ビクラムヨガ

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ビクラムヨガビクラムヨーガ(BIKRAM YOGA) は、ビクラム・チョードリー英語版が現代ハタ・ヨーガの技術をアレンジして考案した現代ヨーガの一種である。温度約40℃以上・湿度40%の室内環境、26種類のポーズ(アーサナ)、2つの呼吸法を90分間のグループレッスンで行う。1970年代にアメリカで行われており、ダイエットストレス解消、心身の強化に効果があると主張されている。ビクラムヨガの名では、ビクラム・チョードリーのビクラムス・ヨガ・カレッジ・オブ・インディア社(bikram's Yoga College of India)とその下部組織による9週間のレッスンを受けて認定された教師によりレッスンが行われる。[1] [2]ビクラム・チョードリーは、ヨーガがアメリカ西海岸のサブカルチャーのムーブメントに過ぎなかったころにアメリカに教室を立ち上げ、現在ではアメリカ全土、東京、ブエノスアイレス、バンコクなど全世界に及ぶ巨大ビジネスを展開しており、著名人の愛好者も多い。[3]日本では、株式会社ワークアウトワールド・ジャパンが独占的なライセンス契約を締結し、2006年に銀座に1号店をオープンし国内でのチェーン展開を積極的に進めたが、2008年に倒産した[4][5]。ビクラム・チョードリーはビクラムヨガの方法の著作権を主張しているが、伝統あるヨーガの方法を著作権で保護することはできないため、法的には認められていない。[6]また2008年に日本で、ホットヨーガはビグラムヨガのことであるとして「HOT YOGA」、「ホットヨガ」の商標登録を試みたが、認められなかった。[7]

心臓疾患高血圧、その他健康上の懸念のある人、高温多湿に耐えられない人には負荷が大きいため推奨されておらず、妊婦が行う際にも注意を要するとされる[8]。ピラクムヨガは発汗率が低く、水分補給をし過ぎると体格の小さい女性は低ナトリウム血症に陥る危険性が大きいと指摘されている。[9]

概説[編集]

インドカルカッタ生まれのビクラム・チョードリーが創始した。 BIKRAM YOGA&Co.(本拠地:ロサンゼルス)の下部組織ビクラムヨガジャパンは、ヨーガレッスンでのストーブの使用は、ビクラム・チョードリーが日本でレッスンを行った際に身体を動かす為にストーブを使用したのが始まりであるとしている。[10](ただし、英語の情報では、ビクラムヨガが日本で初めて考案されたという記述は見られない)筋肉が動かしやすい高温多湿の環境で行うこと、2つの呼吸法、26種類のハタ・ヨーガのポーズを組み合わせが特徴で、今でいうホットヨーガの一種である。ビクラム・チョードリーは、これが唯一正しいヨーガの方法であると主張している[11]。普及団体では、ビクラム・チョードリーが日本でホットヨーガを誕生させた元祖であり、開祖、創案者であるとされる。普及団体は、いまなお世界中にスタジオが増えているとしている。[2] [12] [13] [14]

主張される効果[編集]

普及団体は、ビクラムヨガは独自のアーサナの組み合わせで、全身の筋肉関節を伸ばし、整えるとしており、とくに背骨に関しての調整はすばらしく、姿勢がよくなると主張している。ヨーガは内臓のマッサージも行うため、内臓がマッサージされ、身体の内側から健康になると主張している。 呼吸法は普段眠ってしまっている肺の機能を目覚ませ呼吸を深くすると主張している。呼吸がしっかりとできるようになる事で日常的にも落ち着きが生まれ、 常に腹筋を意識する事で胸が広がり、思考が明るく前向きにもなると主張している。ダイエットに効果があり、大量の汗が身体の老廃物を排出し、細胞ひとつひとつがキレイになると主張している。(「細胞がキレイになる」という表現が、具体的に何を意味しているかは不明である。) 呼吸をしながら、身体を丁寧に動かすことで集中力もつくと主張している。そして90分のレッスンを終えた達成感、爽快感は自信を深めると主張している。[15]

一方、高温多湿の環境でヨーガ行うことに、特に利点は認められないという研究結果もある。汗をかく量とトレーニングの質は相関関係にあると感じられがちであるが、そうではなく、普通の環境で行うヨーガに比べてカロリー消費量が多いわけではないと指摘されている。[16]

温度40度・湿度40%で行う理由[編集]

