ヤブガラシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ヤブガラシ
Cayratia japonica1.jpg
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ類 rosids
: ブドウ目 Vitales
: ブドウ科 Vitaceae
: ヤブガラシ属 Cayratia
: ヤブガラシ C. japonica
学名
Cayratia japonica
和名
ヤブガラシ、ビンボウカズラ

ヤブガラシ(藪枯らし、Cayratia japonica)は、ブドウ科ヤブガラシ属の一種である。つる植物で、日本ではよく見かける雑草である。標準和名はヤブカラシ。

和名は藪を覆って枯らしてしまうほどの生育の旺盛さを示している[1]。別名ビンボウカズラ(貧乏葛)とも呼ばれ、その意味としては、庭の手入れどころではない貧乏な人の住処に生い茂る、あるいはこの植物に絡まれた家屋が貧相に見える、またはこの植物が茂ったことが原因で貧乏になってしまう、などの意味に解釈されている[1][2]

特徴[編集]

多年草。道端、林縁、荒れ地などに生え、市街地では公園のフェンスなどによく絡まっている。

つるの長さは 2 ないし 3 メートル。葉と対生する巻きひげが伸びて他のものに巻き付き、覆い被さって葉を茂らせる。

葉は5枚の小葉からなる鳥足状複葉互生する[1]。それぞれの小葉は縁に鋸歯のある先のとがった卵形。

花は葉と対生する散房状の集散花序につき 6 - 8月ごろ徐々に開花する。花は直径約 5 ミリメートルで薄緑色の花弁4枚と雄蕊が4本雌蕊が1本ある。花弁と雄蕊は開花後半日ほどで散ってしまい、白色の雌蕊が中央に立った直径約 3 ミリメートルの橙色の花盤(盤状の花托)が残る。この花盤は蜜が豊富で、蜂や蝶などの昆虫がよく集まる。多くの花が咲くが、他家受粉でしか結実出来ないため、種は少ない[1][2]

2017年の研究によると、ヤブガラシの蔓は、同種と他種の植物に同時に接した場合、正確に他種へと巻き付いていくことが確認された。また、同種に巻き付きそうになっても巻き戻す能力を持つことも確認された。ヤブガラシは同種をシュウ酸の量で認識していると考えられる。植物ではなくシュウ酸を塗った棒と他の試薬を塗った棒への巻き付き比較で、シュウ酸を塗った棒を避ける傾向が見られた。そのことから、シュウ酸への接触による化学認識、つまり味覚のような識別機構があることを意味する[3][4]

分布[編集]

日本国外では東アジアから東南アジア、日本国内では北海道西南部から南西諸島まで分布する。関東以北はすべて3倍体で実を付けないが、中部以西には実を付ける2倍体がまじる[5]。球状の液果で、最初薄緑色のものが熟すとつやのある黒色になる。

人との関係[編集]

若芽は茹でて水晒しをすると食用になるが、茹で時間は長めに、晒しも十分に(4〜5時間)する必要がある。適度の滑りと辛味があるが、多く食べると喉がいがらっぽくなることがある[6](p137)。漢名は「烏歛苺(ウレンボ)」で、根は利尿・解毒・鎮痛などに薬効のある生薬として利用している[7]

駆除が困難な草である。地上部を抜き取っても土中に根茎を残すと春から夏にかけて盛んに芽を出す。地下茎は横に長く伸びるため、一度広がってしまうと、その土地から完全に取り除くのは難事である。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 中公新書 田中修『雑草のはなし』p.111-112
  2. ^ a b 文春新書 草野双人『雑草にも名前がある』p.129-134
  3. ^ “「ペロ・・・これは同種の味!!」つる植物は接触化学識別(味覚)を使って同種を避けている” (プレスリリース), 東京大学大学院農学生命科学研究科, (2017年3月1日), https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2017/20170302-1.html 2022年1月9日閲覧。 
  4. ^ Yuya Fukano (2017). “Vine tendrils use contact chemoreception to avoid conspecific leaves”. Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences (Royal Society) 284 (1850): 1-8. doi:10.1098/rspb.2016.2650. 
  5. ^ 塚谷裕一『スキマの植物の世界』(中央公論新社、中公新書、2015年)、114-115頁。
  6. ^ 辺見金三郎 『食べられる野草』 134巻、保育社〈カラーブックス〉、1967年。 
  7. ^ 熊本大学薬学部薬用植物

外部リンク[編集]