空調服

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
株式会社空調服
種類 株式会社
市場情報 非上場
本社所在地 日本の旗 日本
174-0041
東京都板橋区舟渡一丁目12番11号
ヘリオスIIビル4階
本店所在地 174-0041
東京都板橋区舟渡一丁目8番3号
設立 2004年2月
(株式会社ピーシーツービー)
業種 小売業
法人番号 9030001021587 ウィキデータを編集
事業内容 空調服、空調ヘルメットの販売
代表者 代表取締役会長 市ヶ谷 弘司
代表取締役社長 市ヶ谷 透
資本金 4500万円
純利益 2億2557万8000円
(2023年12月期)[1]
総資産 23億4877万6000円
(2023年12月期)[1]
決算期 12月末日
主要株主 株式会社セフト研究所
外部リンク https://www.9229.co.jp/
特記事項:2005年1月に現商号に変更。
テンプレートを表示
株式会社セフト研究所
SFT LABORATORY CO.,LTD,
種類 株式会社
市場情報 非上場
本社所在地 日本の旗 日本
174-0041
東京都板橋区舟渡一丁目12番11号
ヘリオスIIビル4階
本店所在地 174-0041
東京都板橋区舟渡一丁目8番3号
設立 1991年9月
業種 繊維製品
法人番号 9030001004609
事業内容 生理クーラー理論に基づく冷却装置を内蔵した衣服・ベッド・ざぶとん・リュックの開発、製造・販売
代表者 代表取締役社長 市ヶ谷 弘司
資本金 7000万円
純利益 4億2656万9000円
(2021年12月31日時点)[2]
総資産 38億0797万9000円
(2021年12月31日時点)[2]
決算期 12月末日
主要子会社 株式会社空調服
外部リンク https://www.seft.co.jp/
テンプレートを表示

空調服(くうちょうふく)とは、日本の企業・株式会社セフト研究所(セフトけんきゅうじょ)が夏場の衣服内気候環境を改善することを目的として開発し、子会社の株式会社空調服を通じて発売している「電動ファン内蔵上着」の商品名である。

ここでは主に商品としての空調服について記述する。なお、企業としての空調服については「株式会社空調服」、他社による空調服と同様の商品については「電動ファン内蔵上着」と記述する。

概要[編集]

空調服とは、着ることによって「人体が本来備えている体温調節」をより積極的に活用できるようにする空調装置であるとされる[3]

屋内の空間すべてを冷やす従来型のエアコンと比べて、単三乾電池で稼動するこの製品を使えば電気代は97%削減となり[4]家電製品と比較した場合格段に少なくて済む。夏場の消費電力の大幅な削減が期待できる、省エネルギーの環境面も配慮した製品である。また、これまで空調設備が使用できないとされてきた特殊な条件下の工場や、屋外といった環境でも、涼しくすごす事ができるようになるのも、大きなメリットであるとうたわれている[4]

ソニーを早期退職した市ヶ谷弘司が1998年東南アジアを旅した事が、空調服の開発を始めるきっかけとなった。「東南アジアの人々がエアコンを使うようになれば、エネルギー危機が起き、環境問題につながってしまう」と考えた市ヶ谷は、6年がかりで空調服を完成させた。はじめは宇宙服脳低体温療法用のブランケットと同じ水冷式だったが、改良を経て空冷式に変更。その後、パワフル・省電力な、静音ファンの試作を重ねて、3年後に販売までこぎつけた[5]

実際に使ってみた体験談によると、その効果を確かに実感する事ができるという。また、汗をすべて気化させてしまえば衣服に汗がついて雑菌が繁殖することも少なくなる為、発汗に伴う体臭が少なくなり、あせもも防げるという[5][6]

最大のデメリットは、そのデザインから「人目が気になる」点である。特にファンの動作中には服が膨らんで太って見えるために、社長の市ヶ谷が「娘が空調服を着てくれない」と述べたこともあった[7]。ほかには、「作業服が会社で決まっているので、空調服が使えない」、「汚れるので毎日洗濯したいが、空調服を複数購入する必要がある」などが挙げられる。 フルハーネス型墜落制止用器具(安全帯)と併用すると落下衝撃時にベルトのD環部が服地をずり上げ、首を絞める恐れがあるため製品選定や使用方法に注意を要する。

2010年代には大幅に普及し、他の作業服メーカーからも同じ趣旨の製品が発売されたり、購入単価を下げるため大手建設会社が協力企業向けに一括購入を呼び掛ける動きもみられる。また、2010年代後期や2020年代に入ると公安委員会へ制服の様式を届け出る必要のある警備業へも普及、夏季は空調服を義務化した建設現場も登場している。

知的財産権を巡る係争[編集]

