「副検事」の版間の差分

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'''副検事'''(ふくけんじ)は、日本における[[検察官]]の身分の一つ。検事に準じて区検察庁での業務を担当する。
'''副検事'''(ふくけんじ)は、日本における[[検察官]]の身分の一つ。[[検事]]に準じて区検察庁での業務を担当する。


== 職務 ==
== 職務 ==
副検事は、検察官として、[[区検察庁]]の職務のみ行うことができ、検事と同じく[[捜査]]のほか[[起訴]]などもできる。[[徽章]]([[秋霜烈日]]章)の形状は検事と同じだが、検事の徽章は菊の葉の部分が金であるのに対して副検事の徽章は菊の葉の部分が銀色になっている。
副検事は、[[検察官]]として、[[区検察庁]]の職務のみ行うことができ、[[検事]]と同じく[[捜査]]のほか[[起訴]]などもできる。


[[徽章]]([[秋霜烈日]]章)の形状は[[検事]]と同じだが、検事の徽章は菊の葉の部分が金であるのに対して副検事の徽章は菊の葉の部分が銀色になっている。
== 副検事の選考 ==
=== 受験資格 ===
[[検察庁法]]第18条第2項の規定により、「3年以上政令で定める二級官吏その他の公務員の職に在った者」(検察庁法施行令第2条)に該当する[[検察事務官]]や[[法務事務官]]又は[[法務教官]]、[[警部]]以上の階級の[[警察官]]、[[皇宮護衛官]]、[[海上保安官]]、[[国税局|国税査察官]]、[[3尉]]以上の[[警務官]]たる[[自衛官]]などを3年以上経験した者や[[司法試験]]の合格者に、考試の受験資格が与えられ、同考試に合格した者を副検事二級に任命できる。


== 選考資格 ==
なお、考試受験者はほとんどが検察事務官、次いで[[裁判所書記官]]などの裁判所出身者であり、警察官、自衛官、[[海上保安官]]、[[皇宮護衛官]]などの受験者はわずかである。
[[検察庁法]]第18条第2項の規定により、以下に該当する者に「副検事」の選考資格が与えられるとされる。


#[[裁判所法]]第66条第1項の試験([[司法試験]])に合格した者
=== 実施機関 ===
#3年以上政令で定める2級官吏その他の公務員の職に在った者
副検事の選考は、検察庁法18条2項の規定によって政令の定める[[審議会等]](国家行政組織法第8条機関)が行うものとされており、[[検察官・公証人特別任用等審査会]]が選考を行っている(なお、同審査会は、検察庁法18条3項の規定によるいわゆる'''特任検事'''の考試('''検察官特別考試''')も行っている。)。
:検察庁法施行令第2条に以下の通りに定義されている
:*[[一般職の職員の給与に関する法律|給与法]]で定める4級ないし3級以上の[[検察事務官]]
:*[[一般職の職員の給与に関する法律|給与法]]で定める4級ないし3級以上の[[法務事務官]]又は[[法務教官]]
:*[[一般職の職員の給与に関する法律|給与法]]で定める3級以上の[[入国審査官]]
:*[[一般職の職員の給与に関する法律|給与法]]で定める4級以上の[[入国警備官]]
:*[[裁判所調査官]]
:*[[一般職の職員の給与に関する法律|給与法]]で定める3級以上の[[裁判所事務官]]、[[裁判所書記官]]、[[裁判所書記官補]]、[[家庭裁判所調査官]]、[[家庭裁判所調査官補]]、[[司法研修所]]教官又は[[裁判所職員総合研修所]]教官
:*[[学校教育法]]において定める[[大学院]]を設置していない[[大学]]の[[法学]][[教授]]たる文部科学教官
:*[[警部]]以上の[[警察官]]
:*[[一般職の職員の給与に関する法律|給与法]]で定める4級ないし3級以上の[[司法警察員]]として職務を行う[[国家公務員]]
:*[[三尉]]以上の[[自衛隊]][[警務官]]
:*[[アメリカ施政権下の沖縄の法令|沖縄法令]]の規定による1級検察補佐職、1級法務職、1級法制職、1級裁判所書記職、3級以上の警察職
:*[[私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律|独占禁止法]]に基づく審査を担当する[[一般職の職員の給与に関する法律|給与法]]で定める3級以上の[[内閣府]]事務官
:*[[国税犯則取締法]]に基づく調査・取締りを担当する[[一般職の職員の給与に関する法律|給与法]]で定める3級以上の財務事務官([[マルサ]])
:*[[金融商品取引法]]に基づく調査を担当する[[一般職の職員の給与に関する法律|給与法]]で定める3級以上の内閣府事務官又は財務事務官
:*[[関税法]]に基づく調査を担当担当する[[一般職の職員の給与に関する法律|給与法]]で定める3級以上の財務事務官


