アーサナ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

アーサナデーヴァナーガリー:आसन, āsana)とは、ヨーガ座法体位のこと。

概要[編集]

古典ヨーガについて書かれた、ヨーガ学派の根本経典である『ヨーガ・スートラ』の第2章46-48節に、アーサナ(坐法)についての記述があるが、それはあくまでも瞑想のための安定した、快適な、緊張をゆるめる座り方を推奨している記述に過ぎない。アーサナがヨーガにおける100種ほどの様々な体位を意味するようになるのは、「ハタ・ヨーガ」以降である[1]

種類[編集]

ハタ・ヨーガの教典である『ハタ・ヨーガ・プラディーピカー』の第1章では、計84種のアーサナ(体位)があるとされ、主なものとして、以下のアーサナが紹介されている。

(※「~・アーサナ」という名称の日本語訳は、「~坐(座)」「~体位」「~のポーズ」といった様々な訳し方があるが、汎用性を考慮し、以下では「~のアーサナ」で統一する。)

  • スヴァスティカ・アーサナ(吉祥のアーサナ)
  • ゴームカ・アーサナ(牛面のアーサナ)
  • ヴィーラ・アーサナ(英雄のアーサナ)
  • クールマ・アーサナ(亀のアーサナ)
  • クックタ・アーサナ(鶏のアーサナ)
  • ウッターナ・クールマ・アーサナ(上向きの亀のアーサナ)
  • ダヌス・アーサナ(弓のアーサナ)
  • マッチェンドラ・アーサナ(聖者マッチェンドラのアーサナ)
    アルダ・マッチェンドラ・アーサナ(半-))
  • パシチマターナ・アーサナ(背中をのばすアーサナ)
  • マユーラ・アーサナ(孔雀のアーサナ)
  • シャヴァ・アーサナ(屍のアーサナ)
  • シッダ・アーサナ(達人のアーサナ) --- ヴァジュラ・アーサナ(金剛のアーサナ)、ムクタ・アーサナ(解脱者のアーサナ)、グプタ・アーサナとも
  • パドマ・アーサナ(蓮華のアーサナ)
    バッダ・パドマ・アーサナ(締めつけた-))
  • シンハ・アーサナ(獅子のアーサナ)
  • バドラ・アーサナ --- ゴーラクシャ・アーサナ(牛飼いのアーサナ)とも

現代[編集]

伊藤雅之は、現在実践されているアーサナの大半は、19世紀後半から20世紀前半に西洋で発達した身体文化(キリスト教を伝道するYMCAやイギリス陸軍によってインドに輸入された)を強調する運動に由来すると述べている[2]。現代のアーサナの起源は、この西洋身体文化がインド伝統武術と融合し、インド独自の体系として、伝統的な「ハタ・ヨーガ」の名でまとめられたものであると述べており、現在のアーサナと、『ヨーガ・スートラ』に代表される伝統的な古典ヨーガや中世以降発展した(本来の)ハタ・ヨーガとのつながりは極めて弱いと指摘している[2]。1920~30年代に、「現代ヨーガの父」と呼ばれるティルマライ・クリシュナマチャーリヤ英語版(1888年 - 1989年)が、西洋の身体文化から発生した多様な体操法を自らのヨーガ・クラスに取り入れ、それをインド伝統のハタ・ヨーガの技法として確立し、思想面にヴィヴェーカーナンダなどのヒンドゥー復興運動の思想と『ヨーガ・スートラ』を援用した。クリシュナマチャーリヤによって、西洋式体操がヨーガに仕立て上げられたのである[2]。クリシュナマチャーリヤは1924年から死去する1989年までヨーガを指導した。アーサナを中心とした現代のヨーガは、直接または間接的にクリシュナマチャーリヤの影響を受けている。

このヨーガ体操は、アメリカのカウンターカルチャーやニューエイジにおいて、「スピリチュアルな実践」と解釈され、これに呼応してインドでもヨーガがスピリチュアルな実践であることを強調するようになった[2]。現代ヨーガへの影響の大きいアイアンガー・ヨーガアシュタンガ・ヨーガは、欧米人との接触以降はじめてスピリチュアルな意味付けがなされており、現代ヨーガの指導者側だけでなく、需要者側も、会話や雑誌の体験談、ブログなどを通してスピリチュアリティの創出に積極的に関与している[2]

脚注・出典[編集]

  1. ^ 佐保田鶴治『ヨーガ根本経典』平河出版社 p.110
  2. ^ a b c d e 伊藤雅之 「現代ヨーガの系譜 : スピリチュアリティ文化との融合に着目して」 宗教研究 84(4), 1255-1256, 2011-03-30 日本宗教学会

関連項目[編集]