絶滅した頭足類チョッカクガイの1種である。約4億7000万年前のオルドビス紀中期に出現し、ローレンシア大陸バルティカ大陸シベリアの浅海域に生息していた[2]。当時の動物相における一般的な構成要素であった。オルドビス紀末の大量絶滅で大打撃を受け種数と個体数は減少し、最後の種はシルル紀ウェンロック世で絶滅を迎えた。殻の長さは種によるが70cm-1m程度であり[2]、殻の長さ6mかそれ以上とされた種は別属に分類されるようになった[3]。そのため、この属を「全長11m」と記述した書籍がいくつか存在するが間違いである。

形態

硬質な円錐状の甲殻により保護されており、甲殻はアンモナイトなどと同様に隔壁で仕切られ数多くの気室が存在した。殻の開口部に柔らかい筋組織が位置し、開口部から甲殻全体の三分の一の領域まで軟体部が存在していた[4]。触手については現代のオウムガイと同様に頭部を元に伸び、獲物を捕縛するために用いられていたとされている[4]。現生のオウムガイとの対比から、触手にはイカタコのような吸盤は存在しなかったと推測されている[1]。触手の根元にはケラチンにより構成された硬いクチバシが存在し、捕食対象の外骨格を砕いていたと考えられている[1]。軟体部の化石は発見されていないものの、巨大な目や姿勢制御のための漏斗が存在したと推測されている[5]

残る三分の二の領域は浮力の調整に用いられたと考えられており、連室細管を通して体液を移動させて浮力を制御していたとされている。これは現代のオウムガイにも観察される事象である[5]。また体液の移動は重心の移動にも使用されたとみられ、漏斗からの噴射に対して水平方向の平衡性が保たれるよう作用していた[6]

名称

もともとカメロケラスはエンドセラスヴァギノケラスメニスコケラスといった大型のチョッカクガイのゴミ箱分類として用いられていたため、カメロケラスを明確な属として表記するのは非常に難しい。タイプ種であるC. trentonense1842年にコンラードが報告したものの、それ以降カメロケラスという名称は複数の意味を持つようになった。1847年にエンドセラスを命名したホールはC. trentonenseをカメロケラスとして認めたが、ニュージャージー州トレントン石灰岩から発掘された大型のチョッカクガイに対してはエンドセラスの学名を使用した。それゆえカメロケラス属とエンドセラス属が同じ種を含んでいる可能性がある。カメロケラスの方がエンドセラスよりも先に命名されているため、同一の種を示す場合はカメロケラスの学名が優先される。また、エンドセラス以外の属の種をカメロケラスに含んでいる。

いくつかの書籍においては、全長最大で11メートル(殻の長さ9m)に達すると考えられる巨大なエンドセラス類をカメロケラスとして表記している[7]。当該の標本はすでに失われているが、現在はエンドセラス属のEndoceras giganteumに属するとされている[3]

生態

アフェトケラスを捕食するカメロケラス。近くを遊泳しているのはシクロストミケラス

カメロケラスは捕食動物であったことが確実視されている。現生のイカタコなどの頭足類と同様の生態とすると、昼は深海に身を潜め、夜は浅海域に移動して獲物を探していたと考えられる[1]

ただし、カメロケラスの移動能力について、海中を自在に移動していたとする見解は少ない。機敏な浮上や移動は困難だったとみられており、活動的に遊泳してはいなかったとされている。甲殻の四分の一以上が軟体部に占められていると浮上は困難という指摘があり、軟体部が三分の一を占めていたカメロケラスもそうであったという見解もある[7]。特に巨大な個体は海底に鎮座し、移動することはほぼなかったとまで言われている[6]土屋健は、カメロケラスは獲物が射程圏内に入るまで鎮座して、機会があれば俊敏に触腕で捕らえるような、待ち伏せ型の捕食者だったと推測している[7]

出典

  1. ^ a b c d ヘインズ & チェンバーズ (2006), p. 21.
  2. ^ a b Frey, R.C. 1995. Middle and Upper Ordovician nautiloid cephalopods of the Cincinnati Arch region of Kentucky, Indiana, and Ohio.”. 17 November 2016閲覧。 U.S. Geological Survey, p.73
  3. ^ a b Klug, Christian; Baets, Kenneth De; Kröger, Björn; Bell, Mark A.; Korn, Dieter; Payne, Jonathan L. (2015). “Normal giants? Temporal and latitudinal shifts of Palaeozoic marine invertebrate gigantism and global change” (英語). Lethaia 48 (2): 267–288. doi:10.1111/let.12104. ISSN 1502-3931. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/let.12104. 
  4. ^ a b 土屋 (2018), p. 46.
  5. ^ a b 土屋 (2018), p. 47.
  6. ^ a b Cameroceras”. Palaeos.org. 9 December 2014閲覧。
  7. ^ a b c 土屋 (2018), p. 48.

参考文献