光吉夏弥

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光吉 夏弥[1](みつよし なつや、1904年明治37年〉11月20日 - 1989年平成元年〉3月7日)は、日本翻訳家絵本研究家、舞踊評論家。本名・積男。

略歴[編集]

大阪府北区北野茶屋町で生まれる[2]。1929年慶應義塾大学経済学部卒業。専門は児童文学写真舞踊

1953年岩波書店で「岩波の子どもの本」絵本シリーズを石井桃子とともに創立する。ほか児童書の翻訳、バレエの入門書など多数がある。1990年『絵本図書館(世界の絵本作家たち)』で日本児童文学学会賞特別賞受賞。

岩波書店刊の絵本ちびくろ・さんぼ』(1953年初版)の翻訳者として知られる。同絵本は、1988年に人種差別の指摘を受け、絶版となったが(いわゆるサンボ一斉絶版問題)、2005年に瑞雲舎からほぼそっくりそのままの形で復刊された。

著書[編集]

  • 『龍王の珠 支那の夜ばなし』(實業之日本社) 1943
  • 『王さまのクリーム』(桜井書店) 1948
  • 『象の本』(三十書房) 1949
  • 『みつばちの国のアリス』(羽田書店) 1949
  • 『こっくりおばさん』(講談社) 1950
  • 『サンタクロースの本』(三十書房) 1950
  • 『バレエへの誘ひ』(早川書房) 1951
  • 『ニューヨーク・シティ・バレー 1933 - 1958』(音楽之友社) 1958
  • 『ロイヤル・バレエ 1931 - 1961』(音楽之友社) 1961
  • 『絵本図書館 世界の絵本作家たち』(ブック・グローブ社) 1990

編著[編集]

  • 藤蔭静枝藤蔭会二十年史』(藤蔭会) 1938
  • 『ぞうのはなはなぜながい なぜなぜばなし』(大日本図書) 1963
  • 『なんでもふたつ ユーモアばなし』(大日本図書) 1963

翻訳[編集]

