薄根の大クワ

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薄根の大クワ。2018年6月2日撮影。

薄根の大クワ(うすねのおおクワ)は、群馬県沼田市町田町石墨[1](旧利根郡薄根村)にあるヤマグワ(山桑)の巨木である。1956年昭和31年)5月15日に国の天然記念物に指定された[2][3]

樹齢1,500年以上と言い伝えられ、養蚕群馬の象徴として古くより養蚕の神として称えられてきた[4]。ヤマグワでは日本最大の巨樹であり、世界遺産富岡製糸場と絹産業遺産群」登録に関連して群馬県が制定した「ぐんま絹遺産」のひとつとして登録されている[1]

解説[編集]

薄根の大クワの位置(群馬県内)
薄根の 大クワ
薄根の
大クワ
薄根の大クワの位置
足場が組まれ樹木医により樹勢回復が行われている。2018年6月2日撮影。

薄根の大クワは群馬県沼田市北部の迦葉山南西麓、利根川支流の四釜川左岸[5]に形成された標高約430メートルほどの段丘面上にあり、石井家所有の畑地に生育している[4][6][7]

ヤマグワは霜害に強く、一帯の桑畑が霜に遭ったとき周辺の人々はこの大クワの葉を代用して急場をしのいだという[1][7]。伝承によれば、貞享3年(1686年)に前橋藩主酒井忠挙家老である高須隼人[8]沼田藩検地を行った際に、この大クワを標木に使用したと伝わっており[4][6][7]、当時より目立つ巨樹であったことがわかる[5]

クワの大木の稀有なものとして1956年昭和31年)5月15日に国の天然記念物に指定された[2][3]。指定名称はこの地の旧村名の薄根村から名付けられている[5]

沼田市公式ホームページによれば樹高は13.65メートル、根回り5.67メートル[9]2000年平成12年)に計測された記録によれば樹高は10メートル、幹囲は7.24メートル[10]樹冠の幅は東西、南北とも14メートル[4]1991年(平成3年)に当時の環境庁がまとめた第4回自然環境保全基礎調査によれば樹齢は300年以上[11]、沼田市教育委員会によって設置された現地案内板では推定樹齢1,500年以上とされ、桑樹としては日本三名木のひとつとされている[9][注釈 1]

近年、害虫による被害が見られはじめたことから、2018年時点(平成30年)は、樹勢回復のため周囲に足場が組まれ樹木医による治療が行われている[9]

交通アクセス[編集]

所在地
  • 群馬県沼田市石墨町地内(町田町字小栗山2083)[注釈 2]、または同市町田町2083[9]
交通

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 国立国会図書館レファレンス協同データベース「群馬県内の大きな木を調べたい。[12]」によると、永瀬嘉平[13]、牧野和春[14]、雑誌『みーつけた』の連載記事[15]に記載がある。
  2. ^ ここでは沼田市教育委員会によって平成22年3月に設置された現地解説板記載の住所とした。当地は同市石墨町、同市町田町の飛び地と複雑に入り組んでおり、資料によって住所が異なる。正確な位置は記事右上部にリンクした座標値参照。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e 薄根の大クワ 利根吾妻地区、国天然記念物、江戸以前、養蚕”. worldheritage.pref.gunma.jp. ぐんま絹遺産データベース. 群馬県地域創生部文化振興課歴史文化遺産室. 2023年5月9日閲覧。 “所在地:沼田市町田町2083(石墨地内)、随時見学可。料金__、問合せ:沼田市教育委員会文化財保護課。交通:JR上越線沼田駅からバス約23分+徒歩約2分。関越自動車道沼田ICから約15分。(紹介ビデオあり)”
  2. ^ a b 史跡名勝天然記念物薄根の大クワ(うすねのおおくわ)(種別1:天然記念物)”. kunishitei.bunka.go.jp. 国指定文化財等データベース. 文化庁. 2023年5月9日閲覧。 “指定年月日:1956.05.15(昭和31.05.15)。指定基準:(一)名木、巨樹、老樹、畸形木、栽培植物の原木、並木、社叢。所在都道府県:群馬県。所在地(市区町村):沼田市石墨町。関連情報 (情報の有無) 指定等後に行った措置、なし。”
  3. ^ a b 薄根の大クワ 文化遺産オンライン”. bunka.nii.ac.jp. 2023年5月9日閲覧。 “作品概要「薄根の大クワ」(うすねのおおくわ)。天然記念物 / 関東 > 群馬県沼田市石墨町。指定年月日:19560515。管理団体名:沼田市(昭31・5・29)、史跡名勝天然記念物。〈解説〉地上1.4メートルの第1分枝の基部で幹囲5メートル、高さ10.7メートル。樹勢旺盛で樹姿またよく整い、クワの大木として稀有。”
  4. ^ a b c d 加藤編、安盛博(1995)、p.456、p.458
  5. ^ a b c 渡辺(1999)、P.115。
  6. ^ a b 安盛博(1983)、pp.137-138
  7. ^ a b c 安盛博(1989)、pp.22-23
  8. ^ 高須隼人宿舎 長谷川家書院”. 沼田市公式ホームページ. 2018年6月20日閲覧。
  9. ^ a b c d 薄根の大クワ”. 沼田市公式ホームページ. 2018年6月20日閲覧。
  10. ^ 薄根の大クワ”. 巨樹・巨木林データベース. 環境省. 2018年6月20日閲覧。
  11. ^ 環境庁 編『群馬県/巨樹・巨木林調査票の要約(一覧表)』1991年、10-33頁。 
  12. ^ 国立国会図書館. “群馬県内の大きな木を調べたい。”. レファレンス協同データベース. 2023年5月9日閲覧。
  13. ^ 永瀬嘉平「薄根の大クワ」『関東周辺の巨樹を歩く』書苑新社、1996.7。カラー写真p.66-67、解説p.68。
  14. ^ 「養蚕の神 薄根の大桑」『本朝巨木伝』工作舎、1990.9。p.84-93ほか、巻末「日本全国、各都道府県の巨樹・巨木マップ」。
  15. ^ 「薄根の大クワ(沼田)」(連載記事〈誇る!群馬の巨樹・古木〉第3弾)『みーつけた』平成出版、317号。

参考文献・資料[編集]

  • 加藤陸奥雄他編集、1995年3月20日、『日本の天然記念物』第1刷、講談社 ISBN 4-06-180589-4
  • 安盛博、1983年3月30日、『上州の大樹を尋ねて』、みやま文庫 /ASIN B000J751WG
  • 安盛博、1989年3月10日、『〈群馬県〉巨樹・名木巡り』、牧野出版 ISBN 4-89500-002-8
  • 環境省編集、1991年5月30日、『日本の巨樹・巨木林(関東版Ⅰ)』、大蔵省印刷局 ISBN 4-17-319202-9
  • 渡辺典博、[no date]、『巨樹・巨木 日本全国674本』初版第1刷、山と渓谷社 ISBN 4-635-06251-1

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

座標: 北緯36度40分48.2秒 東経139度2分41.7秒 / 北緯36.680056度 東経139.044917度 / 36.680056; 139.044917