交響曲第3番 (メンデルスゾーン)

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F.Mendelssohn:Symphony_nº3_'Scottish' - Rumon Gamba指揮ガリシア交響楽団(Orquesta Sinfónica de Galicia)による演奏。ガリシア交響楽団公式YouTube。
F.Mendelssohn_Bartholdy - Symphony_No.3 - Piotr WIjatkowski指揮Orkiestra Opery i Filharmonii Podlaskiej (The Podlasie Opera and Philharmonic Symphonic Orchestra)による演奏。Opery i Filharmonii Podlaskiej (OIFP)公式YouTube。
MENDELSSOHN_SYMPHONY_Nr.3 - ドミトリー・キタエンコ指揮カタール・フィルハーモニー管弦楽団による演奏。カタール・フィルハーモニー管弦楽団公式YouTube。
Mendelssohn - Symphony_No.3 - クルト・マズア指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団による演奏。EuroArts公式YouTube「EuroArtsChannel」。

交響曲第3番イ短調スコットランド』(こうきょうきょくだい3ばんイたんちょう「スコットランド」 ドイツ語: Sinfonie Nr. 3 in a-Moll op. 56, „Schottische“ MWV N 18)はフェリックス・メンデルスゾーンが1830年から1842年にかけて作曲した交響曲作品番号56。メンデルスゾーンが完成させた最後の交響曲である。 「第3番」の番号は出版順による。これより早い時期に作曲された第4番「イタリア」第5番「宗教改革」の両曲はメンデルスゾーンの死後に出版された。

「スコットランド」という標題は、メンデルゾーンがこの曲を着想したのがスコットランド旅行中だったことによる。ロマン派音楽の交響曲として代表的な存在であり、4つの楽章は休みなく連続して演奏されるよう指示されている。しかし、各楽章は終止によって明確に区切られているため、連続性は緩やかであり、同じく全楽章を連続的に演奏するロベルト・シューマン交響曲第4番とは異なって、交響曲全体の統一性や連結を強く意図したものとは認められない。演奏時間は約40分。

作曲の経緯[編集]

1829年3月にメンデルスゾーンは、バッハマタイ受難曲を蘇演し、5月に初めてイギリスに渡った。スコットランドを旅したメンデルスゾーンは7月30日、エディンバラメアリ・ステュアートゆかりのホリールードハウス宮殿を訪れ、宮殿のそばにある修道院跡において、16小節分の楽想を書き留めた。これが「スコットランド」交響曲の序奏部分であり、この曲の最初の着想となった。しかし、翌1830年にはイタリア旅行して、第4交響曲「イタリア」の作曲にかかり、1835年にはライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団指揮者となるなど、多忙のために「スコットランド」の作曲は10年以上中断された。

全曲が完成したのは1842年1月20日、ベルリンにおいてであり、メンデルスゾーンは33歳になっていた。メンデルスゾーンはモーツァルト同様、速筆で知られるが、この曲に関してはその例外ということになる。

初演[編集]

初演は1842年3月3日、メンデルスゾーン自身の指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団により行われた。

同年5月に7度目のイギリス訪問を果たしたとき、メンデルスゾーンはバッキンガム宮殿ヴィクトリア女王に謁見し、この曲を女王に献呈する許可を得た。献辞付きの楽譜は翌1843年に出版された。

楽器編成[編集]

フルート 2、オーボエ 2、クラリネット 2、ファゴット 2、ホルン 4、トランペット 2、ティンパニ弦五部

楽曲構成[編集]

第1楽章 Andante con moto — Allegro un poco agitato[編集]

イ短調 3/4拍子 - イ短調 6/8拍子 序奏付きのソナタ形式(提示部リピート指定あり)。


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序奏は、幻想的かつ悲劇的な旋律で始まる。旋律の初め、属音から主音に4度跳躍して順次上行する4音からなる音型は、各楽章の主題と関連があり、全曲の基本動機的な役割を果たしている。序奏はかなり長く、物語るように発展するが、やがて始めの旋律に戻り、主部に入る。 主部は弦とクラリネットが弱音で第1主題を提示する。主題は序奏動機に基づき、繰り返しながら急激に盛り上がる。第2主題はホ短調、クラリネットで奏されるが、弦の第1主題の動機が絡んでいるためにあまり目立たない。小結尾では弦に詠嘆的な旋律が現れる。提示部は繰り返し指定があるが、実際に繰り返す演奏は少ない。展開部は弦の長く延ばした響きで開始され、各主題を扱う。再現部は短縮されている。コーダは展開部と同じように始まり、すぐに激しく興奮するが、やがて序奏の主題が戻ってきて静かに楽章を締めくくる。

第2楽章 Vivace non troppo[編集]


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ヘ長調 2/4拍子 ソナタ形式。

スケルツォ風の楽章。短い前奏につづいて、木管がスコットランド民謡を思わせる旋律を示す。これが第1主題で、第1楽章の序奏主題の動機に基づく。第2主題はハ長調、弦のスタッカートで順次下行する。展開部では第1主題を主に扱い、各楽器がこの主題を追いかけるように奏し合う。再現部では第2主題が強奏されて効果を上げる。

第3楽章 Adagio[編集]


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イ長調 2/4拍子 ソナタ形式。

短い序奏があり、イ短調からイ長調に変わる。主部は、歌謡的な第1主題が第1ヴァイオリンで、それに応えるように葬送行進曲風の第2主題がクラリネット、ファゴット、ホルンで厳かに提示され、クライマックスを築く。再び穏やかな小結尾の後に、短い展開部に入るが、ここでは序奏と第2主題が取り扱われる。その後、ほぼ型通りの再現部の後、長めのコーダに入る。

第4楽章 Allegro vivacissimo — Allegro maestoso assai[編集]

イ短調 2/2拍子 - イ長調 6/8拍子 ソナタ形式。


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低弦が激しくリズムを刻み、ヴァイオリンが広い音域を上下する第1主題を示す。経過句では、弦によって推進的なリズムが現れる。第2主題はホ短調、木管楽器で出されるが、弦によるハ長調の勇壮な対句を伴っている。この主題も第1楽章の序奏主題と関連がある。展開部では、第1主題と経過句の動機が主に扱われる。再現部は短縮され、コーダに入ると、第1主題に基づいて激しく高まるが、波が引くように静まって、第2主題が寂しげに奏され、いったん全休止となる。テンポを落として6/8拍子になり、低弦が新しい旋律をイ長調で大きく歌う。これも第1楽章の序奏主題の動機が組み込まれている。この新しい主題によって壮大に高まり、全曲を明るく結ぶ。

終楽章の結尾について[編集]

第4楽章のコーダで全休止の後、新しい旋律が導入されてそれまでの曲調が一変する手法は、その雰囲気と効果はかなり異なるが、ロベルト・シューマンが1845年から1846年にかけて作曲した交響曲第2番にも見られ、シューマンが「スコットランド」を聴いて影響を受けた可能性がある。

クレンペラー版[編集]

指揮者オットー・クレンペラーは、このコーダについて批判的意見を持っていた。クレンペラーが「スコットランド」を指揮した録音では、1960年フィルハーモニア管弦楽団とのスタジオ録音(EMI)が一般に知られているが、これは通常の演奏である。しかし、同レーベルで1966年にバイエルン放送交響楽団を指揮したライヴ録音では、第4楽章のコーダの後半95小節分をカットし、第4楽章の第2主題に基づく独自のコーダを演奏したものが残されている。この演奏では、イ長調の新たな旋律は現れず、音楽は短調のまま、静かに閉じられる。

外部リンク[編集]