新宿替え玉事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

新宿替え玉事件(しんじゅくかえだまじけん)は、1968年(昭和43年)7月7日に行われた第8回参議院議員通常選挙に際して、一部陣営が 不在者投票制度を悪用し本来、投票権の無い人間が有権者になりすまし、不正に投票を行なったとされる事件である。東京都では都内在住の有権者に対して郵送されるべき投票所入場券が本人に届かなかったことや、投票日当日、有権者が投票を行うため投票所に訪れたところ、すでに不在者投票済であったことから不正が発覚、警視庁による一連の調査で、替え玉による不正投票容疑で36人が検挙された。また東京選挙区内で約10万通の入場券が行方不明となり、その半数に相当する約5万通で不正が行われた可能性があることが明らかとなった。

未着となった入場券の数[編集]

選挙当日までに「入場券が届かない」という有権者の苦情が選挙管理委員会に相次ぎ、選挙当日に再交付を行った。一例を挙げると東京都世田谷区では再交付を行った数がおよそ8000人にものぼった。最終的に東京都の選挙委員会では都内で約10万枚の投票所入場券が紛失、本人へ未着、または行方不明と公表している。この当時の東京都内の有権者数は約734万人[1]

「入場券が届かない」という苦情は郵便局へも寄せられたため、郵便局による調査が実施された。当時の郵便局には郵政監察官による郵政監察制度があり、郵便について発生した事件の取り調べを行うことや逮捕権も持っていた。およそ8000枚にわたる入場券再交付を行った世田谷区では、調査の結果、半数のおよそ4000枚が「宛所尋ねなし」等の理由で郵便局に還付されたが、残りは行方不明となった[1]

世田谷区選挙管理委員会係長の田中昭二は毎日新聞の取材に対し、都内の投票所入場券の不明分10万枚のうち、不在者投票および選挙当日に行われた替え玉投票を含め、およそ半数の5万票程が不正投票に用いられた疑いがあると発言した[1]

東京選挙区で実際に投票された数[編集]

替え玉事件で行われた投票数は以下のような主張がある(現在でも正確な数は明らかにされていない)。

  • 毎日新聞では、投票所入場券の不明分10万枚のうち相当数が他人の手で投票されたとしている[1]

投票日当日にも都内各投票所で替え玉投票が起こり、逮捕者も出たことも明らかになっている[1]

第8回参議院選挙における替え玉投票、逮捕者数[編集]

朝日新聞では、開票から10日後の状況として、前回は替え玉で検挙されたのは85人であったが、今回は10日間だけで60人の検挙、そのうち25人が逮捕されたと伝えた。そのうちの半分は計画的犯行であり創価学会関係者で、東京だけでなく北海道など6道県で摘発が進められた[2]毎日新聞は、7月31日までの捜査状況として今回の選挙は替え玉投票と自由妨害が大幅に増えたのが特徴の一つであると伝えた。さらに、替え玉投票で検挙された者36人中34人が公明党候補を支持した創価学会員であったと報じた。「もっとも一般的な手口はアパートの状差しなどから、郵送された他人の投票入場券を抜取り、その名義人と同年輩の知人を使って投票させるもの」としている[3]

新宿における替え玉投票[編集]

このうち新宿では、創価学会員のA子が創価学会員のBとC子に他人の入場券を入手するように指示。二人は創価学会とは関係の無い会社員Dさん夫妻の入場券を盗み、Dさん夫妻になりすまして投票し、後日3人とも逮捕された。この事件は国会でも取り上げられた。[4][5]

東京地検は、創価学会新宿第9男子部総ブロック長のEら8人を起訴。8人で13人分の投票を自分でやったり、他人にやらせた容疑としている。[6]

諸君!によると、Eが指揮官となり、さらに副将を創価学会欧州第二部フランクフルト部隊長のFが務め、末端幹部から選抜して実行班を結成して犯行に及んだ。同年10月11日、東京地裁でE、Fに禁固1年執行猶予4年など8人に有罪判決が出た。[7]

新宿以外での替え玉投票[編集]

豊島区では、Gが死んだHさんの入場券をI(女性)に渡し替え玉投票をさせた。Hさんの夫が不審に思い選管に連絡し、警戒態勢が敷かれていたところにIが現れて逮捕され、Gも翌日に逮捕された[8]。前述の諸君!では、Gは公明新聞の記者であるとしている[9]

諸君!によると、江東区在住で事件当時創価学会員だったJはこの前年の昭和42年の衆院選で2票替え玉投票に成功していた。当時Jは世田谷第一総B大原大Bの男子部大B長をしており、昭和42年の衆院選では、壮年部総B長のKかその家族の誰かに替玉を指示されて早朝に2か所の投票所で替え玉投票を行い、夕方に自分の投票をしたと言う。その頃、Kの家には投票券が10枚以上ありそれぞれ生年月日が分かるようになっていたと証言する。しかし、翌昭和43年の第8回参議院選挙でJの大学の先輩Lが替え玉投票を指示して逮捕され新聞に載り、自分にも捜査の手が及ぶのではないかと心配になった。Jは創価学会を辞めた後、当時を振り返って「正直言って辛かった。今考えると馬鹿馬鹿しい。踊らされていた。」と語った。[10][9]毎日新聞によると、Lは、19歳の学生Mに他人の投票入場券を渡し、公明党の候補に投票するよう指示した容疑で逮捕された。Mが投票しようとしたところ投票入場券の正当な所有者本人によって既に投票済みであったためMはその場で逮捕され、警察が背後関係を捜査したところLが浮上し逮捕された。[11]

関連項目[編集]

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b c d e 毎日新聞』 1968年7月10日夕刊
  2. ^ 『朝日新聞』 1968年7月19日付
  3. ^ 『毎日新聞』 1968年8月1日付
  4. ^ “法務委員会”. 第063回国会. (1970-04-15). http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/063/0080/06304150080019a.html 
  5. ^ “不在投票でも不正 二重投票の三人を逮捕”. 毎日新聞: p. 19. (1968年7月16日) 
  6. ^ “替玉投票で8人起訴”. 朝日新聞: p. 14. (1968年8月24日) 
  7. ^ 「元・創価学会員12人の告白 私たちはこうして替え玉投票を強制された!」、『諸君!』、株式会社文藝春秋1981年8月、 156頁。
  8. ^ “替玉投票頼んだ男つかまる 死んだ人妻の入場券利用”. 朝日新聞 東京版: p. 12. (1968年7月9日) 
  9. ^ a b 「元・創価学会員12人の告白 私たちはこうして替え玉投票を強制された!」、『諸君!』、株式会社文藝春秋、1981年8月、 155頁。
  10. ^ 「元・創価学会員12人の告白 私たちはこうして替え玉投票を強制された!」、『諸君!』、株式会社文藝春秋、1981年8月、 144頁。
  11. ^ “替え玉投票で背後の二人逮捕”. 毎日新聞: p. 15. (1968年7月10日)