ヘキサメチレンテトラミン

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ヘキサメチレンテトラミン
識別情報
CAS登録番号 100-97-0
PubChem 4101
EINECS 202-905-8
MeSH Methenamine
特性
化学式 C6H12N4
モル質量 140.186 g/mol
密度 1.33 g/cm3 (20 °C)
沸点

280 °C

への溶解度 85.3 g/100 ml (25 °C)
危険性
発火点 410 °C (770 °F)
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ヘキサメチレンテトラミン (hexamethylenetetramine,HMT)は、4個の窒素原子がメチレンによってつながれた構造を持つ複素環化合物である。ヘキサミン (hexamine) あるいは1,3,5,7-テトラアザアダマンタンとも呼ばれる。無色で光沢のある結晶もしくは白色結晶性の粉末である。

利用[編集]

医療においては、膀胱炎尿路感染症腎盂腎炎の治療に用いられ、日新製薬山形県天童市)からヘキサミン静注液 2g「ニッシン」として販売されている[1]。これは、ヘキサミンが尿内でホルムアルデヒドに分解し、尿が防腐性を持つことを利用したものである。このため、腎不全の患者には禁忌である。また、尿をアルカリ性にする炭酸水素ナトリウムなども効果を減衰させるため禁忌である。

産業面では化学工業において樹脂合成ゴムなどを製造する際の硬化剤として用いられる。

また、生物学分類学生態学の研究現場では、脊椎動物甲殻類の標本をホルマリン固定で保存するときに、標本の脱灰を防止するために添加することがある。通常ホルマリンの原液にヘキサメチレンテトラミンを飽和させ、これを3~5%に希釈して使用する。ホルマリンに含まれるホルムアルデヒド酸化して徐々にギ酸に変化する。これらの動物の硬組織は石灰質(リン酸カルシウム炭酸カルシウム)によって硬化したもので、ギ酸によっても脱灰を生ずる。ヘキサメチレンテトラミンは水中でアンモニアとホルムアルデヒドとに分解するため、このアンモニアがギ酸を中和する。

食品用防腐保存剤としても用いられる。EUでは使用許可食品添加物リストのE番号保存料として掲載されており、チーズに添加されることがある。ロシアでも塩蔵のイクラにしばしば添加される。アメリカ合衆国オーストラリアニュージーランドでは食品添加物として承認されていない。日本でも承認されたことはないが、軍用に限っては旧陸軍でグルタミン酸ナトリウムとの混合物を米飯用防腐剤に利用していた。

RDX爆薬を製造する際の原料ともなる。1,3,5-トリオキサンと合わせて棒状に固めたものは、野外で使う固形燃料として用いられる(en:hexamine fuel tablet)。

法規制[編集]

日本[編集]

環境汚染と水道水汚染[編集]

ヘキサメチレンテトラミンの不適切な処理が問題になったことがある。2012年5月、埼玉県本庄市の電子材料メーカーが、 群馬県高崎市の産業廃棄物処理業者にヘキサメチレンテトラミン10.8 トンを含んだ廃液65.91 トンの処理を委託した。 この電子材料メーカーは廃液のサンプルを産業廃棄物処理業者に渡して「処理できる」との回答を得た上で処理の委託を行った[2]。しかし、この電子材料メーカーは廃液中にヘキサメチレンテトラミンが大量に含まれていることを明示的に伝えていなかったため、産業廃棄物処理業者はこのことを認識していなかった。結果として、産業廃棄物処理業者は処理を受託した廃液に対して中和処理こそ施したものの、ヘキサメチレンテトラミンを積極的に分解するような処理を行わずに利根川水系の烏川へと放流し[3]、少なくとも5 トン前後のヘキサメチレンテトラミンが河川水中へと断続的に流入し続けた。河川水中でヘキサメチレンテトラミンは比較的安定であるものの、ヘキサメチレンテトラミンを含む水に対して塩素消毒を行うとホルムアルデヒドアンモニアに分解する[4]。このうちアンモニアは有害物質ではあるものの、塩素消毒でクロラミンとなって除かれる。しかしホルムアルデヒドはそのようなわけにはゆかず、しかも発がん性のある物質の1つであり、日本ではホルムアルデヒドを一定濃度以上含んだ水を水道水として供給できないことが定められている。鳥川よりも下流の利根川や、利根川の派川である江戸川から取水している水道水を作るための浄水場では、塩素消毒によってヘキサメチレンテトラミンからホルムアルデヒドが発生し、一部の浄水場では日本における水道水の水質基準を超えるホルムアルデヒドが水道水中から検出されるに至った。やむを得ず一部の浄水場では取水が停止され、結果として約35万世帯が断水する事態となった。この事件について群馬県警察が捜査を行ったものの、捜査時点でヘキサメチレンテトラミンの放流を直接規制する法制が日本では整備されていないことから、立件はされず県庁による情勢指導に留められることとなった[5][6][7]

出典[編集]