株式会社空調服およびセフト研究所は空調服の商品化にあたって、空調服用の衣服の製造を広島県福山市のユニフォームメーカーである株式会社サンエスに委託していたが、2014年6月にセフト研究所が空調服の製造子会社として株式会社ゼハロスを設立[8][注 1]し、同社での製造を開始。またサンエス側も空調風神服の商品名で独自の電動ファン内蔵上着の製造販売を開始したことから、セフト研究所からの申し入れにより2016年10月に両者の協業関係は解消された[9]

2017年3月、サンエスは「空調服は当社が開発したものであり、当社の商品を模倣した株式会社空調服の商品は不正競争防止法に反する」として株式会社空調服に対し製造販売の差し止めと商品の廃棄および4160万円の損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に起こしたが、2019年9月5日にサンエス側の訴えを全面的に棄却する判決が下された[9][10]。サンエス側はこれを不服として知的財産高等裁判所に控訴したが、判決当日の2020年3月10日になってサンエス側が控訴を取り下げた[11][12]。なお、サンエスは控訴取り下げの理由について、「空調服の業界も第三者の参入が進み、また、当社や空調服社の空調服のラインナップも大きく変わり、当初の空調服について係争を継続することの意味が薄れてきました」と説明している[13]

2021年7月12日放送のNHK逆転人生」では空調服(番組では「ファン付き作業着」と呼称)および開発者である市ヶ谷が紹介され[14]、上記の訴訟についてもサンエスを「S社」と伏せる形で取り上げられたが[15]、サンエス側は翌13日に「NHKからの事前の取材や申し入れもなく、一方的な主張であり承服しかねる」との見解を出している[16]。また、同月21日には放送内容に対する反証を行うと共に、放送直後より抗議電話やホームページのコンタクトフォームへの抗議メッセージ、SNS等での誹謗中傷が多数発生しているとして、「弊社は本件番組の放送により信用・名誉毀損を含む多大な損害を直接的に被っております」としたうえで、「公共放送であるNHKがファン付きウェアを販売する一企業の主張を一方的に放送したものであり、本来公正・中立でなければならない立場を逸脱したもの」と批判している[15]

主な電動ファン内蔵上着のメーカー[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ サンエスと同じ広島県福山市に所在し、代表者には元サンエスの取締役が就任していた[9]。2022年10月にセフト研究所に吸収合併され、同社の福山事業所となる[8]

出典[編集]

  1. ^ a b 株式会社空調服 第20期決算公告
  2. ^ a b 株式会社セフト研究所 第31期決算公告
  3. ^ 空調服の原理・効果
  4. ^ a b 熱中症対策、予防特集/SAFETY JAPAN/日経BP社 “着る”ことで涼しく快適に過ごす「空調服」2ページ目
  5. ^ a b ITmediaニュース:真夏に長袖!なのに裸より涼しい「空調服」
  6. ^ 照井 康介『世界が変わる 空調服』クロスメディア・パブリッシング、2019年5月1日、Kindle版 112/237、ISBN 4295403059
  7. ^ Exciteニュース:着るだけで涼しい空調服はいかが?(Internet Archiveより)
  8. ^ a b 沿革”. 株式会社セフト研究所. 2023年8月7日閲覧。
  9. ^ a b c 東京地方裁判所 (5 September 2019). 平成29年(ワ)第9335号 不正競争行為差止等請求事件 (PDF) (Report). 2023年8月7日閲覧
  10. ^ 竹内謙礼 (2019年10月2日). “製造委託先から訴えられた「空調服」はいかにして自社商品を守ったか”. ネットショップ担当者フォーラム(Impress Business Media). 株式会社インプレス. 2023年8月7日閲覧。
  11. ^ 訴訟の判決確定(勝訴)に関するお知らせ”. 株式会社空調服 (2020年3月16日). 2020年8月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年8月7日閲覧。
  12. ^ 竹内謙礼 (2020年6月29日). “製造委託先から訴えられた「空調服」は、その後どうなったのか?”. ネットショップ担当者フォーラム(Impress Business Media). 株式会社インプレス. 2023年8月7日閲覧。
  13. ^ "2020年3月9日の繊維ニュース記事について" (PDF) (Press release). 株式会社サンエス. 10 June 2020. 2023年8月7日閲覧
  14. ^ 「夏に涼しさ革命を!ファン付き作業服」”. 逆転人生. 日本放送協会. 2023年8月7日閲覧。
  15. ^ a b "NHK「逆転人生」放送を受けての弊社見解のご報告" (PDF) (Press release). 株式会社サンエス. 21 July 2021. 2023年8月7日閲覧
  16. ^ "NHK「逆転人生」放送に関するご報告" (PDF) (Press release). 株式会社サンエス. 13 July 2021. 2023年8月7日閲覧


関連項目[編集]

外部リンク[編集]