山本弘 (教育者)

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山本 弘(やまもと ひろし、1917年 - 2005年2月1日)は、東京都出身、岐阜県で活躍した日本の小学校音楽教師、教育者。同志の中村好明、下通進平らと共に、ふしづくりの音楽教育の提唱者である。

1962年全国唱歌ラジオコンクール(現在のNHK全国学校音楽コンクール)課題曲、高等学校の部「若き神々の歌」旋律の作曲を担当した。

山本正弘飛騨音楽教育研究会会長)の父にあたる。

経歴[編集]

大正6年(1917年)、東京都世田谷区に生まれる。静岡県滋賀県を経て、大正12年(1923年)に岐阜県高山市に移住。

昭和12年(1937年)、岐阜県師範学校卒業。益田郡立下呂小学校高山市立西小学校高山市立大八中学校で音楽教師を務める。また、岐阜県教育委員会指導主事(在職5年)、吉城郡角川小学校長、岐阜県教育委員会高山教育事務所学校職員課長、高山市立東小学校長、高山市立中山中学校長を歴任。

教職時代[編集]

昭和37年(1962年)、全国指導主事会議で岐阜県の『音楽能力表』とそれに準じた『能力テスト(ソノノート)』を紹介する。昭和37年度全国唱歌ラジオコンクール課題曲、高等学校の部「若き神々の歌」旋律を作曲。

昭和46年(1971年)、『音楽教育の診断と体質改善 〜音楽能力表とふしづくりの一本道〜』(明治図書、絶版)を出版。本の中で「ふしづくり一本道」(当時は20段階の簡素なステップ)を紹介。昭和48年(1973年)、『音楽教育を子どものものに 〜子どもが音楽するふしづくりへの体質改善〜』(明治図書)を出版。

昭和52年(1977年)、文部大臣表彰を受ける。昭和53年(1978年)、退職。

退職後[編集]

昭和54年(1979年)、文部省教科調査官の大和淳二古川町立古川小学校に来校し、対談。その際、「ふしづくり」の名称について「誤解を受けるのでやめた方がよい」と指摘を受ける。同時に、大和淳二は「『ふしづくり』は新教育課程の理念と合致している」と発言した。

昭和56年(1981年)、『誰にでもできる音楽の授業 〜ふしづくりの音楽教育紙上実技講習〜』(明治図書、絶版)を出版。本の中で、「ふしづくり一本道」が、現在一般的に紹介されている25段階、80ステップの形で紹介されている。

平成12年(2000年)、『授業』を自費出版。

平成14年(2002年)2月以来、2年間に渡って文部科学省学習指導要領作成委員に、『小学校学習指導要領音楽編への意見具申』を7回に分けて送った。山本弘の主張の主眼は、「子どもの発達段階の音楽能力の臨界期の観点から、小学校3年生(9歳)までを、現行の小学校学習指導要領音楽編のように『表現』・『鑑賞』ではなく、「音楽能力を育てる」記述に変えて欲しい。」ということであった。 しかし、山本弘によれば、送付した作成委員からの返事は「なしのつぶて」であったとし、『指導要領作成協力委員からの返事がないので世論に訴える檄文』を作成し、音楽教育系大学の教授などに送付した。 尚、『小学校学習指導要領音楽編への意見具申』及び『指導要領作成協力委員からの返事がないので世論に訴える檄文』の全文は、山本弘のホームページ上に、全文が保存・掲載されている。山本弘のこの行動がTOSS代表の向山洋一との出会いのきっかけとなった。

平成16年(2004年)、財団法人音楽鑑賞教育振興会発行の「おんかん」誌2004年4月号において、山本弘の意見具申を黙殺した前任者と交代した高須一(文部科学省初等中等教育局教育課程教科調査官 当時)が、ふしづくりの音楽教育と山本弘の主張について批判・検討を展開した。また、TOSS機関紙『教室ツーウェイ』(2004年12月号・明治図書)において向山洋一が連載の中で「ふしづくり」を取り上げ検討をした。平成17年(2005年)2月1日、死去。

著書[編集]

  • 山本弘編集『ふしづくりの音楽教育≪復刻版≫』第1巻 東京教育技術研究所、2008年
  • 山本弘編集『ふしづくりの音楽教育≪復刻版≫』第2巻 東京教育技術研究所、2008年
  • 山本弘著・関根朋子編集『“ふしづくり”で決まる音楽能力の基礎・基本』 明治図書、2005年
  • 山本弘著『授業』 文芸社、2000年
  • 山本弘著『誰にでもできる音楽の授業 〜ふしづくりの音楽教育紙上実技講習〜』 明治図書・絶版、1981年
  • 山本弘著『音楽教育を子どものものに 〜子どもが音楽するふしづくりへの体質改善〜』 明治図書・絶版、1973年
  • 山本弘著『音楽教育の診断と体質改善 〜音楽能力表とふしづくりの一本道〜』 明治図書・絶版、1971年

参考文献[編集]

  • 古川町立古川小学校 編集『ふしづくりの教育『ふしづくり一本道』 -新しい音楽学習をめざして-』 大進社・絶版、1978年
  • 高山市小学校音楽研究会 編集『ふしづくりのおけいこ(指導書)-低学年用-』
  • 高山市小学校音楽研究会 編集『ふしづくりのおけいこ(指導書)-中学年用-』
  • 松永洋介著『「ふしづくり」と「音楽づくり」をつなぐ創造性の系譜について(1 「つくる」ことへのアプローチ,IV 指導内容とカリキュラム) 』 学校音楽教育研究 : 日本学校音楽教育研究会紀要、2008年
  • 松永洋介 著『「ふしづくり一本道」における指導段階表の系統性に関する検討―第1段階から第2段階への移行期を中心に―』日本学校音楽教育実践学会紀要、2007年
  • 井上薫 著『ふしづくりのカリキュラム・プログラム開発の視点 -ふしづくりの現状と課題の検討を通して-』日本学校音楽教育実践学会紀要、2007年
  • 鈴木恒太 著『生涯にわたって音楽を楽しむために必要な基礎的な能力の育成』 千葉大学大学院教育学研究科修士論文、2005年
  • 久野壽彦・朝田健 著『「ふしづくりの音楽教育」の導入部に関する一考察』 岐阜大学教育学部研究報告. 人文科学、1995年
  • 『SONARE 音楽科教育実践講座』(ニチブン
  • S.アーベル=シュトルート著『音楽教育学大綱』(音楽之友社

関連項目[編集]

外部リンク[編集]