萌え絵

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萌え絵(もええ)とは、日本の漫画様式で描かれた絵のデフォルメの一形式である。

主に、男性読者を対象とし「二次元美少女」を描写することに非常に注力して描かれている。

顔の半分(口ほど)もある大きさの眼、点として表現された鼻、著しくデフォルメされた一定の特徴(#「萌え絵」の特徴を参照)を持つ傾向があるが、流行の移り変わりが激しく、主流といわれる絵柄は日々変化している。

また、このような絵を描く絵描きを萌え絵師とも言う。

概要[編集]

萌え絵の手法とアニメ塗りで表現されたウィキペたん
萌え絵の一例

「萌え絵」はアダルトゲームや恋愛ゲームなど、主に男性向けの市場で見られる極端な絵柄を指した言葉である。元々の出自は1990年頃から日本で発達した、男性向け恋愛ゲーム(俗に言うギャルゲー)、またはアダルトゲームで同じ傾向の絵が多く見られたことから、それらの絵を指す言葉として生まれた。

本来、「萌え」という俗語から派生した言葉だが、この言葉の出自からわかるように、「萌える-絵」という意味より、「二次元コンプレックスの人たちの絵を第三者が揶揄して使う」ことが多く、そのため、「萌え絵」を好む人達は、そうした揶揄的側面を嫌い、自分たちが好む絵に対して「○○は萌える」と言う表現を使っても、その絵を「萌え絵」というカテゴリーとして扱うことを避ける場合もあった。あくまで自己の「萌え」というのは個人的嗜好(おたくアイデンティティー(個性)の一部)であり、第三者的目線から自分の嗜好のカテゴライズがなされるべきではないとするのである(その根拠として、たとえば「この絵を好きだ」とは表現してもそれを「好き絵」という言葉で表現するのが不自然であり、「萌え」という言葉は「好き」という言葉と同じように個人的嗜好を表現する言葉であるとする。ただし、「好きだ」は形容動詞であり、「萌える」は動詞なので言語学的には筋はとおらない)。しかし、その一方で、「萌え絵」を好む人達の中には「自分が萌える-絵」という意味で「萌え絵」という言葉を使う層も一定数存在している。

「萌え絵」を語る際には、「ロリ」「メイド」「ぷに」などの、より限定された条件を含む萌え属性と組み合わせて使うことが多い。

「萌え絵」は日本のセルアニメーションの表現を源流に持ち、美少女ゲームで隆盛を極めた表現であるため、セル画の作成に都合のいいよう、髪の毛の流れる線などを省略して簡素化する切り絵状のカッチリした一定の表現パターンが多い。また影の入れ方・色のつけかた・目の光の入れ方など表現の方向性が定まっている。ただし、美少女ゲームや男性向けの漫画・アニメの作り手や享受者には女性も多く[1]、少女漫画や女性漫画と同時に男性向け作品を手がける作家も多いため、少女向け作品の絵柄に「萌え絵」的な傾向が逆輸入されるという現象[2]もしばしば見受けられる。

近年(2010年代初頭)の傾向としては、キャラクターの顔の描写には「萌え絵」特有のデフォルメを施すが、頭身は6頭身程度、手足は太く、脚は短めのプロポーションに描き、衣服も実際の街角で見かけられるようなものとする絵柄も多く見かけられるようになっている。

2008年、ニコニコ動画にて、2ちゃんねるで集計された「お前らの好きなエロゲー原画四天王を教えて下さいよ」統計の「2ch好きなエロゲ原画家ランキング BEST20」が公開された。1位くすくす、2位CARNELIAN、3位べっかんこうとなっている。

「萌え絵」の特徴[編集]

萌え絵の顔パターンの一例
萌え絵の瞳処理の一例
萌え絵の瞳に彩色を施した例

「萌え絵」の典型はアニメ絵と呼ばれる絵の一種で、顔の半分を占める大きな目(頭部の1/5以下、17.65% - 雑誌電撃萌王SPECIAL(2006年5月1日、第11巻第8号通巻127号、メディアワークス、104 - 105頁)による解析結果)など特徴的な様式化とデフォルメがなされている。2005年頃のアニメ絵系の萌え絵の特徴は次のようなものである[3]

  • 目と目の間隔が実際の人間よりかなり広い(ヒト黄金比美人であれば目の間隔はおおよそ目一個分を少し上回る程度)
  • 目と眉の間隔が広く離れている
  • 角膜(虹彩)が非常に大きく縦長で、目に対して角膜(虹彩)の占める割合が大きい目
  • 光源を無視して、模様のようになっている目のハイライト
  • 鼻は点だけということが多く、鼻梁は描かれない
  • 口は小さめで、閉じているときは目の数分の一のサイズ(現実には口は目より大きい)
  • 歯は完全に、あるいはほとんど省略される
  • 頭骨の大きさに比べ顔面骨(目の下から顎先部分の顔)が著しく小さな顔
  • 目の位置が低い顔(これは頭骨に比べ顔面骨が小さなことに関係する)
  • 胴体に比べ頭部が非常に大きい
  • 骨格の浮き上がりが希薄
  • 肩幅が狭く、肩幅と骨盤の幅がほとんど同じか、骨盤が肩幅より広い
  • 横顔は鼻口元顎先の突出が少なく、鼻口元顎先にかけて顔が後退しており、頤の溝や鼻下の溝が浅いかほとんど省略されていて(鼻先と口元と頤が小さい)猫のようである[4]
  • 彫りの浅い顔面

以上により、顔はパッと見では同様、目と口だけのように見える。

以下は萌え絵に限らずアニメ・漫画の絵では見られる特徴だが、萌え絵ではさらに高い確率で当てはまる。

  • 髪型は前髪が眼の上までかかる「ぱっつん」で、眉毛が透けて見える。または鼻まで掛かる長さなのにM字を描く分け目で、仮面のように眼だけが覗く。乱れない。
  • 髪の色が現実ではあまり見かけない色(黄色、青、緑、ピンク、オレンジ色、クリーム色など)。現実にはあり得ない色[5]にされることもある。アホ毛が描き込まれることもある
  • 瞳の色が、青・緑・赤・紫など、自然のままの健康な現実の人間ではあり得ない色
  • 眼鏡キャラクターの場合は、ほぼ例外なく擦り落ち風の鼻メガネ(実は老眼鏡特有のかけ方でこれでは用を成していない)。フレームは異様に大きい目が隠れないためにもアンダーリムやツーポイントが特に好まれる。テンプルが省略されフィンチのように描かれるものもある

脚注[編集]

  1. ^ Tシャツコスプレ衣装、タオルハンカチクッションカバー文房具などの男女兼用または女性・少女向けのキャラクター商品もバンダイコスパなどから発売されているほか、「キューティーハニーF」や「D.C. Girl's Symphony 〜ダ・カーポ〜 ガールズシンフォニー」など、女性・少女向けのメディアミックス作品も存在する。
  2. ^ かみちゃまかりん」や「プリキュアシリーズ」など。
  3. ^ これは資料雑誌の当該ページに採用されていた「アニメ絵」の作品の特徴に過ぎない。非常に多くの新人作家が輩出され、様々なデフォルメが入り乱れ、流行が頻繁に入れ替わる。頭身が高いものなども見られ、ここで記す特徴には当てはまらないものもある
  4. ^ ガールズ&パンツァー(GIRLS und PANZER)|公式サイトキャラクター設定画参照
  5. ^ 例えばホログラム調の虹色のような、染髪でも実現不可能な色

関連項目[編集]