農地法

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農地法
日本国政府国章(準)
日本の法令
法令番号 昭和27年7月15日法律第229号
効力 現行法
種類 産業法
主な内容 農地について
関連法令 農地法施行令、農地法施行規則など
条文リンク 法令データ提供システム
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農地法(のうちほう)は、農地及び採草放牧地の取り扱いについて定めた日本の法律である。

構成[編集]

概要[編集]

戦後GHQは保守化した農村を共産主義からの防波堤にしようと同法の制定を農林省に命じた[1][2]。与党自由党や農林省は反対したが、GHQと同様の考えを持っていた池田勇人は保守の支持基盤ができると考え、池田の強い働きかけによって同法は1952年7月に成立した[1]。「農地法」の制定によって農地改革による零細な農業構造が固定され、規模拡大による農業発展の道は閉ざされた[1]。戦前から有力だった農村の共産主義、社会主義勢力は消滅し、農村は保守化した[1]。池田の狙いは見事に実現し[1]、保守化した農家・農村は農協によって組織化され、農協が自由党自民党の集票基盤になり[1]、自民党政権下で、最大の圧力団体となっていった[1]

目的[編集]

この法律は、国内の農業生産の基盤である農地が現在及び将来における国民のための限られた資源であり、かつ、地域における貴重な資源であることにかんがみ、耕作者自らによる農地の所有が果たしてきている重要な役割も踏まえつつ、農地を農地以外のものにすることを規制するとともに、農地を効率的に利用する耕作者による地域との調和に配慮した農地についての権利の取得を促進し、及び農地の利用関係を調整し、並びに農地の農業上の利用を確保するための措置を講ずることにより、耕作者の地位の安定と国内の農業生産の増大を図り、もって国民に対する食料の安定供給の確保に資することを目的とする。

定義[編集]

本法で規制するのは、農地及び採草放牧地である。

「農地」とは、耕作の目的に供される土地をいう。「採草放牧地」とは、農地以外の土地で、主として耕作又は養畜の事業のための採草又は家畜の放牧の目的に供されるものをいう。 これらは、事実状態で判断され、登記簿上の地目は関係ない。

権利移動[編集]

農地または採草放牧地について、使用及び収益を目的とする権利を設定したり移転することについて、本法では規定を置いている。「使用及び収益を目的とする権利」とは、所有権地上権永小作権質権使用貸借による権利、賃借権等が対象となる。一方抵当権はここにいう権利に含まれない。これらの権利の設定、移転をしようとするときは、原則として農業委員会の許可を得なければならない。許可を得ずになされた契約は無効となる。違反者は3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられる。

なお、個人がその住所地以外で農地または採草放牧地について権利を取得する場合は都道府県知事の許可が必要とする規定があったが、改正法によりこの規定の部分は削除されたため、この場合も農業委員会の許可が必要となる。

農業委員会は、権利を取得しようとする者又はその世帯員等の耕作又は養畜の事業に必要な機械の所有の状況、農作業に従事する者の数等からみて、これらの者がその取得後において耕作又は養畜の事業に供すべき農地及び採草放牧地のすべてを効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行うと認められない場合には、許可をすることができない。農地の集団化、農作業の効率化その他周辺の地域における農地の農業法の効率的かつ総合的な利用の確保に支障を生じるおそれがある場合には、不許可処分をすることができる。農地又は採草放牧地について使用貸借による権利又は賃借権の設定を受けた者がその農地又は採草放牧地を適正に利用していないと認められるにもかかわらず、当該使用貸借による権利又は賃借権を設定した者が使用貸借又は賃貸借の解除をしないときは、農業委員会は許可を取り消さなければならない。

農業委員会は、次の各号のいずれかに該当する場合には、農地又は採草放牧地について使用貸借による権利又は賃借権の設定を受けた者に対し、相当の期限を定めて、必要な措置を講ずべきことを勧告することができる。勧告に従わなかった場合は許可を取り消さなければならない。

  1. その者がその農地又は採草放牧地において行う耕作又は養畜の事業により、周辺の地域における農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障が生じている場合
  2. その者が地域の農業における他の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行っていないと認める場合
  3. その者が法人である場合にあっては、その法人の業務を執行する役員のいずれもがその法人の行う耕作又は養畜の事業に常時従事していないと認める場合

なお、市街化区域内においては、農地または採草放牧地を転用する場合は事前の農業委員会への届出で足りるとする特則があるが、権利移動の場合はこのような特則はなく、市街化区域内であっても原則通り農業委員会の許可が必要である。

許可が不要な場合
  • 国または都道府県が権利を取得する場合(国が競売または公売で取得する場合は農業委員会への通知が必要)
  • 市町村が土地収用法により収用する場合
  • 民事調停法による農事調停により取得する場合
  • 相続・遺産分割により取得する場合(取得した者は遅滞なく農業委員会に届出なければならない)
  • 山林原野を農地とする場合

農地の貸借[編集]

