魚梁瀬森林鉄道

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search

魚梁瀬森林鉄道(やなせしんりんてつどう)は、かつて高知県にあった森林鉄道である。「日本三大美林」の一つといわれる魚梁瀬杉を運搬することを主目的として開業したが、陸上交通網が整備されつつあったことに加えて、魚梁瀬ダムの完成により軌道が水没したことから廃止となった。

一部路線では一般客も乗車可能だった[1][2]。廃止後は高知東部交通がバスを運行している。

概要[編集]

魚梁瀬地区は、平家の門脇中納言平教経の入洛により集落が始まったとされる。竹や木を並べて水を堰き止めて魚を捕まえる仕掛けを「梁(やな)」と呼ぶが、教経はそうして川魚を捕り暮らしていたことから後にこの地区が「やなせ」と名付けられたようである。藩政時代になってこの山々の森林資源が着目され、下流地域から人々が上がって来るようになり、奈半利川の水流を利用し、魚梁瀬材は河口へと集められていった。

林道開設も早く、1895年(明治28年)、魚梁瀬和田山から宝蔵山にいたる12.4kmの牛馬道を開設。その後和田山 - 魚梁瀬、谷山口 - 東川、魚梁瀬 - 栃谷と延長された。安田川方面も1900年(明治33年)、日浦 - 東川(ひがしごう)、明神口 - 日浦と林道が開設されたが、これは運材よりも物資輸送が主な目的であり、運材は河川を利用していた。しかし、山腹に設けられた牛馬道や車道、さらに流木では間に合わなくなり、1907年(明治40年)に安田川山線に最初の軌道が開設され、その後1910年(明治43年)から田野 - 馬路間23.4kmの鉄道を建設、1911年(明治44年)に完成した。当初は自然の重力を利用した乗り下げで運材が行われており、山へ帰る時は犬または牛にトロリーを牽かせていた。

1915年(大正4年)には久木隧道(333m)が貫通し、魚梁瀬まで開通。さらに1919年(大正8年)には石仙(こくせん)まで開通し、田野 - 石仙間41.6kmが完成した。しかし釈迦ヶ生(しゃかがうえ) - 久木(くぎ)隧道間には地形上。逆勾配が存在し、また奈半利川流域の運材には適さないため、奈半利(なはり)川線の計画が立てられた。これは1928年(昭和3年)から調査が始まり、1929年(昭和4年)11月24日起工、1942年(昭和17年)3月には支線を含めた奈半利川線(奈半利 - 釈迦ヶ生間41.9km)が完成した。ここに総延長250kmに及ぶ国内屈指、そして高知県内最大の森林鉄道網が完成したのである。なお、魚梁瀬森林鉄道とは安田川線、奈半利川線の両幹線に加え、各支線を含めた総称である。

安田川線は1910年(明治43年)に着工し、1919年(大正8年)に田野貯木場 - 石仙間41.6kmが完成。軌間762mm、9 - 10kg/mレールを使用し、最急勾配は逆31.3パーミル、順13.3パーミル、最小曲線半径21.8mであった。一方、奈半利川線は1929年(昭和4年)着工、1942年(昭和17年)に奈半利貯木場 - 釈迦ヶ生間41.9kmが完成した。10kg/mレールを使用し、最急勾配は順16.5パーミル、最小曲線半径30mであった。

馬路地区馬路橋付近の廃線跡・五味隧道
田野町に残る高架橋。この先で奈半利川を渡っていた(橋梁は現存せず)。
奈半利町に残る跨線橋。寺への参道となっている。

路線データ[編集]

  • 路線名
    • 安田川線(幹線)
    • 安田川線 田野貯木場 - 釈迦ヶ生 33.1km
    • 安田川線(支線)
    • 奈半利川線 奈半利貯木場 - 石仙 49.8km
    • 田野線
    • 海岸線
    • 須川線
    • 西谷線
    • 蛇谷線
    • グドウジ線 1.619m
    • 矢筈谷線
    • 竹屋敷線
    • 大谷線
    • 栃谷線
    • 朝日出線
    • 安田川山線
    • 須垣谷線
    • 槙谷線
    • 河平線
    • 宿ノ谷分線
    • 七々川線
    • 東川線
    • 東川線亀谷支線
    • 東川線高面支線
    • 谷山線
    • 中川線
    • 宝蔵線
    • 宝蔵線赤度支線
  • 軌間:762mm
  • 複線区間:駅、一部の区間に有。また、奈半利川線廃止後、安田川線に新たに複線を敷設。

歴史[編集]

