ヒルズ・ハブ・アイズ
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| ヒルズ・ハブ・アイズ | |
|---|---|
| The Hills Have Eyes | |
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| |
| 監督 | アレクサンドル・アジャ |
| 脚本 |
アレクサンドル・アジャ グレゴリー・ルヴァスール |
| 原作 |
ウェス・クレイヴン 『サランドラ』 |
| 製作 |
ウェス・クレイヴン ピーター・ロック マリアンヌ・マッダレーナ |
| 製作総指揮 | フランク・ヒルデブランド |
| 出演者 |
アーロン・スタンフォード キャスリーン・クインラン ヴィネッサ・ショウ エミリー・デ・レイヴィン |
| 音楽 | トムアンドアンディ |
| 撮影 | マキシム・アレクサンドル |
| 編集 | バクスター |
| 製作会社 |
クレイヴン/マッダレーナ・フィルムズ デューン・エンターテインメント |
| 配給 |
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| 公開 |
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| 上映時間 | 107分 |
| 製作国 |
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| 言語 | 英語 |
| 製作費 | $15,000,000[1] |
| 興行収入 | $69,623,713[1] |
| 前作 | ヒルズ・ハブ・アイズ2 |
『ヒルズ・ハブ・アイズ』(原題:The Hills Have Eyes)は、2006年公開のアメリカのホラー映画。
本作は1977年にウェス・クレイヴンが監督した『サランドラ』のリメイクで、スラッシャー映画『ハイテンション』(2003年)をヒットさせたアレクサンドル・アジャ監督のハリウッド・デビュー作でもある。
概要
当初はオリジナル版と同じ砂漠で撮影する予定であったが、すでに分譲住宅開発地区となって、多くのマンションが建設されていたために断念。様々な砂漠地帯を検討した結果、撮影場所にモロッコが選ばれた[2]。アメリカ劇場公開時にはNC-17(成人指定)を回避するため、暴力描写が約2分間カットされ、31ヵ所が変更された。国際配給は、この編集版で公開されている[2][3]。後に発売されたDVDではノーカットとなっている[3]。
ストーリー
刑事を引退した “ビッグ・ボブ”・カーターの一家は銀婚式の家族旅行のため、キャンピングカーでサンディエゴに向かっていた。車にはボブの妻エセルと彼らの子ども、リン、ブレンダ姉妹と末っ子のボビーに、リンの夫ダグと赤子のキャサリンが同乗している。ニューメキシコの砂漠を通る時に立ち寄った個人経営のガソリンスタンド店主から、地図にない近道を教えられるが、トレーラーを牽引しているボブの車はスパイクの罠にかかってパンクする。ボブは徒歩でガソリンスタンドに救助を求めに向かい、ダグも助けを呼ぼうと道路沿いの道を目指して歩き出す。残された家族がトレーラー周囲でくつろいでいると、一家が飼っている2頭のジャーマンシェパードの片方ビューティーが岩場に走って行ってしまう。後を追ったボビーは、腹を裂かれて死んでいるビューティーを発見してショックを受ける。逃げ帰る途中で丘から落ちて気絶したボビーを、優しいミュータントの少女ルビーが興味深く覗き込み、狂暴な兄のリザードから守っていた。気を失っていたボビーは姉のブレンダが発見して車に連れ戻される。
道路があると思われる方角へ歩いていたダグは、道の終わりに巨大なクレーターと、その底に並ぶ大量の廃車を見つけた。道は行き止まりだったのだ。陽が落ちた頃にようやくボブはガソリンスタンドに辿り着くが、店主の姿が見当たらない。ボブは行方不明者から奪ったらしき鞄と切り取られた耳を見て異変を察知。壁に貼られた新聞記事で、この砂漠が軍の核実験場で、被爆した炭鉱夫とその子孫が突然変異を起こしたこと、この一帯で行方不明者が続出していることを知る。罠に嵌められたことに気付いたボブがトイレに閉じこもっていた店主を見つけると、彼は贖罪らしきことを口にして銃で自殺をする。スタンドにあった車に乗り込もうとしたボブは、車内で待ち伏せしていたミュータントのパパ・ジュピターに捕まる。