農地又は採草放牧地の貸借については、民法等の規定に修正が加えられている。

  • 賃貸借の期間は民法では20年以内とされているところ、農地法では50年以内とされる。
  • 賃貸借契約の当事者は、書面によりその存続期間、借賃等の額及び支払条件その他その契約並びにこれに付随する契約の内容を明らかにしなければならない。
  • 契約期間の定めがある場合について、期間満了の際はその1年前から6ヵ月前までに相手方に対して更新をしない旨の通知をしないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更新したものとみなされる。更新について賃借人に不利な特約は、定めなかったものとみなされる。
  • 賃貸借の登記がなくても、農地又は採草放牧地の引渡があったときは、これをもってその後その農地又は採草放牧地について物権を取得した第三者に対抗することができる。
  • 借賃等の額が農産物の価格もしくは生産費の上昇もしくは低下その他の経済事情の変動により又は近傍類似の農地の借賃等の額に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かつて借賃等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間借賃等の額を増加しない旨の特約があるときは、その定めに従う。
  • 賃貸借の当事者は、原則として都道府県知事の許可を受けなければ、賃貸借の解除をし、解約の申入れをし、合意による解約をし、又は賃貸借の更新をしない旨の通知をしてはならない。なお都道府県知事が許可をしようとするときは、あらかじめ、都道府県農業会議の意見を聞かなければならない。

改正法[編集]

第171回国会(2009年)で「改正」法案について審議され、2009年6月17日参議院本会議で可決成立した。同改正法は、「農地耕作者主義」[3]をやめ、食糧の自給率向上や環境保全などに重大な障害を持ち込むおそれを回避できる「効果的および効率的な農地の利用」を目指している。この改正は農地制度改正や改正農地法とも言われる。

戦後はじめて、農地の利用権(賃借権)を原則自由にした。農業生産法人や個人でなくとも、改正によりその他の会社NPO法人も「農地を適正に利用」との形をとると、そこに住んでいなくとも原則自由に農地を借りることができる。また、日本以外の外国資本を含めた農業生産法人が賃貸契約をすることができる。 主な改正点は、利用期間(賃借期間)を20年間から最長50年間へと変更、従来の農業従事者だけでなく農業生産法人やそれ以外の法人も借地を行う事ができる、ただし農業生産法人でない法人が借地する場合は、「農業に常時専従する者」を一人以上役員とする。これは役員が農地の適正な利用を監視出来る効果があるとされる。違法な利用や転用は罰金最高300万円から1億円となった。この改正法施行により耕作放棄地や遊休農地[4]の解消がされると言われる。また農業委員会の許可を得る場合などもある[5]。またこの改正で標準小作料が廃止された。

2009年12月15日から施行。成立は6月17日、6月24日の公布から6か月以内の施行とされていた[6][7]

手続きの代行[編集]

農地法に基づく手続きには様々な種類があり、要件や添付書類も複雑なことから、下記の資格者が代行して行うことができる。

弁護士
法律上の争いに関する事務として農地法に基づく手続きを行うことは、弁護士のみが行うことができる。(弁護士法72条、昭和15年4月6日大審院判決ほか判例多数)
司法書士
過去に許可又は届出がされている場合や農地でないと判断される場合等、権利移転の効力が既に発生している場合に、権利に関する登記申請に添付する目的で農地法に基づく証明書類の交付請求書を作成することは、司法書士のみが行うことができる。(司法書士法第73条、昭和39年9月15日民事甲第3131号法務省民事局長回答)
土地家屋調査士
既に現況地目が変更されている場合に、地目変更登記申請に添付する目的で農地法に基づく証明書類の交付請求書を作成することは、土地家屋調査士のみが行うことができる。(土地家屋調査士法第68条、昭和51年4月7日法務省民三第2492号法務省民事局長回答)
建築士(一級建築士・二級建築士・木造建築士)
農地法に基づく手続きが建築に関係する場合は、上記弁護士・司法書士・土地家屋調査士のみが行うことができる場合を除き、建築士が行うことができる。(建築士法第21条、平成5年3月17日建設省住宅局建築指導課回答)
行政書士
上記弁護士・司法書士・土地家屋調査士のみが行うことができる場合及び建築士が行うことができる場合を除き、農地法に基づく手続きは行政書士のみが行うことができる。(行政書士法第19条)

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g 山下一仁 『「亡国農政」の終焉』 KKベストセラーズ〈ベスト新書257〉、2009年、122-124頁。ISBN 978-4-584-12257-0山下一仁 『日本の農業を破壊したのは誰か 「農業立国」に舵を切れ講談社2013年、26-32頁。ISBN 978-4-06-218585-1農業立国への道(中) 農地集約・規模拡大を阻む農地法を廃止せよ農業立国への道(中) page=2
  2. ^ 池田信夫 blog : 農地改革と資本家の不在
  3. ^ 改正以前の法は、家族経営中心の農業であり、地域に住み自らが農作業をする者に農地に関する権利(所有権、賃借権)を認めている。
  4. ^ 耕作放棄地とは・遊休農地とは”. 農林水産省中国四国農政局. 2009年11月8日閲覧。
  5. ^ 農地法等の一部を改正する法律(概要)、平成21年6月 (PDF)”. 農林水産省[1] (2009年6月). 2009年12月20日閲覧。
  6. ^ 「農地法等の一部を改正する法律」の施行について、平成21年12月15日から施行”. 農林水産省 (2009年12月11日). 2009年12月15日閲覧。
  7. ^ 平成21年12月15日に「改正農地法等の一部を改正する法律」が施行されました”. 岐阜市 (2009年12月15日). 2009年12月15日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]