  • 1895年(明治28年):魚梁瀬和田山 - 宝蔵山にいたる12.4kmの牛馬道を開設。
  • 1907年(明治40年):安田川林道に手押し軌道が運行を開始。
  • 1910年(明治43年)1月27日:野川林道開設(林用軌道)。田野 - 馬路間工事着工。
  • 1911年(明治44年):田野 - 馬路間の軌道が敷設される。
  • 1912年(大正元年):馬路 - 魚梁瀬間工事着工。
  • 1913年(大正2年):谷山線敷設。
  • 1915年(大正4年):久木隧道が完成し馬路 - 魚梁瀬間が開通。田野 - 二股間工事着工。
  • 1916年(大正5年):魚梁瀬 - 石仙間の工事着工。
  • 1917年(大正6年):魚梁瀬 - 石仙間完成。宝蔵線(西川線)敷設。
  • 1918年(大正7年):中川線敷設。
  • 1929年(昭和4年):七々川線・南栃谷線敷設。
  • 1930年(昭和5年):東川線敷設。
  • 1931年(昭和6年):奈半利貯木場完成。田野貯木場 - 二股間完成。奈半利貯木場 - 立岡間完成(奈半利川鉄橋を除く)。竹屋敷線、蛇谷線、グドウジ線を敷設。
  • 1933年(昭和8年):奈半利川鉄橋完成により奈半利貯木場 - 立岡間開通。
  • 1934年(昭和9年):矢筈谷線敷設。
  • 1935年(昭和10年):二股 - 栃谷口間の橋梁以外の路体工事が起工。
  • 1938年(昭和13年):二股 - 栃谷口間の路体が完成。
  • 1939年(昭和14年)-1940年(昭和15年):二股橋・堀ヶ生橋の工事着工。脱線により列車が谷底に転落する事故が発生、死者14名。
  • 1941年(昭和16年)
    • 8月:大谷支線工事着工。
    • 9月:栃谷口 - 釈迦ヶ生間の工事着工。
  • 1942年(昭和17年)
    • 3月:大谷支線敷設。
    • 10月:栃谷口 - 釈迦ヶ生間完成。これにより全線開通。
    • 11月:開通式が挙行される。
  • 1943年(昭和18年):西谷線敷設。
  • 1958年(昭和33年)
    • 8月20日:北川村長山において、軌道の撤去式典が行われ、長山 - 二股間撤去開始。
    • 11月:6m道路が完成。また竹屋敷線の軌道撤去・車道化も行われる。
  • 1960年(昭和35年)
    • 5月:二股 - 釈迦ヶ生間の2車線道路化が完成。
    • 6月:奈半利川線はトラック輸送に切り替わる。安田川線撤去開始。
  • 1961年(昭和36年)3月:釈迦ヶ生 - 久木隧道間が軌道撤去・車道化完成。
  • 1962年(昭和37年)
    • 2月:久木隧道 - 東川間が軌道撤去・車道化完成。この頃までに、安田 - 明神口間、馬路橋 - 東川間については、軌道の対岸の県道拡幅工事がすでに完成していた。そして、明神口 - 馬路橋間の軌道撤去・車道化が完成し、安田川線も全線トラック輸送に切り替わる。
    • 6月:釈迦ヶ生以奥は、代替道路を上部に新設し、釈迦ヶ生 - 丸山台地間完成
  • 1963年(昭和38年)2月:丸山台地 - 石仙間の代替道路が完成し、ここに森林鉄道が終焉した。
  • 1964年(昭和39年):一部で利用されている線があったが3月30日全線廃止となる。
  • 1970年(昭和45年)6月:魚梁瀬ダム完成。

車両[編集]

重要文化財指定[編集]

馬路村・安田町の境界近くに残る平瀬隧道
安田町に残るオオムカエ隧道

2009年(平成21年)6月30日に、林業技術史上重要な遺産であるトンネルなどの施設が「旧魚梁瀬森林鉄道施設」として重要文化財に指定された。森林鉄道の重文指定は初めてである。

  • 旧魚梁瀬森林鉄道施設 9基5所
    • エヤ隧道
    • バンダ島隧道
    • オオムカエ隧道
    • 明神口橋
    • 釜ヶ谷桟道(かまがたにさんどう)
    • 釜ヶ谷橋
    • 平瀬隧道
    • 河口隧道(こうぐちずいどう)
    • 落合橋
    • 犬吠橋(いぬぼうばし)
    • 井ノ谷橋
    • 小島橋
    • 二股橋
    • 堀ヶ生橋(ほりがをばし)

その他[編集]

魚梁瀬地区丸山公園で保存運転中の野村式機関車
  • 廃線後、野村組工作所(高知市)製のDLのみが保存されていた。その後、1991年(平成3年)に丸山台地にある魚梁瀬丸山公園へ移設・動態保存された[3]。重量があり、線路に与える影響が大きいため、運転される機会は限定されている。通常は谷村鉄工所タイプのDLを垣内鉄工所で復元したものが運転されている。
  • 馬路集落には、現在馬路温泉馬路森林鉄道というポーター社製SLをモデルとした遊覧鉄道が走っている。
  • 北川村内では、廃線後に線路撤去、路盤舗装の上で道路(高知県道11号奈半利東洋線(現在は国道493号))に転用された。

脚注[編集]

  1. ^ 安田川線 - 魚梁瀬森林鉄道遺産Webミュージアム
  2. ^ 奈半利川線 - 魚梁瀬森林鉄道遺産Webミュージアム
  3. ^ 動態保存・復元 - 魚梁瀬森林鉄道遺産Webミュージアム

関連項目[編集]

外部リンク[編集]