ラルーシュ運動

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この運動の創始者で名称の由来でもあるリンドン・ラルーシュ1922-2019

ラルーシュ運動(英:LaRouche movement)は、リンドン・ラルーシュとその思想を推進する政治的および文化的ネットワークである。この運動には、世界中の多くの組織や企業が関与しており、キャンペーン、情報収集、書籍や定期刊行物の発行を行っている。『ニューヨーク・タイムズ』紙はこの運動を「カルト的」としている[1]

特徴[編集]

ラルーシュ運動は熱心な信奉者を集め、いくつかの具体的かつ精緻な政策構想を展開したが、マルクス主義ファシスト反ユダヤ主義政治的カルト個人崇拝犯罪組織などとさまざま呼び方をされている[2][3][4]。ラルーシュ運動は極右の政治運動であると考えられることが多い[5][6][7][8]1984年、米国家安全保障会議の元上級職員ノーマン・ベイリーは、ラルーシュ運動の研究員を「世界最高の民間諜報機関の1つ」と評した[9]ヘリテージ財団は「米国史において、最も奇妙な政治団体の一つ」と呼び、『ワシントン・マンスリー』紙はそれを「巨大かつ奇妙な虚栄報道機関」と呼んだ[4]

ジャーナリストジョン・バーチ・ソサエティの活動家であるジョン・リース[10]は、ラルーシュ運動について「政党というよりも政治的カルトの性格を帯びている」と述べ、ラルーシュは信者たちから「盲従」を与えられていると述べた[11]。また、ラルーシュ運動を「個人崇拝」とも呼んだ[12]。ラルーシュはこれに反論してカルト的人物であるという告発を「ゴミ」として、グループに対する支配を否定した[11]

長年、批評を続けているチップ・バーレットとマシュー・N・ライオンズは次のように述べた[13]

奇妙な政治的カルトとして片付けられることが多いが、ラルーシュ組織とさまざまなフロント団体はファシスト運動であり、その発信は、ナチスのイデオロギーの要素を反映している。1970年代初頭、ラルーシュ運動の支持者はポピュリズム的な反エリート主義と、極左、環境活動家、フェミニスト同性愛者やレズビアン、労働団体に対する攻撃を組み合わせた。ラルーシュ運動の支持者は「人道主義者」エリートが産業資本家に代わって統治する独裁制を主張した。また、イルミナティフリーメーソンユダヤ人銀行家にまつわる陰謀論の、特異で婉曲化された派生版を生み出した。ラルーシュ運動の見解は風変わりではあるものの、内部的には一貫しており、右派ポピュリストの伝統に根ざしていた[13]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ Severo, Richard (2019年2月13日). “Lyndon LaRouche, Cult Figure Who Ran for President 8 Times, Dies at 96”. The New York Times. オリジナルの2019年2月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190214141656/https://www.nytimes.com/2019/02/13/obituaries/lyndon-larouche-dead.html 
  2. ^ Mintz, John (1985年1月14日). “Ideological Odyssey: From Old Left to Far Right”. The Washington Post. オリジナルの2011年5月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110514001206/http://www.washingtonpost.com/wp-srv/national/longterm/cult/larouche/main.htm 2017年9月2日閲覧。 
  3. ^ Robert L. Bartley (2003年6月9日). The Wall Street Journal 
  4. ^ a b Avi Klein (2007年11月). “Publish and Perish”. The Washington Monthly. オリジナルの2011年6月5日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110605165602/http://www.washingtonmonthly.com/features/2007/0711.klein.html 2007年10月26日閲覧。 
  5. ^ King 1989, pp. 132–133.
  6. ^ Toner, Robin (1986年4月4日). “LaRouche savors fame that may ruin him”. The New York Times: p. A1. オリジナルの2017年3月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20170314084721/http://www.nytimes.com/1986/04/04/us/larouche-savors-fame-that-may-ruin-him.html?scp=1&sq=LaRouche%20Savors%20Fame%20That%20May%20Ruin%20Him&st=cse 2017年2月10日閲覧。 
  7. ^ Bennett, David Harry (1988). The party of fear: from nativist movements to the New Right in American history. UNC Press Books. p. 362. ISBN 978-0807817728 
  8. ^ King, Dennis; Radosh, Ronald (19 November 1984). “The LaRouche Connection”. The New Republic. 
  9. ^ "Some Officials Find Intelligence Network 'Useful'" Archived August 4, 2011, at the Wayback Machine., The Washington Post, January 15, 1985
  10. ^ Western Goals Foundation”. Militarist Monitor (1989年1月2日). 2020年12月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月7日閲覧。
  11. ^ a b John Mintz (1985年1月14日). “Ideological Odyssey: From Old Left to Far Right”. The Washington Post. オリジナルの2011年5月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110514001206/http://www.washingtonpost.com/wp-srv/national/longterm/cult/larouche/main.htm 2017年9月2日閲覧。 
  12. ^ Berlet, Chip; Bellman, Joel (March 10, 1989). Fascism Wrapped in an American Flag. Political Research Associates. 
  13. ^ a b The LaRouchite Secret Elite Synthesis Archived February 7, 2005, at the Wayback Machine. Chip Berlet & Matthew N. Lyons, Right-Wing Populism in America, p. 273.

関連項目[編集]