ホジキンリンパ腫

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ホジキンリンパ腫
Hodgkin lymphoma cytology large.jpg
ホジキンリンパ腫の顕微鏡写真。
分類および外部参照情報
ICD-10 C81
ICD-9-CM 201
ICD-O 9650/3-9667/3
DiseasesDB 5973
MedlinePlus 000580
eMedicine med/1022
Patient UK ホジキンリンパ腫
MeSH D006689

ホジキンリンパ腫(ホジキンリンパしゅ、: Hodgkin's lymphoma; HL)は、悪性リンパ腫の一分類で、病理組織学的にはホジキン細胞 (Hodgkin cell) あるいはリード=シュテルンベルク細胞英語版等を認める事が特徴的である[1]

従来、ホジキン病 (Hodgkin’s disease; HD) と呼ばれてきた病気である。名前は1832年にこの病気を発見したイギリスの医師トーマス・ホジキンにちなむ[2][3]

症状には発熱盗汗体重減少がある。しばしば、首、脇の下、鼠径部に無痛性の肥大したリンパ節英語版を認める。この病気の患者は、疲労感や痒みを感じる[4]

ホジキンリンパ腫の原因のおよそ半分がエプスタイン・バール・ウイルス(EBV)によるものである[5]。その他の危険因子にはこの病気の家族歴やHIV/AIDSを有していることがあげられる[4][5]。ホジキンリンパ腫には古典的ホジキンリンパ腫と結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫英語版の2つの主要な種類がある[6]。診断 はリンパ節中に多核化したリード=シュテルンベルク細胞といったホジキン細胞の確認による[4]

ホジキンリンパ腫は化学療法放射線療法幹細胞移植によって治療される。治療の選択はしばしばがんの進行度合いと、治療に好ましい特徴を有しているかどうかに依存する[7]。病気の初期では、治癒がしばしば可能である[2]。米国における5年生存率は86%である[6]。20歳未満の患者では生存率は97%である[8]。しかしながら、放射線照射と一部の抗がん剤は、その後数十年に渡って、他のがん心臓病、肺病の危険性を増大させる[2]

疫学[編集]

2004年におけるリンパ腫及び多発性骨髄腫による住民10万人あたりの死亡数[9]
  no data
  ≤ 1.8
  1.8–3.6
  3.6–5.4
  5.4–7.2
  7.2–9
  9–10.8
  10.8–12.6
  12.6–14.4
  14.4–16.2
  16.2–18
  18–19.8
  ≥ 19.8

非ホジキンリンパ腫とは異なり、発生率は年齢とともに増加しているが、ホジキンリンパ腫には2つの年齢層でピークがあり、これらのピークは国籍と若干異なる場合があるが、15歳から35歳までの若い成人と55歳を超える成人で最も頻繁に発生する。全体的に男性の発生が一般的であるが、結節性硬化症の変異がある人は女性もわずかに発生する。ホジキンリンパ腫の年間発生率は年間10万人あたり2.7人であり、すべての癌のわずか1%未満を占めている。

ホジキンリンパ腫の発生はHIVによる感染における患者において増加している。HIVによる感染に関連する他の多くのリンパ腫とは対照的に、CD4陽性T細胞の数がより多い患者で最も発生する。

2013年には、約72万5千人がホジキンリンパ腫を患っており、2万4千人が死亡した[10][11] 。米国では、人口の0.2%が生涯のどこかの時期にホジキンリンパ腫を患う。日本は全悪性リンパ腫の約10%で、世界全体としては少ない。

症状[編集]

表在リンパ節腫大(首のつけね、脇の下、足のつけねなどのしこり)、体重減少(6か月で10%以上)、発熱盗汗など。

組織学的分類[編集]

WHO分類によれば、ホジキンリンパ腫は「古典型」と「結節性リンパ球優勢型」のふたつに大きく分類され、古典型には4つの亜分類を持たせている。

  • 古典型ホジキンリンパ腫 (Classical Hodgkin's lymphoma: CHL)
    • リンパ球豊富型古典的ホジキンリンパ腫 (Lymphocyte rich: LR)
    • 結節硬化型ホジキンリンパ腫 (Nodular sclerosis: NS)
    • 混合細胞型ホジキンリンパ腫 (Mixed cellularity: MC)
    • リンパ球減少性ホジキンリンパ腫 (Lymphocyte depleted: LD)
  • 結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫 (Nodular lymphocyte predominant Hodgkin's lymphoma: NLPHL)

診断[編集]

リンパ節生検。WHO分類では4種類(リンパ球減少型、リンパ球優位型、結節硬化型、混合細胞型)。最も一般的な診断時の年齢は20歳から40歳の間である[6]

治療[編集]

まず、古典的ホジキンリンパ腫と結節性ホジキンリンパ腫では治療方針が異なる。また、病期により異なる。以下に基本的な治療方針を述べる。

古典的ホジキンリンパ腫(限局期)[編集]

化学療法であるABVD療法[注釈 1]4コースの後、進行例以外では放射線区域照射(involved field radiation therapy; IFRT)が標準的とされている。予後良好群に対しては化学療法の施行回数や放射線照射量の削減が試みられているが、定まった見解は得られていない。

結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(限局期)[編集]

