「前輪駆動」の版間の差分

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自動車以外にも[[オートバイ]]にも前輪駆動のものは希ではあるが存在する。有名なものに[[ドイツ]]の[[メゴラ]]がある。これは[[星型エンジン|星型]]五気筒エンジンを前輪内に搭載するという変わった形式のオートバイである。
自動車以外にも[[オートバイ]]にも前輪駆動のものは希ではあるが存在する。有名なものに[[ドイツ]]の[[メゴラ]]がある。これは[[星型エンジン|星型]]五気筒エンジンを前輪内に搭載するという変わった形式のオートバイである。


[[自転車]]にも、[[チェーン]]による後輪駆動が確立される以前や、[[リカンベント]]の一部、[[電動アシスト自転車|補助動力付き自転車]]の補助動力等、前輪を駆動するものがある。
[[自転車]]にも、[[ローラーチェーン|チェーン]]による後輪駆動が確立される以前や、[[リカンベント]]の一部、[[電動アシスト自転車|補助動力付き自転車]]の補助動力等、前輪を駆動するものがある。


ちなみに「後部エンジン・前輪駆動」も前輪駆動に入るが、一般の自動車(乗用車やトラックなど)ではこのレイアウトにするメリットがないため存在しない。しかし二輪駆動の[[フォークリフト]]では、運転席下部や後部にエンジンを搭載し前輪を駆動する方式が主流である。エンジン自身を[[カウンターウエイト]]にするためと、用途上バックで運転することが多いからである。
ちなみに「後部エンジン・前輪駆動」も前輪駆動に入るが、一般の自動車(乗用車やトラックなど)ではこのレイアウトにするメリットがないため存在しない。しかし二輪駆動の[[フォークリフト]]では、運転席下部や後部にエンジンを搭載し前輪を駆動する方式が主流である。エンジン自身を[[カウンターウエイト]]にするためと、用途上バックで運転することが多いからである。

2008年4月8日 (火) 13:08時点における版

フロントエンジン・フロントドライブ概念図

前輪駆動ぜんりんくどう)とは車輪を有する輸送機器の駆動方式で、前後の車輪のうち前方の車輪を駆動する方式である。四輪自動車に広く用いられる。トランスミッションエンジンの搭載方法は主に横置きが用いられるが、縦置きのものも存在する。前輪駆動と対比される駆動方式は後輪駆動である。

自動車以外にもオートバイにも前輪駆動のものは希ではあるが存在する。有名なものにドイツメゴラがある。これは星型五気筒エンジンを前輪内に搭載するという変わった形式のオートバイである。

自転車にも、チェーンによる後輪駆動が確立される以前や、リカンベントの一部、補助動力付き自転車の補助動力等、前輪を駆動するものがある。

ちなみに「後部エンジン・前輪駆動」も前輪駆動に入るが、一般の自動車(乗用車やトラックなど)ではこのレイアウトにするメリットがないため存在しない。しかし二輪駆動のフォークリフトでは、運転席下部や後部にエンジンを搭載し前輪を駆動する方式が主流である。エンジン自身をカウンターウエイトにするためと、用途上バックで運転することが多いからである。

歴史

最初の「前輪駆動」と言える車は、世界最初の自動車でもあるキュニョーの砲車であった。キュニョーの砲車は三輪(前1輪、後ろ2輪)で前部に動力源(蒸気機関)を持ち前輪を駆動する(詳細はキュニョーの砲車を参照)。この当時はそもそも比較する対象がいなかった(世界最初の自動車のため他の方式が存在しなかった)ために前輪駆動という現在の概念自体がなかったわけだが、いずれにせよ前輪駆動は自動車の歴史の中でもっとも古い方式である。

それ以降も前輪駆動は使われていたが、大衆車は総じて後輪駆動が全盛で、前輪駆動はバンなどに限られていた。

大衆車に広く普及するきっかけを創ったのはイギリスミニと言える。それまで前輪駆動は縦置きレイアウトがむしろ主流であったが、ミニは、エンジンを横置きにし、その下にトランスミッションを二階建てに配置する方式を採用。それは、開発者の名を採ってイシゴニス式と呼ばれた。 ミニが、このような配置を採ったのは、前後長(横置きなので幅とも言える)がそれほど短くない既存のエンジンをコンパクトなエンジンルームに納めるという都合からである。

