岸野末利加

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岸野 末利加(きしの まりか/ Malika KISHINO、1971年 - )は、日本現代音楽作曲家

経歴[編集]

京都市出身。父親は寺の住職。同志社大学法学部法律学科に進学し、大学時代はウインドサーフィン部に所属。1994年に卒業。卒業後は法律事務所に勤めた。この頃から作曲を始め、作曲活動を本格化させるべくフランスに渡る。パリ・エコール・ノルマルにて平義久に学んだ後、リヨン国立高等音楽院にてロベール・パスカルIRCAMにてフィリップ・ルルーに師事。同院在学中に日本音楽コンクール作曲部門の第3位を受賞し、卒業後はフランスのIRCAM(フランス国立電子音響音楽研究所)にて電子音響音楽の研究にあたった。2006年第5回 GRAME(電子音楽適応音楽研究グループ/フランス国立電子音楽創造センター)と l´EOC(アンサンブル・オーケストラル・コンテンポラン)による作曲コンクール第一位。 2006年からドイツのケルンを拠点に作曲活動を行い,作品は全てEdizioni Suvini-Zerboni から出版されている。

シュトウットガルト・アカデミー・シュロスソリチュッド、ニーダーザクセン・シュライアン芸術村、ノルトライン・ヴェストファーレン州、カルフォルニア州・ジェラッシーアーティストレジデンシーや南西ドイツ放送局のエクスペリメンタルスタジオ、 カールスルーエ・アート・アンド・メディア・センター(ZKM)、 フランス音楽研究グループ(L´Ina GRM) などの電子音楽スタジオの奨学招待作曲家。作品はヨーロッパを中心に、 ラジオフランス・プレザンス、ストラスブール・ムジカ、リヨン・ビエナーレ・ミュージック・アン・センヌ、ライ・ヌオヴァムジカ、オスロ・ウルティマ音楽祭、l´Ina GRM, ベルリン・ウルトラシャル、シュトウットガルト・サマーフェスティヴァル、エッセン・ナウ音楽祭、ケルン・アートブリュッケン音楽祭、西ドイツ放送局、ドイツランド放送局 , フランクフルト放送局、 南西ドイツ放送局などで委嘱初演、再演、放送されている。

演奏団体では、リヨン国立管弦楽団フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団, ベルリン・ドイツ交響楽団RAI国立交響楽団, hr交響楽団ボーフム交響楽団、東京混声合唱団、コア・ヴェルク・ルール、オスロ・シンフォニエッタ, アンサンブル・オーケストラ・コンテンポラン、ムジーク・ファブリック、アンサンブル・アスコ・シェーンベルクなどによって演奏されている。近年の作品では、2013年にラジオ・フランス委嘱の『箏コンチェルト』がジャン・ミハエル・ラヴォワ指揮で後藤真起子とフランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団によって、2015年はケルンフィルハーモニーで、アートブリュッケン音楽祭委嘱のトローンボーンコンチェルト『Heliodor』がバス・ヴィーガースの指揮でアスコ・シェーンベルクアンサンブルによって、またエッセンフィルハーモニーで同フィルハーモニー委嘱の合唱とオーケストラのための『Chant』がフロリアン・ヘルガ指揮でコア・ヴェルクルールとボ-フム交響楽団によって初演されている。

作風[編集]

旋律を持つ従来の手法とは一線を画した作風で、偶発的リズムを意図的に創作したり、残響を利用した緻密な手法により緊張感の高い作品を多く書いている。 作品の多くは、楽器の配置を細かく考えた上で、旋律や和声による形式的な彩色を意識的に避けている。美的な音色を極限まで押さえた独特の響きが聴衆に強い印象を与え、空間音楽としての立体効果を高めている。

主要作品[編集]

管弦楽曲[編集]