カーター一家の車を丘の上から見張っていたミュータントのゴーグルが、家族の飼い犬ビーストに嚙み殺された深夜、ボビーはビューティーが殺されたことをダグとリンに打ち明け、この周辺に何者かが潜んでいると話す。プルートとリザードはトレーラーの襲撃に向かい、木に縛りつけたボブに火を点けて家族たちの注意を引き付けているうちに、リザードはトレーラー内に残されたブレンダをレイプする。エセルとリンがトレーラーに戻ってくると、既にブレンダを犯し尽くしたリザードたちが車内で待ち伏せていた。リンとエセルはリザードに撃ち殺され、ミュータントたちはボブの焼死体と赤子のキャサリンを持ち去って行った。翌朝、ビーストを連れたダグは、遺体を引きずった血痕を辿って一味の潜伏している鉱山に向かう。鉱山付近にある核実験用の村に来たダグは、巨大な頭を持つ男ビッグ・ブレインに出会い、核実験のために鉱山に隠れた人々がミュータントになったことを知る。その家にプルートが現われて戦闘になり、2本の指を切断されながらもダグはプルートを倒し、家の外にいた別のミュータント、シストを殺す。ビッグ・ブレインは無線機でキャサリンを始末するよう指令を出した直後、ビーストに噛み殺された。
リザードは指示通りにキャサリンを殺そうとするが、赤子はルビーが抱いて逃げていた。その頃、トレーラーに残っているボビーとブレンダは、ガスとマッチを使った点火式の罠を仕掛け、ミュータントの襲来に備えていた。ジュピターがブレンダに襲いかかってきた時、姉弟はトレーラーから脱出し、トラップが発動した車は大爆発する。赤子を守るために逃走したルビーにダグが追いついた時、リザードが彼に襲いかかり、激しい格闘になるが、辛くもダグは勝利した。ダグに赤子を手渡そうとしたルビーは、立ち上がってショットガンを構えるリザードに気が付き、彼を崖から突き落として共に転落死した。ブレンダは、爆発に巻き込まれても絶命していなかったジュピターをつるはしで殺した後、ビーストとキャサリンを連れ帰った傷だらけのダグを迎える。しかし生き延びて抱き合う3人の様子を、別のミュータントが双眼鏡で見ていた。
キャスト
| 役名 | 俳優 | 日本語吹き替え[5] |
|---|---|---|
| ダグ・ブコウスキー | アーロン・スタンフォード[4] | 桐本琢也 |
| エセル・カーター | キャスリーン・クインラン[4] | 西宏子 |
| ブレンダ・カーター | エミリー・デ・レイヴィン[4] | 武田華 |
| ボビー・カーター | ダン・バード[4] | 武藤正史 |
| リン・カーター・ブコウスキー | ヴィネッサ・ショウ[4] | |
| “ビッグ・ボブ”・カーター | テッド・レヴィン[4] | |
| ガソリンスタンドの男 | トム・バウアー[4] | |
| パパ・ジュピター | ビリー・ドラゴ[4] | |
| ビッグ・ブレイン | デズモンド・アスキュー[4] | |
| ゴーグル | エズラ・バジントン[6] | |
| プルート | マイケル・ベイリー・スミス[6] | |
| リザード | ロバート・ジョイ[4] | |
| シスト | グレゴリー・ニコテロ[7] | |
| ルビー | ラウラ・オルティス[6] | |
スタッフ
- 監督 - アレクサンドル・アジャ[6]
- 製作 - ウェス・クレイヴン[6]、ピーター・ロック[6]、マリアンヌ・マッダレーナ[6]
- 製作総指揮 - フランク・ヒルデブランド[4]
- 脚本 - アレクサンドル・アジャ[6]、グレゴリー・ルヴァスール[6]
- 撮影 - マキシム・アレクサンドル[6]
- 編集 - バクスター[6]
- 視覚効果スーパーバイザー - ジェイミソン・ゴーイ[6]
- 特殊メイク・デザイン - グレゴリー・ニコテロ [6]、ハワード・バーガー[6]
- 特殊メイク・アーティスト - ケヴィン・ワスナー[7]、スコット・パットン[7]
- 特殊メイク - KNB EFX[8]
- 美術デザイン - ジョセフ・C・ネメック[6]
- 衣装デザイン - ダニー・グリッカー[6]
- 音楽 - トムアンドアンディ[6]
- 音楽監修 - デビッド・フランコ[4]
企画

ウェス・クレイヴンが本作のオリジナル版『サランドラ』の脚本を書くきっかけになったのは、16世紀のスコットランドで悪名を馳せた殺人鬼ソニー・ビーンの一家の伝承だった。アグネス・ダグラスという名の女性と25年間も人里離れた洞窟に住んでいたビーンは、6人の娘、8人の息子、14人の孫、さらに18人の曽孫を持つ総勢48人の大家族だったが、孫たちはビーン夫妻の子ども同士の近親相姦で生まれた子だったと言われている。数えきれないほどの旅行者を殺害し、その人肉を喰っていた一家を処刑すべく、スコットランド王ジェームズ1世は400人の兵士と猟犬を、ビーン一家の棲む洞窟に差し向けた。このエピソードから着想を得たクレイヴンは、遥かに原始的で残忍なミュータント一家が旅行者を捕えて食べる話を思いついたのだ[9]:4。