それに対しイタリアフィアット・128は、トランスミッションとエンジンを一直線に繋ぎ横置きするという方式を採用。こちらも開発者の名を採ってジアコーザ式と呼ばれた 。 この方式は、最初から横置きを前提とした前後長(幅)の短いエンジンを新たに開発する事で可能になったのである。

その後、急速に全世界の自動車メーカーに広がり小型車の多くが前輪駆動となった。前輪駆動は小型車のみならず大排気量の乗用車にも広がった。

現在では多くがフィアット・128に倣った横置きレイアウトを踏襲するが、縦置きにこだわり続けるメーカーも存在する。アウディスバルが有名であり、どちらも四輪駆動化し易いレイアウトである。過去にはトヨタマツダスズキホンダサーブルノーなども縦置きの前輪駆動車を製造していた(トヨタならターセルコルサ、マツダならルーチェ(ロータリークーペのみ)、スズキならフロンテ800など、ホンダならアコード・インスパイアなど。)。現在ではそれらの会社もFFは全て横置きになっている。

特徴

FF方式の長所
  • 荷重が前輪に多くかかるため直進時の安定性が良く、雨や雪などの悪天候下でも、走行安定性が高い。RR方式の次にトラクションが得やすい(重積載時や登坂ではFR方式に劣る)。(トラクション・直進性)
  • 床下のプロペラシャフトデフがなく、低床・平床化が図れる。(静粛性・居住性・コスト)
  • 横置きエンジンの場合はパワートレインの省スペース化により、車体長の短縮と車室の拡大が容易。(居住性・コスト)
  • パワートレインのモジュール化が可能で、組み立て時間の短縮や、車種を超えた流用も容易。(コスト)
  • リアサスペンションの構造を簡素化でき、それに費やす実験も短縮できる。(コスト)
  • モジュール化によって、多くの自動車に採用されるようになり、それにより多くの実験結果が得られ、開発期間を短縮できる。
  • 駆動力の伝達距離が短い事から省燃費走行にも向くとされ、エコカー等にも積極的に採用される。
FF方式の短所
  • 重心の位置と駆動輪荷重(軸重配分)のジレンマ(RRや横置きMRとは傾向が異なる)。(設計自由度・運動性・操縦安定性)
  • 駆動力と旋廻力を同時に前輪が負担するため、旋回時の癖、いわゆるアンダーステア特性タックインが避けられない(その後サスペンションとタイヤの改良により、現在では、ほぼ、問題のない操縦性を得ているが、他の方式に比べると劣る)。(運動性・操縦安定性)
  • 同様の理由で高出力・大車重に向かない。
  • 操舵中、角度のついた自在継ぎ手に力が加わることによるトルクステア(現在ではほぼ解消)。(ハンドリング)
  • 駆動力の着力点と装舵の着力点のずれによるワンダリングが発生しやすい(設計により解消できるが、サスペンションのジオメトリーやホイールオフセットを改造・変更した場合などは発生する)。(操縦安定性)
  • 低級振動が出やすい(高級車に採用しにくい)。特に横置きの場合、車体の曲げ方向に働く振動(エンジンによるバイブレーションやスナッチ)を抑えることが難しい。最近では電子制御エンジンマウントの普及もあり、振動減少に大きく貢献している。(静粛性・居住性)
  • 縦置き、横置きにかかわらず、自在継ぎ手を用いる構造から、前輪の切れ角が大きくとれず、旋回半径が他の方式と比べて大きくなりがち。(取り回し)
  • 横置きエンジンの場合、パワートレインの横幅が増すことによる前輪切れ角の減少(左右の切れ角が同じにならない場合もある トランスミッションの配置により差がある)。(ハンドリング)
  • 横置きエンジンの場合、左右のドライブシャフトの長さが均一でないことが多いため、急発進時に左右の歪み率の違いによるトルクステアが起こりやすい。(操縦安定性・直進性)

関連項目