  • Du Firmament „蒼穹から”(2001-02)
  • Fluxus ac Refluxus„フルクサス・アク・リフルクスサス”(2008) 7群に分かれたオーケストラの為
  • Zur Tiefe (2013)
  • Chant „詠歌” (2015) 合唱とオーケストラのため
  • Shades of Ochre „シェーズ・オブ・オーカー“ (2017) オーケストラのため

協奏曲[編集]

  • Himmelwärts II / Vers Le Ciel II (2007) フルート、打楽器、16人の弦楽合奏のため
  • Rayons Crépusculaires „薄明光線”(2007 / 2008) 大太鼓と三群に分かれた14人の奏者、8チャンルのライヴエレクトロニックのため
  • Concerto pour Koto „箏コンチェルト” (2013) 箏とオーケストラのための
  • HELIODOR „ヘリオドール”存在せぬ国のための国歌 (2015)トロンボーンと17 人の奏者のため
  • チェロとオーケストラのための「What theThunder Said/雷神の言葉」 (2021)  第69回尾高賞受賞作品

器楽曲2021[編集]

アンサンブル
  • Danse du zéphy „ダンス・ドウ・ゼフィー “ (2003) 17 人の奏者のため
  • Sensitive Chaos „繊細なるカオス“ (2010) E-ギター、トランペット、トロンボーン、ピアノ、2人の打楽器奏者、チェロのため
  • Stratus - Altocumulus - Cirrus (2014) 三群に分かれた9人の音楽家のため
  • HELIODOR „ ヘリオドール“ 存在せぬ国のための国歌 (2015)トロンボーンと17 人の奏者のため
  • Ochres „オーカース“ II (2017) フルート、オーボエ、クラリネットとアンサンブルのため
室内楽 (6人以下)
  • Astral „アストラ“ (2001) フルート、ギター、打楽器、ピアノ、ヴァイオリン、チェロのため
  • Himmelsleiter „ヒメルスライター“ (2006) アルトフルート、バスクラリネット、トランペット、ピアノ、ヴァイオリン、チェロのため
  • Himmelsleiter II „ヒメルスライターII“ (2006 – rev.13) アルトフルート、バスクラリネット、トランペット、ハープ、ヴァイオリン、チェロのため
  • Himmelwärts / vers le ciel „天空へ“ (2006) フルート、打楽器、弦楽三重奏のため
  • Aqua Vitae II „生命の水II“ (2010) アルトフルート、バスクラリネット、打楽器、ヴァイオリン、チェロのため
  • Epure „純化“ (1998 – 1999) 弦楽四重奏のため
  • Seventeen Steps „セヴンティーンステップス“ (2006) 篠原眞師の75歳の誕生日を祝して, アルトフルート、十七絃箏、ピアノ、ヴァイオリンのため
  • Erwachen „覚醒“ (2007) グレートバスリコーダー、十七絃箏、打楽器のため
  • Erwachen II „覚醒 II“ (2008) バスフルート、十七絃箏、打楽器のため
  • Monochromer Garten II „単彩の庭 II“ (2011) バスクラリネット、バリトンサックスフォーン、トロンボーンのため
  • Scintillation „シンチレーション“ (2002) 正岡子規の四つの俳句によせて, ピアノ、チェンバロのため
  • Epanouissement II „開花 II“ (2004) ハープ、フルートのため
  • Halo „ハロ“ (2007) 二台のバスクラリネット(一台クラリネットに持ち替え)
  • Vagues des Passions „情熱の波“ (2010) マリンバ、ヴィブラフォンのため
  • Monochromer Garten„単彩の庭“ ( (2011) アコーデオン、チェロのため
  • Lamento„ 哀歌“ (2013) 福島民謡をもとにした 二台のバイオリンのための
  • Lamento II„哀歌 II “ (2013 – rev.14) 福島民謡をもとにした ヴァイオィンとヴィオラのための
  • MONOCHROMER GARTEN VII„単彩の庭 VII “ (2015) リコーダーと打楽器のため
  • Ha-Dô „波動“ (2017) 箏とテグムのため
独奏
  • Danse automnale de feuilles vermeilles „紅葉の舞“ (1997) ピアノ独奏曲
  • Epanouissement „開花“ (2003) チェロ独奏曲
  • Koi Hanété... „鯉はねて...“(2006) ピアノ独奏曲
  • Monochromer Garten III „単彩の庭 III“ (2012) ティンパニー独奏曲
  • Monochromer Garten IV„単彩の庭 IV“ (2012) 三十絃箏独奏曲
  • Monochromer Garten V„単彩の庭 V“ (2012) 十三絃箏と十七絃箏のための独奏曲
  • Monochromer Garten VI „単彩の庭 VI“ (2015) ヴィオラ独奏曲
  • Monochromer Garten VIII „単彩の庭 VIII“ (2016) アルトフルート独奏曲