普及団体が主張する、温度40度・湿度40%でヨーガ行う理由である。

  • オーバーヒート(熱中症のことか?)から身体を守る。
  • より深い筋肉のストレッチを可能にする。
  • 身体を解毒(デトックス)する、毒素(具体的に何を指すかは不明)を外に出すため。
  • 毛穴を開くため。
  • より良い心臓血管をつくる為に脈動を速める。循環系を強化し、血液をさらさらにする。
  • 筋肉組織の再編成に最適の状態に置く事によって、筋肉組織を強化する。

26のポーズ[編集]

ビクラムヨガの90分間のクラスで行われるのは、ビクラム・チョードリーが選定した26種類のハタ・ヨーガのポーズと2つの呼吸法である。ビクラム・チョードリーは、世界60カ国でこのシークエンスの著作権を保有していると主張しており、ビクラム・チョードリーと彼が設立したビクラムス・ヨガ・カレッジ・オブ・インディア社によって認められた指導者だけにビクラムヨガを指導する資格を与えている。[17]

緑色の使用禁止[編集]

ビクラム・チョードリーの師ビシュヌ・ゴーシュが、身近な人々が緑色のものを身につけているときに何度も不幸な目に合ったことから、ビクラム・チョードリーは師に配慮し、緑色のものを身辺から排除しているという。教室内での緑色の使用は禁止されている。[10]

著作権・商標の争議[編集]

ビクラム・チョードリーはビクラムヨガの方法の著作権を主張しており、著作権を侵害しているとして他のヨーガスタジオを提訴したが、逆にヨーガに著作権はないとして提訴されている。訴訟相手にピラクムヨガという名称は使用しないよう要求し、2005年に和解した。[6]アメリカ著作権局英語版は、ビクラム・チョードリーが言うようにヨーガのメソッドを著作権で保護することはできないとしており、法的には教えることも行うことも自由である。[6][18]2015年10月には、ビクラム・チョードリーがヨーガのポーズ(アーサナ)や呼吸法の著作権を主張した訴訟において、アメリカ第9連邦巡回区控訴裁判所は著作権による保護を否定した。[19]

日本では2008年に、ビクラム・チョードリーが代表である「ビクラムズ・ヨガ・カレッジ・オブ・インディア」が、日本で「HOT YOGA」、「ホットヨガ」の商標登録を試みた。その主張は、ビクラム・チョードリーがインドヨーガの普及のために使用している標章の一つが「HOT YOGA」であり、「HOT YOGA」、「ホットヨガ」はビクラムヨガの代名詞として世界中に知れ渡っているというものであった。しかし日本国特許庁は、「本件商標の出願時点において、我が国において、本件商標が、請求人ないし、その代表者の指導するヨガの商標として、我が国需要者にとって、周知・著名であったとする事実は全く存在しない。」と判断した。そして、請求人は「ビクラム・チョードリーが世界的に著名なヨーギーであり、かつ、『HOT YOGA』は、ビクラム・チョードリーが指導するヨガとして、米国を始め海外で広く知られている著名な標章であることを立証する」と述べているが、「各号証は、何らそのような事実を立証するものではない」として請求は無効となった。[7]

人物[編集]

ビクラム・チョードリー[編集]

ビクラム・チョードリー

1946年インドカルカッタ生まれ。3歳のときにヨーガを始め、5歳の時に彼のグルであるビシュヌ・ゴーシュ(パラマハンサ・ヨガナンダの弟で、ロサンゼルスの自己実現フェローシップの創始者)のBishnu Ghosh's College of Physical Educationに入学。毎日少なくとも4〜6時間心身を鍛練し学んだとしている。 13歳の時から3年連続でNational India Yoga championshipとなり、無敗のまま引退。17歳の時、ウェイトリフティングの事故で膝に怪我を負い、ヨーロッパの医師たちに二度と歩けるようにはならないと宣告されたとしている。膝を治せるのはゴーシュしかいないと考えゴーシュの学校に戻り、ヨーガに励む事6ヵ月後、膝を完全に回復させる事に成功したとしている。その後ゴーシュに支援されインドでいくつかの学校を開校し、ビクラムヨガのメソッドを開発した。普及団体は、存命人物では世界で最も尊敬されているヨーガの達人であると述べている。黒のビキニパンツ一丁に宝石をちりばめたロレックス、髪を後ろに引っ詰めて縛った髪型がトレードマークという特異なスタイルで知られ、ヨーガ指導者としてカリスマ性があるといわれる。ビクラムヨガは、レディー・ガガジョージ・クルーニーが愛好していることでも知られる。ビクラム・チョードリーは数々の高級車とビバリーヒルズに豪邸を持ち、ヨーガ界の「バッドボーイ」とも呼ばれた[3]。アメリカを中心に多数のヨーガスタジオを展開し、ヨーガ界に君臨しており[20]2006年には、世界中に1650のスタジオを持っていた[21]、2012年時点で、アメリカで330、世界中に600のスタジオがある[22]

