フルミスト

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フルミスト (FluMist) は鼻の中へ吹き付ける、噴霧型のインフルエンザワクチン (Live Attenuated Influenza Vaccine: LAIV) である。

低温馴化されたインフルエンザウイルスを直接鼻腔内に噴霧することで、主にアデノイド(鼻腔の奥のリンパ組織)でインフルエンザウイルスが増殖するが、低温でなければ、効果的に増殖できないため、増殖に手間取っている間に、免疫されるという仕組みである。

鼻腔内において局所免疫であるIgAを誘導することで、インフルエンザウイルスの侵入そのものを阻害できる。また、自然感染に近いため、CD8陽性T細胞を誘導[1]することにより、ウイルス株が違っていても、重症化を防げる可能性がある。

フルミストの特徴[編集]

FluMist Quadrivalentのインフルエンザ株は、

  1. 低温馴化 (CA: cold-adapted)
    摂氏25度で効率的に複製するウイルス株である。(この温度では、通常の野生株ウイルスの複製は制限される。)
  2. 温度感受性化 (TS: temperature-sensitive)
    多くの野生株ウイルスが効率的に複製できる温度(B型ウイルスにおいては、摂氏37度、A型ウイルスにおいては、39度)ではこのウイルスの複製が制限を受ける。
  3. 弱体化 (ATT: attenuated)
    ヒト-インフルエンザ感染モデルであるフェレットにおいて、古典的インフルエンザ様症状を発症させない。

という処理がなされています。

このウイルス株は、臨牀試験において、ウイルスが先祖がえりして病原性を回復する事はありませんでした。

低温馴化[編集]

弱体化ウイルスを選別し、培養する過程で徐々に温度を低下させ、摂氏25度で効率的に増殖出来る株を選別する。通常、低温馴化する過程で、病原性はさらに低下する。

再集合化[編集]

これらのウイルスは、マスターウィルス(MDV)と野生株ウイルスを低温状況下で一つの細胞に同時感染させることによって、各々の特徴を融合させる再集合化という手法で作成されています。

A型インフルエンザには、A/Ann Arbor/6/60-H2N2が、B型インフルエンザには、B/Ann Arbor/1/66というタイプのマスターウイルスが使用されています。

低温馴化(CA)、温度感受性(TS)および弱体化(ATT)の表現型の元である6つの内部遺伝子断片は、マスターウィルス(MDV)に由来します。また、2つの表面糖タンパク質、赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)をコード化する2つの遺伝子断片は、野生型のインフルエンザ・ウイルスに由来します。

したがって、FluMist Quadrivalentに含まれる4つのウィルスは、マスターウィルス(MDV)の複製特性および表現型特性を維持しつつ、野生株ウイルスの赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)を表現しています。

温度感受性(TS)および弱体化(ATT)の表現型については、

  1. A型のマスターウィルス(MDV)については、3つの異なる内部遺伝子断片中の少なくとも5つの遺伝部位が、
  2. B型のマスターウィルス(MDV)については、2つの異なる内部遺伝子断片中の少なくとも3つの遺伝部位が、

特性に関連しています。

そして両者において、3つの遺伝子断片中の5つの部位が低温馴化(CA)特性に寄与しています。

この再集合体ウイルス各々は、2013-2014年に流行した野生株ウイルスの赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)を表現しています。

特定病原体未感染卵(SPF)に、再集合体株を接種し、認可ウイルス複製目的で培養します。

不活化ワクチンとの違い[編集]

  • 局所免疫IgA誘導により、発症予防効果が高い。
  • 細胞性免疫を誘導することにより、ウイルス株が違っていても、発症を軽症化させる作用がある。
  • A型インフルエンザに対する、5歳未満児における発症予防効果は株一致で89.2%, 株不一致で79.2%[2]と驚異的である。(6か月~7歳では発症予防効果は83%[3]
  • ただし、株が一致していた場合では、成人においては、通常の不活化ワクチンの方が予防効果は高い。(不活化と生の両方を接種すれば、もっと良いかもしれないが...【無論株が不一致の場合は、フルミストの方が有効と思われる。】)CDCは6か月~18歳までの小児においてフルミストを推奨している[4]
  • 接種可能年齢は制限される(2歳~49歳まで)
  • 5歳未満の喘鳴既往児や、喘息患者への投与は推奨されない。
  • 免疫不全患者には接種禁忌である。
  • 免疫不全者をケアする立場にいる介護者も接種不適である。
  • 妊婦への接種も不適である。
  • 長期アスピリン服用中の未成年者
  • 生ワクチンであるため、理論上、インフルエンザ様症状(熱、咳など)を発症する可能性はある。(この場合抗インフルエンザ薬を服用すれば、速やかに治癒する。)※ただし、接種適応内の健常人で、接種したためにインフルエンザを発症した報告は1例もない。また、同居する未接種の健常人(老人、妊婦、新生児含)にインフルエンザを発症させた報告も1例もない。

禁忌[編集]

  • 5歳未満で喘息のある場合
  • 成人で1年以内に喘鳴を認めた場合
  • 妊娠中(授乳中は問題なし)
  • 心疾患、肺疾患・喘息、肝疾患、糖尿病、貧血、神経系疾患、免疫不全などの慢性疾患を持つ場合
  • 造血幹細胞移植など、重度の免疫不全の方と接触する場合
  • 小児期や思春期で長期アスピリン内服中の場合
  • 重度の卵白アレルギー
  • インフルエンザワクチン接種後にギラン・バレー症候群になった場合(原則)

出典[編集]

外部リンク[編集]