以上の者が「副検事選考試験」を受験し、合格することで「副検事」に任命される。受験者はほとんどが[[検察事務官]]、次いで[[裁判所書記官]]などの[[裁判所]]出身者であり、の受験者はわずかである。
同審査会は[[法務大臣]]が任命する委員12人以内をもって組織されており、その構成は、[[最高裁判所]]事務総長、[[日本弁護士連合会]]会長の推薦する[[弁護士]]1人及び学識経験のある者である(検察官・公証人特別任用等審査会令1条1項、2条1項)。また、試験問題の作成・採点等を行わせるため、審査会に'''試験委員'''を置くことができるとされており、必要な専門的知識のある者の中から[[法務大臣]]が任命している(同令1条2項、2条2項)。


=== 選考内容 ===
== 副検事選考試験 ==
「副検事選考試験」は、[[検察庁法]]18条の規定で行われ、[[検察官・公証人特別任用等審査会]]によって施行される。

試験内容は以下の通り
*第1次選考(筆記試験) - [[憲法]]、[[民法]]、[[刑法]]、[[刑事訴訟法]]、[[検察庁法]]、[[一般教養]]の6科目(試験時間各科目1時間、いずれも論文式)
*第1次選考(筆記試験) - [[憲法]]、[[民法]]、[[刑法]]、[[刑事訴訟法]]、[[検察庁法]]、[[一般教養]]の6科目(試験時間各科目1時間、いずれも論文式)
*第2次選考(口述試験) - 憲法、民法、刑法、刑事訴訟法、検察庁法(筆記試験の合格者に対し,試験委員2名が試験官となって個人別に実施される)
*第2次選考(口述試験) - 憲法、民法、刑法、刑事訴訟法、検察庁法(筆記試験の合格者に対し,試験委員2名が試験官となって個人別に実施される)
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副検事の選考の合格者決定は、筆記試験・口述試験の採点結果並びに各[[高等検察庁]][[検事長]]が行う人物、素行及び実務処理能力等の調査結果をまとめた「'''調査書'''」等を総合し、検察官・公証人特別任用等審査会の議決によって行われる。同選考における筆記及び口述試験の内容も相当高度であって、最終合格率も約13パーセント(平成15年度)となっている。
副検事の選考の合格者決定は、筆記試験・口述試験の採点結果並びに各[[高等検察庁]][[検事長]]が行う人物、素行及び実務処理能力等の調査結果をまとめた「'''調査書'''」等を総合し、検察官・公証人特別任用等審査会の議決によって行われる。同選考における筆記及び口述試験の内容も相当高度であって、最終合格率も約13パーセント(平成15年度)となっている。


== 他の資格への道 ==
== 検察官特別考試 ==
副検事の職務を3年以上経験した者は、[[検察官・公証人特別任用等審査会]]の実施する'''検察官特別考試'''の受験資格が与えられ、これに合格した者は検事級('''特任検事''')となることができる(検察庁法18条3項)。また、検事となって5年以上職務について[[日弁連]]の研修を終えれば[[弁護士]]になることもできる。
副検事の職務を3年以上経験した者は、[[検察官・公証人特別任用等審査会]]の実施する検察官特別考試の受験資格が与えられ、これに合格した者は検事2級(特任検事)となることができる([[検察庁法]]18条3項)。
== 弁護士資格取得 ==
また、[[弁護士法]]の規定によって「副検事」から「[[検事]]」となって5年以上職務について[[日弁連]]の研修を終えれば[[弁護士]]になることもできる。


