塚谷裕一

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塚谷 裕一(つかや ひろかず、1964年[1] - )は、日本の植物学者、東京大学大学院理学系研究科教授[1]。専門は、発生生物学系統分類学

略歴・人物[編集]

神奈川県鎌倉市生まれ。1988年、東京大学理学部[1]。1993年、東京大学大学院理学系研究科植物学専攻博士課程修了[1]理学博士[1]。論文は、「突然変異体に用いたアラビドプシス花序形態形成の解析」[2]東京大学分子細胞生物学研究所助手から、1999年、岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所助教授、2001年、総合研究大学院大学先導科学研究科助教授(併任)、2005年、現職[1]

若くして、夏目漱石の『それから』に出てくる白百合が白くないことを指摘したエッセイ「漱石の白くない白百合」で知られるようになり、以後、一般向け著書多数がある。

著書の『漱石の白くない白百合』は近代散文文学を植物好きの読者がこだわって読むという趣向の近代文学に関する評論的なエッセー集である。20編のエッセーからなり夏目漱石、泉鏡花志賀直哉三島由紀夫井伏鱒二などの作品における動植物の描写が論じられる。書名となった「漱石の白くない白百合」は、百合を好んでとりあげた漱石の作品のうち、『それから』に記述された特徴を取り上げて、植物学上の種の特定を論考し、ヤマユリ(日本の原生種で花弁の地は白いが黄の筋と茶褐色の斑点があり、学名が黄金色のユリとされるように人によっては黄色いとみることがある)であると推定する。近代文学に登場する百合については、「描かれた山百合の謎」でさらに詳しく論じられる。日本の古典文学において、平安時代以降、百合が取り上げられることはなくなり、江戸後期までその状態が続く。一方で西洋では中世に純白のマドンナリリー(ニワシロユリ)がもたらされ、白百合は純潔の象徴としての概念が確立された。日本の明治期に、百合が白いものという概念が輸入され、当時文学者の日本においては身近なユリは純白でない山百合であったが、多くの文学者が白い百合を作品に登場させたことが紹介されその背景が論じられる。その後栽培技術の進歩によって、純白なテッポウユリが身近な百合の座を山百合から奪うことが示される。「『虞美人草』の花々」では漱石が2人の対照的な性格の女性を象徴するのに多くの花が用いて、小さい野草の花に対する嗜好を示していたことが紹介される。

そのほかに『植物のこころ』(岩波新書)があり、同書では植物の器官が分化し多様化していく遺伝子群の働きが説明され、植物も環境を感知するセンサーをもち化学的信号を伝達する機構をもっていることが紹介され、多様に進化した植物としてつる植物や、着生、寄生、腐生する植物、昆虫と共生する植物や食虫植物などの戦略についてや特異な環境に適応した植物などが紹介している。

著書[編集]

  • 『漱石の白くない白百合』文藝春秋 1993
  • 『果物の文学誌』朝日選書 1995
  • 『植物の<見かけ>はどう決まる 遺伝子解析の最前線』中公新書 1995
    • アラビドブシス(和名:シロイヌナズナ、遺伝子の数が少なく、小型のため研究に適する。)の自ら研究の経緯を記して、研究の経緯が描かれるとともに、植物の花の色や葉の形が遺伝学的にどのように決まるかが解説される。
  • 『異界の花 ものがたり植物図鑑』マガジンハウス 1996
  • 『秘境ガネッシュヒマールの植物 調査隊、道なき道を行く』研成社 1996
  • 『雨男、お花畑をゆく』NTT出版 1997(気球の本)
  • 『植物のこころ』岩波新書 2001
  • 『蘭への招待 その不思議なかたちと生態』集英社新書 2001
  • 『変わる植物学広がる植物学 モデル植物の誕生』東京大学出版会 2006
  • 『ドリアン 果物の王』中公新書 2006
  • 『スキマの植物図鑑 カラー版』中公新書 2014
  • 『スキマの植物の世界 カラー版』中公新書 2015

共編著[編集]

翻訳[編集]

  • F.キングドンーウォード『植物巡礼 プラント・ハンターの回想』岩波文庫 1999
  • ニコラス・ハーバード『植物を考える ハーバード教授とシロイヌナズナの365日』南澤直子共訳 八坂書房 2009

出演[編集]

ラジオ[編集]

テレビ番組[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f 日本学術振興会賞”. 日本学術振興会. 2016年10月4日閲覧。
  2. ^ 博士論文書誌データベース

外部リンク[編集]

Tsukayaは、植物の学名命名者を示す場合に塚谷裕一を示すのに使われる。命名者略記を閲覧する/IPNIAuthor Detailsを検索する。)