「漢訳」の版間の差分

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== 仏典の漢訳 ==
 
古代より独自の文明を発展させてきた中国が、前近代において大々的に外来の思想を受け入れた例は[[後漢|漢代]]から[[唐]]代まで盛んに続いた[[仏教]]の受容においてあった。しかし、仏教の教えを理解するために必要な[[仏典]]はほとんどの中国人には理解することができない外国語で記述されていたから、[[中国語]]の[[文語]]である漢文に翻訳する必要があった。
 
このような訳業は、はじめ[[鳩摩羅什]]のような[[西域]]出身の[[僧]]によって行なわれ、やがて中国人で[[梵語]]などを学んで漢訳に携わる者が出た。とくに[[玄奘]]は自ら[[インド]]から持ち帰った膨大な経典を翻訳したことで名を残し、偉大な漢訳僧は[[三蔵法師]]と尊称されるが、ほとんどこの称号は玄奘の別名のようになっとし認識されことが多い
 
=== 音写と五種不翻 ===
{{wiktionary|音写}}
なお、仏典を翻訳する際にいくつかの理由から漢文に訳さず、梵語の音をそのまま漢字に写した、'''音写'''(おんしゃ)という技法が用いられた。音写は今日において外来語をカタカナ表記にするのと似たような技法である。しかし、玄奘は一部の梵語を漢訳せず音写したことについて、五種不翻(ごしゅふほん)という5つの理由を挙げている。また玄奘以降の訳僧もこれらの理由から音写を用いたと考えられる。五種不翻の理由は以下の通り。
#'''順古故'''(じゅんここ) - 古例という既にあった方法にしたがい翻訳せず。中国仏教の源流を開いた[[摩騰迦]](まとうが)や[[竺法蘭]]の時代よりの慣わしにより、すでに衆人によりその意味が知られていたもの。たとえば[[悟り|阿耨多羅三藐三菩提]](あのくたらさんみゃくさんぼだい、略して阿耨菩提)などの語類がこれにあたる。
#'''秘密故'''(ひみつこ) - 甚深微妙で不可思議なる仏の秘密語であるがゆえに翻訳せず。たとえば、[[般若心経]]の最後の一節「羯諦 羯諦 波羅羯諦 波羅僧羯諦 菩提薩婆訶」のような[[真言]]・[[陀羅尼]]などの語類がこれにあたる。
#'''多含故'''(たごんこ) - 多くの義を含むがゆえに翻訳せず。たとえば、自在・熾盛・端厳・名称・吉祥・尊貴という六義(6つの義・意味)という複数の意味を含む婆伽婆・薄伽梵(バギャバ・バガボン=バガヴァート、[[世尊]]と訳す場合もある)などの語類がこれにあたる。
#'''此方無故'''(しほうむこ) - この地方(中国)にない意味や言葉であるがゆえに翻訳せず。たとえば、[[閻浮樹]](えんぶじゅ、[[閻浮提]]にあるという想像上の大森林)、[[乾闥婆]](けんだつば)、[[迦楼羅]](かるら)などの語類がこれにあたる。
#'''尊重故'''(そんちょうこ) - 善を生ぜんがために翻訳せず。たとえば、[[般若]]や[[仏陀]]のように、これを聞いた者は心に信念を生じるが、もし般若を知恵と、仏陀を覚者などと単純安易に訳せば、浅はかに軽んじられることが免れず、敬心を保つことが難しい語類がこれにあたる。
 
== 漢訳語彙 ==
3,436

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