近年、[[最高裁判所]]と[[法務省]]で、[[簡易裁判所判事]]および副検事の経験者に「'''準弁護士'''」の資格([[簡易裁判所]]で取り扱う事件のみ担当できる)を与える案が出されているが、この二つは司法試験に合格していない者も採用される(一般の[[公務員]]を対象に選ぶため、「官の[[天下り]]先を作っているだけ」という意見が多い)ことや、既に司法試験の合格者が増加しており、今後も増加することで弁護士となる者が増えることから、[[弁護士会]]では反対されている。
近年、[[最高裁判所]]と[[法務省]]で、[[簡易裁判所判事]]および副検事の経験者に「'''準弁護士'''」の資格([[簡易裁判所]]で取り扱う事件のみ担当できる)を与える案が出されているが、この二つは司法試験に合格していない者も採用される(一般の[[公務員]]を対象に選ぶため、「官の[[天下り]]先を作っているだけ」という意見が多い)ことや、既に司法試験の合格者が増加しており、今後も増加することで弁護士となる者が増えることから、[[弁護士会]]では反対されている。

2010年1月28日 (木) 13:05時点における版

副検事(ふくけんじ)は、日本における検察官の身分の一つ。検事に準じて区検察庁での業務を担当する。

職務

「副検事」は、検察官として、区検察庁の職務のみ行うことができ、検事と同じく捜査のほか起訴などもできる。

徽章秋霜烈日章)の形状は検事と同じだが、検事の徽章は菊の葉の部分が金であるのに対して副検事の徽章は菊の葉の部分が銀色になっている。

選考資格

検察庁法第18条第2項の規定により、以下に該当する者に「副検事」の選考資格が与えられるとされる。

  1. 裁判所法第66条第1項の試験(司法試験)に合格した者
  2. 3年以上政令で定める2級官吏その他の公務員の職に在った者
検察庁法施行令第2条に以下の通りに定義されている

以上の者が「副検事選考試験」を受験し、合格することで「副検事」に任命される。受験者は、ほとんどが検察事務官、次いで裁判所書記官などの裁判所出身者であり、他の受験者はわずかである。

副検事選考試験

「副検事選考試験」は、検察庁法18条の規定で行われ、検察官・公証人特別任用等審査会によって施行される。

試験内容は以下の通り

  • 第1次選考(筆記試験) - 憲法民法刑法刑事訴訟法検察庁法一般教養の6科目(試験時間各科目1時間、いずれも論文式)
  • 第2次選考(口述試験) - 憲法、民法、刑法、刑事訴訟法、検察庁法(筆記試験の合格者に対し,試験委員2名が試験官となって個人別に実施される)

副検事の選考の合格者決定は、筆記試験・口述試験の採点結果並びに各高等検察庁検事長が行う人物、素行及び実務処理能力等の調査結果をまとめた「調査書」等を総合し、検察官・公証人特別任用等審査会の議決によって行われる。同選考における筆記及び口述試験の内容も相当高度であって、最終合格率も約13パーセント(平成15年度)となっている。

検察官特別考試

「副検事」の職務を3年以上経験した者は、検察官・公証人特別任用等審査会の実施する「検察官特別考試」の受験資格が与えられ、これに合格した者は検事2級(特任検事)となることができる(検察庁法18条3項)。

弁護士資格取得

また、弁護士法の規定によって「副検事」から「検事」となって5年以上職務について日弁連の研修を終えれば弁護士になることもできる。

近年、最高裁判所法務省で、簡易裁判所判事および副検事の経験者に「準弁護士」の資格(簡易裁判所で取り扱う事件のみ担当できる)を与える案が出されているが、この二つは司法試験に合格していない者も採用される(一般の公務員を対象に選ぶため、「官の天下り先を作っているだけ」という意見が多い)ことや、既に司法試験の合格者が増加しており、今後も増加することで弁護士となる者が増えることから、弁護士会では反対されている。

外部リンク


日本の検察官階級・序列
第1位 第2位 第3位 第4位 第5位
検事総長 次長検事 検事長 検事 副検事