一方、ゲイや黒人の生徒に対し公に差別的発言をしたり、ハーバード大学に自分の名前を冠したビルを建設予定であるというすぐわかるような嘘をつくなど、問題行動も報道されている[3]。また、女性レッスン生に性的暴行セクハラをしたとして6件の民事訴訟を起こされている。訴えた女性たちの代理人のメアリー・セイ弁護士は「すべての申し立てに共通するのが、信頼を裏切られたということだ」と述べている。これに対しチョードリーは、罪は犯していないと主張しており、2015年2月27日時点では刑事告訴はされていない。[23]2015年4月にはワシントンポストAfter sex scandal, a Bikram yogi asks whether it’s wise to put so much faith in a guru(セックススキャンダルをかんがみて、ビクラム・ヨーギーはグルに過度な信頼を置くことは賢明かどうか問いかけている) という記事が掲載され、商業化された現代のヨーガにおいてグル(指導者)を無条件に信頼する(妄信)することの是非が問いかけられ、ヨーガのコミュニティで議論を呼んだ。[24][3]ビクラム・チョードリーの元弁護士は、ひわいな言葉などによるセクハラ行為を受けたほか、他のセクハラの調査を始めようとしたところ不当解雇されたとして訴え、2016年1月に勝訴、ロサンゼルスの裁判所は、ビクラム・チョードリーにおよそ740万ドル(日本円で約8億9,000万円)の賠償金を支払うよう命じた[25]

ラジャシュリー・チョードリー[編集]

ビクラム・チョードリーの妻、ヨーガ指導者。1965年インドカルカッタ生まれ、4歳でヨーガを始める。 1979年から1983年のNational India Yoga championshipで5回連続優勝。Mahila Yoga Byam Kendraと Gosh's College of Physical Education and Yoga Training Instituteでヨーガを学ぶ。ラジャシュリー・チョードリーはスポーツとしてのヨーガを促進した。健康だけでなく、情緒面、スピリチュアリティの側面に特に焦点をあてているとしている。ラジャシュリー・チョードリーは夫ビクラム・チョードリーを助け、10年以上アメリカヨーガを教えた後に、ビクラムヨガ教師のトレーニングプログラムを作成。そのほか、妊婦向けヨーガクラスもおこなっている。 また、ヨーガオリンピック種目にするという目標実現のため、アメリカヨーガ連盟(USA Yoga Federation)という非営利団体を設立。多くの慈善活動にも関与している 。[26]

普及団体[編集]

現在日本国内に、ビクラム・チョードリーのスタジオが町田と南越谷にある。それ以外の店舗はフランチャイズ・スタジオとして運営している。[27]

ワークアウトワールド・ジャパン[編集]

株式会社ワークアウトワールド・ジャパンは、アメリカのビクラムス・ヨガ・カレッジ・オブ・インディア社と日本での独占的なライセンス契約を締結し、2006年に銀座に1号店をオープンし、以後国内でのチェーン展開を積極的に進めた。しかし2008年9月に東京地裁へ自己破産を申請し破産手続き開始決定を受けた。負債金額は32億円。[4]

ビクラムヨガジャパン[編集]

ビクラムヨガジャパンは、ビクラム・チョードリーが代表取締役会長の日本での本部である。[28]日本国内に、ビクラム・チョードリーのスタジオが町田と南越谷にある。それ以外の店舗はフランチャイズ・スタジオとして運営している。[29]

関連文献[編集]

  • Bikram Choudhury: Bikram's Beginning Yoga Class. Los Angeles 1978.
    • 初版では東京大学医学部で医学研究を行ったと書かれているが、第二版以降医学研究への言及はすべて削除されている。[30]
  • Bikram Choudhury: The Guru Behind Hot Yoga Shows the Way to Radiant Health and Personal Fulfillment. Harper Collins Publishers, 2007.
  • ビクラム・チョードリー 『ヨーガ教本―安心して実習できるヨーガ入門』 紀伊国屋書店、1980年
  • ビクラム・チョードリー 『ビクラムヨガ 元祖ホットヨガ完全習得ガイド』 大胡 香織、ボニー・ジョーンズ・レイノルズ、加野敬子訳、ガイアブックス、2014年

