紀広成

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紀 広成(きの ひろなり、 安永6年(1777年 - 天保10年8月23日1839年9月30日[1])は、日本江戸時代後期に活躍した四条派絵師呉春の弟子。姓は山脇、広成は名、字は子憲・菩提、号に東暉・既白などで、山脇東暉とも呼ばれる。

略伝[編集]

京都出身。初め呉春に学び、人物・花鳥を能くする。呉春没後、その弟子たちが互いに優劣を争うのに嫌気が差して今まで学んでものを捨て、それ以降、聖霊、夜叉曼荼羅などを描く度に新奇さを出そうと努めたという[1]。これを裏付けるように、文政5年(1822年)版『平安人物志』の住所は「嵯峨天竜寺」とあり、四条に住む兄弟弟子の岡本豊彦松村景文らと距離を置いており、同時期の作品も四条派の描法と異なっている。

のちに中国・代の呉道子に傚ってもっぱら仏画を描く[2][3]。しかし、弟子には自らの画法を押し付けること無く、その才能のまま描かせたという[1]。日頃から仏教を厚く信仰し、観音大士堂を建てて一日読経し、数ヶ月肉食を絶つなど本職の僧侶顔負けの生活をおくったという[2]。天保10年(1839年)歿、63歳。墓所は京都東山区実報寺で、貫名海屋撰・書による墓碑が現存する。一生独身で子が無く、跡は甥の澤渡精斎(紀広繁)、その子・澤渡素軒(紀広孝)が継いだ。弟子に安政度の御所障壁画制作に参加した吉田公均中村春亭高岡で活躍した町絵師・堀川敬周[4]など。

現在確認されている作品は50点ほど。この程度の作品数で画風変遷を追うのは難しいが、文政初期から画風の変化が見える。羅漢図などの道釈画で知られているが、歴史人物画や花鳥画も残り、版本挿絵も幾つか手掛けている。

代表作[編集]

作品名 技法 形状・員数 寸法(縦x横cm) 所有者 年代 落款・落款 備考
大調義順像 絹本著色 1幅 個人 1798年寛政10年)1月賛 落款「廣成」 大調義順賛。頂相
源義家 絹本著色 1幅 奈良県立美術館 1832年(天保13年)以前 落款「廣成」 頼山陽賛。
祇園社大政所図 絹本著色 1幅 公益財団法人 長刀鉾保存会 1832年(天保13年) 印のみ 原本は室町時代。箱書によると、長刀鉾町の伝来した「祇園会古図」が「壊裂」して見えづらくなったため、広成が臨模したという。更に箱書きでは天保年間の時点で「数百年前之威儀」を表していると伝えており、本図の祭礼の作法が祇園会の古態を伝えている可能性がある[5]
月溪(呉春)像 絹本著色 1幅 逸翁美術館 1835年(天保6年) 印のみ 池田市指定文化財
白衣観音図 紙本墨画 1幅 京都・大中院 印のみ
白衣観音像 1幅 京都・長楽寺
張旭酔余揮毫図 紙本淡彩 1幅 京都国立博物館 東暉紀廣成書并題
聖僧文殊像 絹本淡彩 1幅 京都国立博物館 平安 紀廣成拝寫
寒山拾得 紙本淡彩 1幅 大阪市立美術館
虎渓三笑図 絹本墨画 1幅 京都・正因庵 (自題)虎渓三笑
花卉図 要法寺
十六羅漢図 紙本淡彩 1幅 奈良・崇徳寺 落款「紀廣成拝寫」
十二天押絵貼屏風 絹本著色 六曲一双 和歌山・遍照光院
群仙図襖 紙本著色 26面 和歌山・龍光院
春満賀茂真淵宣長 絹本著色 3幅対 81.0x27.8(各) 個人[6]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 実報寺の墓碑銘より。
  2. ^ a b 白井華陽、木村重圭、中尾樗軒『画乗要略 — 近世逸人画史』ぺりかん社〈[定本]日本絵画論大成〉、1998年、改版。NCID BA35707872
  3. ^ 白井華陽『畫乘要略』風俗繪卷圖畫刊行會〈藝苑叢書〉、1919年。NCID BA3299800X
  4. ^ 高岡市立博物館 [編集・発行]『高岡の絵師 : 堀川敬周とその弟子達 : 企画展』高岡市立博物館、20032003年7月12日。NCID BA65278957
  5. ^ 『特別展 京(みやこ)を描く : 洛中洛外図の時代』京都文化博物館 [編集]; 京都府; 国立歴史民俗博物館; 日本放送協会京都放送局; NHKプラネット近畿; 京都新聞社、京都府京都文化博物館、2015年3月1日、29、238-239。NCID BB18339011
  6. ^ 『開館三十五周年記念3 本居宣長展』 2017年9月30日、第105図。井田もも、道田美貴、村上敬、毛利伊知郎『本居宣長展 = Motoori Norinaga』吉田悦之 [監修]; 三重県立美術館 [編集・発行]; 本居宣長記念館、三重県立美術館〈開館三十五周年記念〉、2017年。NCID BB25946874

参考文献[編集]

  • 源豊宗 [監修] 『文化・文政期』2、佐々木丞平[編] 、思文閣出版〈京都画壇の一九世紀〉、1994年10月1日。ISBN 4-7842-0838-0
  • 岩佐伸一「研究ノート 紀広成の画業とその周辺」『岐阜県博物館調査研究報告』第18号、1997年3月、 99-112頁。

関連項目[編集]