放射線区域照射単独が標準的とされる。これは古典的ホジキンリンパ腫と異なり、放射線区域照射単独でも放射線広域照射や化学療法併用放射線照射と治療成績に大差がないことによる[13][14]

古典的ホジキンリンパ腫(進行期)[編集]

ABVD療法6コースから8コースが標準療法となる。ただし「6コースから8コース」の意味はびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫とは異なり、「4コースまでで完全寛解ならば6コースで終了、6コースで完全寛解ならば8コースで終了」の意味である。進行期においては、予後因子で治療方法を変える根拠はない。完全寛解に至った場合、追加治療として放射線照射を行うのは推奨されない。

結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫(進行期)[編集]

標準的治療法は確立していない。古典的ホジキンリンパ腫に準じることが多い。

再発・難治性ホジキンリンパ腫[編集]

標準的治療法は確立していない。非ホジキンリンパ腫の再発・難治例に用いられる治療法(ESHAP療法[15]など)が用いられる。若年者であれば大量化学療法併用自己末梢血幹細胞移植も選択肢として挙げられる。日本では2014年1月に(CD30陽性の)再発・難治性ホジキンリンパ腫に対しての治療薬としてブレンツキシマブ ベドチンが製造認可された。海外での第II相試験(SG035-0003試験)の結果は奏効率75%であった[16]

予後[編集]

年齢、B症状(発熱、体重減少、盗汗〔寝汗のこと〕)、巨大縦隔腫瘍などは、予後不良因子とされる。

ホジキンリンパ腫を患った人物[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ C-MOPP療法、BEACOPP療法など他の治療方法もあるが、ABVD療法が、他の治療法に比べて有効性に大差なく、急性毒性や晩期毒性が少ないことが示されているため[12]

出典[編集]

  1. ^ Bower, Mark; Waxman, Jonathan (2011) (英語). Lecture Notes: Oncology (2 ed.). John Wiley & Sons. p. 195. ISBN 9781118293003. https://books.google.ca/books?id=I1lkXZrfAowC&pg=PA195. 
  2. ^ a b c Armitage JO (August 2010). “Early-stage Hodgkin's Lymphoma”. N. Engl. J. Med. 363 (7): 653–62. doi:10.1056/NEJMra1003733. PMID 20818856. http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMra1003733. 
  3. ^ Hodgkin T (1832). “On some morbid experiences of the absorbent glands and spleen”. Med Chir Trans 17: 69–97. 
  4. ^ a b c Adult Hodgkin Lymphoma Treatment (PDQ®)–Patient Version” (2016年8月3日). 2016年8月12日閲覧。
  5. ^ a b World Cancer Report 2014. World Health Organization. (2014). pp. Chapter 2.4. ISBN 9283204298. 
  6. ^ a b c SEER Stat Fact Sheets: Hodgkin Lymphoma” (2016年4月). 2016年8月13日閲覧。
  7. ^ Adult Hodgkin Lymphoma Treatment (PDQ®)–Patient Version” (2016年8月3日). 2016年8月13日閲覧。
  8. ^ Ward, E; DeSantis, C; Robbins, A; Kohler, B; Jemal, A (2014). “Childhood and adolescent cancer statistics, 2014.”. CA: a cancer journal for clinicians 64 (2): 83-103. PMID 24488779. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.3322/caac.21219/abstract. 
  9. ^ WHO Disease and injury country estimates”. World Health Organisation (2009年). 2009年11月11日閲覧。
  10. ^ Global Burden of Disease Study 2013, Collaborators (22 August 2015). “Global, regional, and national incidence, prevalence, and years lived with disability for 301 acute and chronic diseases and injuries in 188 countries, 1990-2013: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2013.”. Lancet (London, England) 386 (9995): 743-800. PMID 26063472. 
  11. ^ GBD 2013 Mortality and Causes of Death, Collaborators (10 January 2015). “Global, regional, and national age-sex specific all-cause and cause-specific mortality for 240 causes of death, 1990-2013: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2013.”. Lancet (London, England) 385 (9963): 117-71. PMID 25530442. 
  12. ^ Canellos GP (1992). “Chemotherapy of advanced Hodgkin's disease with MOPP, ABVD, or MOPP alternating with ABVD.”. N Engl J Med. 327 (21): 1478-84. PMID 1383821. 
  13. ^ Nogová L (2005). “Extended field radiotherapy, combined modality treatment or involved field radiotherapy for patients with stage IA lymphocyte-predominant Hodgkin's lymphoma: a retrospective analysis from the German Hodgkin Study Group (GHSG).”. Ann Oncol. 16 (10): 1683-1687. PMID 16093276. 
  14. ^ Diehl V (1999). “Clinical presentation, course, and prognostic factors in lymphocyte-predominant Hodgkin's disease and lymphocyte-rich classical Hodgkin's disease: report from the European Task Force on Lymphoma Project on Lymphocyte-Predominant Hodgkin's Disease.”. J Clin Oncol. 17 (3): 776-83. PMID 10071266. 
  15. ^ Aparicio J (1999). “ESHAP is an active regimen for relapsing Hodgkin's disease.”. Ann Oncol. 10 (5): 593-5. PMID 10416011. 
  16. ^ アドセトリス®点滴静注用50mg「タケダ」 薬剤添付文書 (PDF)”. 武田薬品工業株式会社 (2014年). 2014年3月28日閲覧。

関連項目[編集]