指揮棒

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
指揮棒
ブルーノ・ワルターアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団マーラー 交響曲第4番のリハーサル風景(1946年)。ワルターの振っている指揮棒が現代の一般的なものより長いのが分かる

指揮棒(しきぼう)とは、指揮者が持つのこと。

概要[編集]

指揮棒は、主に右手で持ち、腕の延長としてをきざむ。指揮の小さな動きを大きな動きに変える道具である。 指揮の方法は、各拍子の図形(2拍子・3拍子・4拍子、それぞれ固有の振り方が存在する)を、指揮棒や手で空間に描いて示す。指揮棒は拍をきざむだけではなく、速度、強弱、アインザッツ、曲の表情など、演奏についての多くの事柄を指示するためにある。

歴史[編集]

バロック時代は、(指揮杖)を地面に打ちつけその音でテンポをとって指揮していた。ジャン=バティスト・リュリが指揮杖で足を打ったのが原因で死んだという逸話がよく知られる。

史上初めて現代の指揮棒につながるものを用いて指揮をしたのは、19世紀初頭のカール・マリア・フォン・ウェーバールートヴィヒ・シュポアと言われている。当初、指揮棒は巻き紙が用いられ、後に魚の骨(メンデルスゾーンが愛用)や樹皮をはいでいないリンデンの枝(ベルリオーズが愛用)、その他指揮者の個人的趣味で、ブリリアンカットのダイヤモンド付きの指揮棒、カエデに純金と宝石をあしらった指揮棒などが登場した。

ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の2代目の指揮者として歴史上有名なアルトゥル・ニキシュ1855年10月12日-1922年1月23日)は指揮棒の先が常に目の高さに来るように指揮し、奏者達の注視する先に己の目が来るようにしていた。カール・ベームも同様であった。また、シカゴ交響楽団の基礎を築いたフリッツ・ライナー1888年12月19日-1963年11月15日)は、指揮棒をわざと小さくしかも下の見難い位置で振ることにより逆に団員の注意をひいた。カラヤンも短い指揮棒で小澤征爾に影響を与えたが、現在の小澤は ニコラウス・アーノンクールヴァレリー・ゲルギエフピエール・ブーレーズらと同様、棒なしで指揮をしている。

20世紀前半までは現在使われているものより長い指揮棒がよく使われた。ピエール・モントゥーブルーノ・ワルターといった19世紀生まれの大指揮者の映像をみると、明らかに長い指揮棒を振っているのが分かる。現在はロシア系の指揮者:ユリ・アロノヴィッチマクシム・ショスタコーヴィチなどが良く長い指揮棒で指揮している。四管編成以上の大編成やグランド・オペラの指揮の時に見やすいと言われている。

構造・素材等[編集]

  • 本体部分は白色の塗色であることが多く、代表的な素材としては繊維強化プラスチック木材などが使われる。
  • 持ち手の部分は本体より太くなっていることがほとんどで、コルクなどを使って持ちやすいように、また滑りにくいように加工されていることが多い。エボニーや、純銀製のものもある。
  • 後述のように指揮棒が刺さって怪我をしたりすることから、本来は折れやすい素材が好まれるようである(岩城宏之は、そのような安全上の理由から、折れにくいグラスファイバー製の指揮棒よりも、折れやすい木製の指揮棒を推奨している)。
  • 長さは様々で、20cm強の短いものから、50cm前後の長いものまであるが、今日最も一般的な長さはおよそ30~40cmである。
  • 握りの部分も、いろいろな形状があり、房状のスマートなものと、大きく膨らんだ「涙型」と呼称されるものに大別できる。

指揮杖[編集]

指揮杖を持つドラムメジャー
  • マーチングなどでは、指揮棒の代わりに指揮杖が用いられる。通常の指揮棒と同様動かすことによりをきざむ以外に、指揮者(マーチングバンドではドラムメジャーと呼ばれる)の個人演技にも使用されることがある。

その他[編集]

関連項目[編集]