プロテオバクテリア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
プロテオバクテリア
EscherichiaColi NIAID.jpg
分類
ドメ
イン
: 細菌 Bacteria
: プロテオバクテリア門
Proteobacteria
学名
Proteobacteria
Garrity et al. 2005

プロテオバクテリア門(Proteobacteria)は細菌の一つである。光栄養、化学栄養、独立栄養、従属栄養、好気呼吸、嫌気呼吸、発酵など様々な代謝様式をもつ菌種が含まれ、炭素・窒素固定に関わるものや、自然界の物質循環に関わる多くの自由生活性のものが含まれている。また、大腸菌サルモネラビブリオヘリコバクターなど多種多様な病原体が含まれている。また、この分類群は、他の細菌の分類群と同様に基本的にはrRNA配列によって定義されている。その多様性から、ギリシャ神話で姿を変幻自在に変える神プロテウスにちなんで名付けられた。

特徴[編集]

プロテオバクテリアは、主としてリポ多糖(LPS)から成る外膜を持ち、グラム陰性である。鞭毛によって動き回るものが多いが、不動性のものや、滑走性のものもある。滑走性のものとして、粘液細菌という集合して多細胞性の子実体を形成する独特な細菌が挙げられる。代謝型も多様である。ほとんどのものは絶対好気あるいは通性嫌気性従属栄養性細菌であるが、例外も多い。必ずしも近縁ではない多くの属が光合成を行うことができるが、それらは赤い色をしていることが多いので紅色細菌と呼ばれている。しかし、系統的には光栄養と化学栄養の菌種が混在しているので、それらをまとめて紅色細菌と呼ばれたこともある。

下位分類[編集]

プロテオバクテリアは非常に大きな分類群であり、綱から種まで全ての階級で細菌最大の多様性を持つ。rRNA配列に基づいて7つに大別されており、オリゴフレクサス綱以外はギリシャ文字のアルファからゼータで呼ばれている。これらはとして取り扱われ、ゼータ以外は、分類命名の公式雑誌であるInternational Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology (JSEM) に学名として正式に記載されている。

アルファプロテオバクテリア綱[編集]

アルファプロテオバクテリアには光合成性の属の大部分と、それ以外にC1化合物を代謝する属、植物や動物の共生体(リゾビウム目など)、危険な病原体であるリケッチアなどが含まれている。さらに真核細胞のミトコンドリアはこのグループの細菌に由来していると考えられている(細胞内共生説を参照)。酢酸菌アセトバクター属も含まれる。

ベータプロテオバクテリア綱[編集]

ベータプロテオバクテリアは好気性や通性の細菌からなり、それらはたいてい非常に多様な化合物を分解できるが、さらに化学合成無機栄養性(アンモニア酸化をするニトロソモナスなど)や、光合成性(RhodocyclusRubrivivax属)のものも含まれている。ベータプロテオバクテリアはアンモニアを酸化して植物にとって重要な亜硝酸を生じ、様々な植物の窒素固定に重要な役割を演じている。その多くは下水や土壌といった環境試料に見付かる。この綱の病原体としては淋病髄膜脳炎を起こすナイセリア科のものや、バークホルデリア目の百日咳菌などがある。

ガンマプロテオバクテリア綱[編集]

Vibrio cholerae

ガンマプロテオバクテリアは、腸内細菌科ビブリオ科シュードモナス科といった、医学的、科学的に重要な細菌群を含んでいる。非常に多くの重要な病原体がこの綱に所属しており、例えばサルモネラ(腸炎・腸チフス赤痢菌)、エルシニアペスト)、ビブリオコレラ腸炎ビブリオ)、緑膿菌(院内感染や嚢胞性線維症患者における肺感染症)、肺炎を発症させるレジオネラ肺炎桿菌などがある。大腸菌は腸内細菌科に含まれる。一部の光合成細菌(紅色硫黄細菌)も含まれている。また、リンの代わりにヒ素をゲノムに取り込むことができるとされたGFAJ-1株もこの綱のハロモナス類に属する。

デルタプロテオバクテリア綱[編集]

デルタプロテオバクテリアは好気性の群や、子実体を作る粘液細菌、そして既知の硫酸還元細菌デスルフォビブリオ, Desulfobacter, Desulfococcus, Desulfonemaなど)や硫黄還元細菌Desulfuromonasなど)の大部分とその他様々な生理条件(三価鉄還元性のGeobacterや栄養共生性のPelobacterSyntrophus)を好む偏性嫌気性の群からなる。

イプシロンプロテオバクテリア綱[編集]

Helicobacter pylori

イプシロンプロテオバクテリアには、Wolinellaヘリコバクター・ピロリカンピロバクターといった湾曲ないしらせん形をした種が含まれる。人や動物の消化管に棲息している共生体(牛のWolinella)ないし病原体(胃のヘリコバクターや十二指腸のカンピロバクター)、あるいは熱水噴出口に住む好熱菌として発見された。

ゼータプロテオバクテリア綱[編集]

Mariprofundus ferrooxydans PV-1 stalks TEM image.tif 記載種としては、深海に生息する鉄酸化細菌Mariprofundus ferrooxydansのみが知られている。

オリゴフレクサス綱[編集]

2014年にサハラ砂漠の砂礫から発見されたOligoflexus tunisiensisのみが記載されている。

プロテアバクテリアの系統[編集]

プロテアバクテリアの系統

アキドバクテリウム綱 Acidobacteria




デルタプロテオバクテリア綱英語版 Deltaproteobacteria
Desulfovibrio, Geobacter, Bdellovibrio, etc.




イプシロンプロテオバクテリア綱英語版 Epsilonproteobacteria
Helicobacter, Campylobacter, Wolinella, etc.




アルファプロテオバクテリア綱 Alphaproteobacteria
Brucella, Rhizobium, Agrobacterium, Caulobacter, Rickettsia, Wolbachia, etc.




ゼータプロテオバクテリア綱英語版 Zetaproteobacteria
Mariprofundus ferrooxydans, Mariprofundus ferrinatatus ,Mariprofundus aestuarium ,Mariprofundus micogutta ,Ghiorsea bivora




ガンマプロテオバクテリア綱 Gammaproteobacteria
Escherichia, Shigella, Salmonella, Yersinia, Buchnera, Haemophilus, Vibrio, Pseudomonas, etc.



ベータプロテオバクテリア綱 Betaproteobacteria
Bordetella, Ralstonia, Neisseria, Nitrosomonas, etc.







ARB living tree英語版, iTOL英語版, 「Bergey's Manual of Systematic Bacteriology英語版」などによるプロテアバクテリアの分類系統。

参考文献[編集]

  • Madigan, Michael; Martinko, John (editors) (2005). Brock Biology of Microorganisms (11th ed. ed.). Prentice Hall. ISBN 0-13-144329-1.