ベルゴニー・トリボンドーの法則
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ベルゴニー・トリボンドーの法則[1](ベルゴニー・トリボンドーのほうそく、フランス語: loi de Bergonié et Tribondeau , 英語: Bergonie-Tribondeau's law[2]、またはベルゴニエ-トリボンドーの法則[3])は、放射線の生体組織への影響に関する法則である[4]。放射線の影響は、(1)細胞分裂頻度が高いほど、(2)将来行う細胞分裂の数が多いほど、(3)形態および機能が未分化なほど、強く現れるというものである[4][5]。
概要
[編集]フランスの医師・医用電気工学者の、ジャン=アルバン・ベルゴニエ(1857-1925)とルイ・トリボンドー(1872-1918)が、1906年に発見した[1]。
二人は、雄のラットの精巣にラジウム-226線源由来のガンマ線を照射し、その後の組織標本を顕微鏡で観察した結果、精原細胞→精母細胞→精細胞→精子の順で障碍が軽減することを見出した。これが一般化され、「放射線の細胞への影響(細胞の放射線感受性)は、①細胞分裂頻度が高いほど②将来、分裂回数が多いほど③形態的、機能的に未分化なほど、大きくなる」と定式化された[1]。
「細胞の放射線に対する感受性は、その細胞の再生能力に比例し、分化程度に反比例する」と表現されることもある[2]。
この法則は多くの場合に成り立つが、リンパ球や、組織レベルの反応など、成り立たない例もある[1]。
細胞分裂頻度 | 組織 | 放射線感受性 |
---|---|---|
高い | リンパ組織、造血組織(骨髄)、睾丸精上皮、卵胞上皮、腸上皮 | 最も高い |
かなり高い | 咽頭口腔上皮、皮膚表皮、毛包上皮、皮脂腺上皮、膀胱上皮、食道上皮、水晶体上皮、胃腺上皮、尿管上皮 | 高度 |
中程度 | 結合組織、小脈管組織、成長している軟骨・骨組織 | 中程度 |
低い | 成熟した軟骨・骨組織、粘液漿液腺上皮、汗腺上皮、鼻咽頭上皮、肺上皮、腎上皮、肝上皮、膵臓上皮、 下垂体上皮、甲状腺上皮、副腎上皮 |
かなり低い |
細胞分裂をみない | 神経組織、筋肉組織 | 低い |
脚注
[編集]出典・参考文献
[編集]- 窪田宜夫ほか『放射線生物学』医療科学社、2008年。ISBN 978-4-86003-384-2。
- 三橋紀夫『がんをどう考えるか-放射線治療医からの提言-』新潮社、2009年。ISBN 978-4-10-610295-0。