単彩の庭シリーズ[編集]

  • Monochromer Garten (2011) アコーデオン、チェロのため
  • Monochromer Garten II (2011) バスクラリネット、バリトンサックスフォーン、トロンボーンのため
  • Monochromer Garten III (2012) ティンパニー独奏曲
  • Monochromer Garten IV (2012) 三十絃箏独奏曲
  • Monochromer Garten V (2012) 十三絃箏と十七絃箏のための独奏曲
  • Monochromer Garten VI (2015) ヴィオラ独奏曲
  • Monochromer Garten VII (2015) リコーダーと打楽器のため
  • Monochromer Garten VIII (2016) アルトフルート独奏曲

歌曲[編集]

合唱、ヴォーカルアンサンブル
  • Satsuki „五月” (2000) 混声合唱、2台のトランペット、トロンボーン,打楽器のため
  • Prayer /祈り(2011) 混声合唱、ア・カペラのため
  • Lo mes d’abrièu s’es en anat „四月は去った“ (2005) 12人の女性の声、児童合唱と電子音
  • Ichimai-kishomon „一枚起請文” (2011) 混声合唱、僧の声、篳篥、笙、打楽器、20絃箏、弦楽三重奏
  • Dialogue Invisible„見えない対話" (2012) 9人の女性の声のための
  • Chant „詠歌” (2015) 合唱とオーケストラのため
声楽
  • Battement „鼓動”(2003) バリトンとピアノのため
  • Hila – Hila to… (2009) カウンターテノール、ギター、トランペット、トロンボーン、二人の打楽器、ピアノ、チェロのため
  • Miraiken-kara „未来圏から" (2012) 能謡とアルトフルートのため

楽器とエレクトロニクス[編集]

  • Irisation Aquatique/イリザシヨン・アクアテイック (2002)
バスクラリネット、ピアノ、チェロ、電子音
  • Eclosion/開花 (2005) ,
ハープと9チャンネルのライヴエレクトロニクス / IRCAMにて制作
  • Abstentia /アブステンテイア (2007)
ダンスと電子音楽
  • Lebensfunke/レ–ベンスフンケ (2007)
大太鼓と電子音 /SWR エクスペリメンタルスタジオにて制作
  • Rayons Crépusculaires/薄明光線 (2007-08)
大太鼓と三群に分かれた14人の奏者、8チャンネルのライヴエレクトロニクス /GRAME にて制作
  • Aqua vitae /生命の水 (2008)
二台ピアノ、二人のウオーターパーカッション奏者、8チャンネルのライヴエレクトロニクス/ZKMにて制作
  • Qualia/クオリア (2009)
17絃箏、10チャンネルのライヴエレクトロニクス/l´Ina-GRMにて制作
  • Lo mes d’abrièu s’es en anat/四月は去った (2005)
12人の女性の声、児童合唱と電子音 /ベルリン工科大学にて制作
  • Lebensfunke II/レ–ベンスフンケ II (2009)
大太鼓と8チャンネルのライヴエレクトロニクス /SWR エクスペリメンタルスタジオにて制作

外部リンク[編集]