  • 『支那の墨』(クルト・ヴィーゼ、筑摩書房) 1942
  • 『ちんちん小袴』(小泉八雲中央公論社) 1948
  • 『たくさんのお月樣』(ジェイムズ・サーバー、日米出版社) 1949
  • エブラハム・リンカーン』(イングリ・ドオレーア, エドガー・パーリン・ドオレーア、進士益太共訳、羽田書店) 1950
  • 『りこうすぎた王子 プリンス・プリジオ』(A・ラング、岩波少年文庫) 1951
  • 『ふたたび宝島へ』(ジョン・コンネル、英宝社) 1951
  • 『世界をまわろう 子どものための世界地理』(V・M・ヒルヤー、岩波少年文庫) 1952
  • 『ホフマン物語』(モンク・ギボン、日本書房) 1952
  • 『みんなの世界』(マンロー・リーフ、岩波書店) 1953
  • 『ちびくろ・さんぼ』(岩波の子どもの本) 1953
    • 『ちびくろ・さんぼ』(瑞雲舎) 2005
  • 『金のニワトリ』(エレーン・ポガニー、岩波書店) 1954
  • 『もりのおばあさん』(ヒュウ・ロフティング、岩波書店) 1954
  • 『はなのすきなうし』(マンロー・リーフ、岩波書店) 1954
  • 『ちびくろさんぼのぼうけん』(バンナーマン、光文社) 1956
    • 『ちびくろ・さんぼ2』(瑞雲舎) 2005
  • 『音楽の国のアリス』(ラ・プラード、岩波少年文庫) 1956
  • ぴーたーうさぎのぼうけん』(B・ポッター、光文社) 1956
  • 『家なき人形』(アデル・ド・レイオー、光文社) 1956
  • 『町へきたペンギン』(リチャード・アトウオーター, フローレンス・アトウオータ、光文社) 1956
  • 『こわいこわいおおかみ』(ウイリアム・マクリーリ、光文社) 1957
  • 『サーカスの一家』(リリー・ジャン・ジャヴァール、光文社) 1957
  • 『動物の世界』(イーラ、平凡社) 1957
  • たべものどろぼうと名探偵』(ヒュー・ロフティング、光文社) 1957
  • 『こねずみせんせい』(マージョリー・フラック、光文社) 1957
  • 『子供の世界』(クライン・タコニス、平凡社、世界写真作家シリーズ) 1957
  • 『小さないのち』(デビッド・シーモア、平凡社、世界写真作家シリーズ) 1957
  • 『バレエの饗宴』(セルジェ・リド、平凡社、世界写真作家シリーズ) 1958
  • キュリー夫人』(E・ドーリイ、岩波書店) 1962、のち岩波少年文庫
  • 『りこうなおきさき』(モーゼス・ガスター、岩波書店) 1963
  • 『ポッパーさんのペンギン』(リチャード・アトウォーター, フローレンス・アトウォーター、学習研究社) 1966
  • 『おうさまのたけうま』(ドクター・スース、学習研究社) 1968
  • 『トトの大てがら』(C・H・ビショップ、岩波書店) 1968
  • 『みつばちじいさんのたび』(フランク・ストックトン、学習研究社) 1969
  • 『名探偵フレディの冒険』(ウォルター・ブルックス、講談社、こどもの世界文学9(アメリカ編3)) 1973
  • 『白鳥になったアヒルの子』(R・ゴッデン、学習研究社) 1974
  • 『ガンピーさんのふなあそび』(ジョン・バーニンガム、ほるぷ出版) 1976
  • 『ポッパーさんのペンギン』(リチャード・アトウォーター夫妻、学習研究社) 1976
  • 『大きいツリー小さいツリー』(ロバート・バリー、大日本図書) 1977
  • 『しろいいぬ?くろいいぬ?』(マリオン・ベルデン・クック、大日本図書) 1977
  • 『だんごをなくしたおばあさん』(小泉八雲、大日本図書) 1977
  • 『“なんでもふたつ"さん』(M・S・クラッチ、大日本図書) 1977
  • 『あべこべものがたり 北欧民話』(大日本図書) 1977
  • 『うさぎがいっぱい』(ペギー・パリシュ、大日本図書) 1978
  • 『おさらをあらわなかったおじさん』(フィリス・クラジラフスキー、岩波書店) 1978
  • 『ともだちができちゃった!』(セラ・アシャロン、大日本図書) 1978
  • 『おばけのジョージー』(ロバート・ブライト、福音館書店) 1978
  • 『なまけねずみのウォルター』(マージョリー・フラック、福音館書店) 1978
  • 『王さまのアイスクリーム』(フランセス・ステリット、大日本図書) 1978
  • 『トミーは大いそぎ』(ヘレン・パーマー、大日本図書) 1978
  • 『ガンピーさんのドライブ』(ジョン・バーニンガム、ほるぷ出版) 1978
  • 『おとこの子とおもっていた犬』(コーラ・アネット、大日本図書) 1979
  • 『アーサーといもうと』(リリアン・ホーバン、文化出版局) 1979
  • 『でっかいねずみとちっちゃなライオン』(イブ・タイタス、大日本図書) 1979
  • 『ちびっこ大せんしゅ』(シド・ホフ、大日本図書) 1979
  • 『象のふろおけ』(ほるぷ出版、世界むかし話11(東南アジア)) 1979
  • 『マウイの五つの大てがら』(ほるぷ出版、世界むかし話16(太平洋諸島)) 1979
  • 『ねことバイオリン』(タマラ・キット、大日本図書) 1980
  • 『きりんのセシリーと9ひきのさるたち』(H・A・レイ、メルヘン社) 1981
  • 『ぼくはめいたんてい』(マージョリー・W・シャーマット、大日本図書) 1982
  • 『ぼくはめいたんてい 6』(マージョリー・W・シャーマット、大日本図書) 1983
  • 『わにのはいた』(マーガリット・ドリアン、大日本図書) 1983
  • 『ねこはやっぱりねこがいい』(ヘレン・ヒル、大日本図書) 1983
  • 『とらとおじいさん ちいさいげき』(アルビン・トレセルト、大日本図書) 1983
  • 『クリスマスってなんなの? 』(ヘレン・モンセル、大日本図書) 1984
  • 『かねもちのねことびんぼうなねこ』(バーナード・ウェーバー、大日本図書) 1988
  • 『クリスマスのこねこ』(クレア・ターレイ・ニューベリー、大日本図書) 1988
  • 『のらねこボタン』(トム・ロビンソン、大日本図書) 1988
  • 『ネコ・猫・ねこ 世界中のネコの昔ばなし』(平凡社) 1989

「ひとまねこざる」[編集]

  • ひとまねこざる』(H.A.レイ、岩波の子どもの本) 1954
  • 『じてんしゃにのるひとまねこざる』(エッチ・エイ・レイ、岩波書店) 1956
  • 『ひとまねこざるときいろいぼうし』( エッチ・エイ・レイ 岩波書店) 1966
  • 『たこをあげるひとまねこざる』( マーガレット・レイ 岩波書店) 1966
  • 『ひとまねこざるびょういんへいく』( マーガレット・レイ 岩波書店) 1968


参考文献[編集]

  • 「戦前の光吉夏弥を尋ねて」(澤田精一、『図書』2017年1月号、16-22頁)、のち『光吉夏弥 戦後絵本の源流』(岩波書店) 2021.10

脚注[編集]

  1. ^ 戸籍上の表記は俗字の「光𠮷」であり、こちらの表記が多い。
  2. ^ 沢田精一(2017)、17頁による。佐賀県唐津市出身と書かれることがあるが、唐津は本籍であるという。

関連項目[編集]