脚注・出典[編集]

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  1. ^ details.com. “The Overheated, Oversexed Cult of Bikram Choudhury(ビクラム・チョードリーの、オーバーヒートした、性的すぎるカルト)”. 2011年2月1日閲覧。
  2. ^ a b ビクラム・チョードリー 『ヨーガ教本―安心して実習できるヨーガ入門』 紀伊国屋書店、1980年
  3. ^ a b c d GQ JAPAN. “ホットヨガ創始者のご乱心!?──ヨガ教室の元生徒がセクハラ疑惑で次々と提訴”. 2015年10月10日閲覧。
  4. ^ a b TEIKOKU NEWS ONLINE. “倒産・動向記事”. 2008年9月30日閲覧。
  5. ^ エン転職. “ヨガスタジオのマネージャー候補”. 2006年2月10日閲覧。
  6. ^ a b c About.com Health. “Bikram Yoga and Hot Yoga - What's the Difference?(ビクラムヨガとホットヨーガ、何が違う?)”. 2015年10月9日閲覧。
  7. ^ a b 商標審決データベース. “無効の審決|無効2006-89146”. 2015年10月13日閲覧。
  8. ^ Bikram 101 yoga.com
  9. ^ 「正しい給水方法は? 低ナトリウム血症にご用心」 医学ライター・井手ゆきえ ダイヤモンドオンライン 2015年7月31日
  10. ^ a b ビクラムヨガジャパン. “ビクラムヨガについて”. 2012年4月5日閲覧。
  11. ^ the yoga blog. “Random Bikram Hilarity: A Collection of Quotes and Such”. 2012年4月5日閲覧。
  12. ^ Bikram’s Beginning Yoga Class. “Bikram Choudhury Bikram Yoga”. 2010年5月20日閲覧。
  13. ^ Bikram’s Beginning Yoga Class. “Revised and Updated Bikram Choudhury(2008/10)”. 2010年11月1日閲覧。
  14. ^ about.com. “Bikram Yoga - Hot Yoga”. 2013年3月28日閲覧。
  15. ^ bikramyoga.com. “About Bikram Yoga”. 2011年4月1日閲覧。
  16. ^ Patricia Reaney; Bernard Orr (2013年10月5日). “Hot Yoga: Experts Say It's Safe, But Does It Really Have Added Benefits?(ホットヨーガ:専門家は安全だというが、しかし実際のところヨーガにプラスされる利点はあるのだろか?)”. Huffington Post. 2015年10月10日閲覧。
  17. ^ bikramyoga.com. “Bikram yoga 26 postures”. 2012年4月2日閲覧。
  18. ^ Rebecca Moss (2013年10月5日). “The Hot Yoga War(ホットヨーガ戦争)”. Voice. 2015年10月10日閲覧。
  19. ^ Law Blog - The Wall Street Journal Online. “Court: Yoga Guru Bikram Choudhury Stretched Copyright Law Too Far”. 2015年10月8日閲覧。
  20. ^ Bikram Choudhury bikramyoga.com 2012年4月1日閲覧
  21. ^ Shakespeare, Jocasta (2006年6月10日). “Bend it like Bikram”. The Guardian. 2012年4月4日閲覧。
  22. ^ Moss, Rebecca (2012年7月8日). “The Hot Yoga War”. The Village Voice. 2014年4月4日閲覧。
  23. ^ ホットヨガのビクラム・チョードリー氏、レイプ疑惑で提訴 CNN.co.jp 2015.02.27
  24. ^ After sex scandal, a Bikram yogi asks whether it’s wise to put so much faith in a guru Benjamin Shalva The Washington Post 2015年4月9日
  25. ^ ホットヨガのカリスマ、セクハラでおよそ9億円の賠償命令受ける”. FNN (2016年1月29日). 2016年2月2日閲覧。
  26. ^ Official Rajashree Choudhury Bio bikramyoga.com 2012年4月1日閲覧
  27. ^ bikramyoga-japan.com. “ビクラムヨガスタジオについて”. 2012年4月2日閲覧。
  28. ^ bikramyoga-japan.com. “会社情報”. 2012年4月2日閲覧。
  29. ^ bikramyoga-japan.com. “ビクラムヨガスタジオについて”. 2012年4月2日閲覧。
  30. ^ Bikram's Beginning Yoga Class (Second Edition)

外部リンク[編集]