『サランドラ』の公開から20数年後、クラシック・ホラーのリメイク映画『テキサス・チェーンソー』(2003年)が成功を収め、引き続き『悪魔の棲む家』(2005年)の製作も発表されていたため、クレイヴンと製作パートナーは『サランドラ』を現代の映像技術で再映画化する案を検討し始めた。極めて低予算で製作したオリジナル版『サランドラ』は、掘り下げたいと思っていた要素を予算の都合で割愛せざるを得なかった。そのためリメイク版では格段に大きな予算規模と充分なスケジュール、撮影にも時間をかけようと思った[9]:5。
『サランドラ』の物語を現代の観客に届けるには、このプロジェクトに新しい視点を持ち込んでくれる新進気鋭の映画監督が必要だとクレイヴンが考えていた頃、彼の長年の製作パートナー マリアンヌ・マッダレーナは、フランスのスラッシャー映画『ハイテンション』を観て驚いた。監督のアレクサンドル・アジャと脚本家グレゴリー・ルヴァスールの手腕に感心したマッダレーナは、クレイヴンとプロデューサーのピーター・ロックに電話をかけ、すぐ『ハイテンション』を観るようにと伝えた。クレイヴン、ロックを始めとした製作チームは、低予算のインディペンデント映画でありながら、手垢のついたジャンルに挑発的なアプローチをしたアジャとルヴァスールの映画に感銘を受け、彼らこそ今回のリメイク企画を任せられる人物だと確信した[9]:5。
製作

アジャは当時27歳という若さだったが、映画監督の父親アレクサンドル・アルカディの助手に就いて、世界各地のロケで映画製作の基礎を積んでいた。グレゴリー・ルヴァスールはアジャが10代の頃に出会った長年のパートナーだった。アジャとルヴァスールは、『サランドラ』の現代版リメイクの提案に即座に情熱をもって応えた。「ウェス・クレイヴンは、僕らにとって子どもの頃からのヒーローでした」とアジャは喜びを語る。「ウェスの映画を全部観て育ちましたし、そもそもグレゴリー(ルヴァスール)と知り合ったきっかけの映画は『ショッカー』だったんですよ。『ハイテンション』を作るにあたっては、『鮮血の美学』からもインスピレーションを得ました。ですから僕たちが愛してやまない映画のひとつを、オリジナル版の作り手から監修を受けて自由に展開させるなんて、こんなに嬉しいことはありません」[9]:6。
2003年11月にリメイクに向けての話し合いを持ったアジャは、プロデューサーのクレイヴンから「リメイクする価値を感じられる新鮮味が必要だ。独創性を発揮してくれ」と言葉をかけられた。そこでアジャとルヴァスールは、マッダレーナに“軍の核実験に使われた町”というアイデアを出した。核の影響で変異した人々の復讐という案をクレイヴンも気に入ってくれたことで、アジャたちはパリに戻って脚本作りに取りかかった[10]。
核実験によって荒廃しきった砂漠を舞台にするため、緊張感を抱かせる映像美を求めたアジャは、『ハイテンション』で組んでいた撮影監督マキシム・アレクサンドルに声をかけた。「マキシムとは、言葉を尽くさずとも通じ合える関係を築いています。彼の撮影は100%信頼できますし、常に期待以上の仕事をしてくれると分かっていますからね」とアジャは語る[9]:19。
2004年当時はクレイヴンの監督作『スクリーム』、(1996年)『スクリーム2』(1997年)を配給したディメンション・フィルムズの共同会長ボブ・ワインスタインが『ヒルズ・ハブ・アイズ』のリメイク獲得に意欲的だったが[11]、後にディメンション・フィルムの事業立て直しに伴って、フォックス・サーチライト・ピクチャーズの副社長ローレンス・グレイが『ヒルズ・ハブ・アイズ』のリメイク権を買い取った[12]。
スタッフは本作に登場するミュータントたちの不気味な外見を作るためのリサーチを行なった。アジャにとって、科学的な考証に裏付けされたリアリティは、この映画を成功させるための重要な鍵だった。「ミュータントに関するアイデアは、核実験が行なわれた土地を離れることなく暮らしていた一族のなれの果て、という背景を持たせました」と語るアジャは、チェルノブイリ原発事故とヒロシマの原爆投下後の影響について記された資料と写真、映像を参考にした。全ては放射線に関する事実に基づいて創り上げようと思ったからだ[9]:16。
しかし遺伝子変異について説明することと、実際の被爆の生々しい外見を再現することは全く別である。この難題を上手くクリアするべく、製作陣は特殊効果工房として有名なKNB EFXグループを起用した。KNBはリアルな変異体の姿を作り上げるために、6ヶ月以上に及ぶ作業を費やした。KNBのアーティストのスコット・パットンは、「事前の準備を徹底するほど、より良い成果が出ることが判っていたので、非常に手の込んだプロセスが必要になりました」と苦労を語った[9]:16。
キャスティング
まず最初に、ビッグ・ボブ役にテッド・レヴィンが決まった。脚本を読んだレヴィンは、『ヒルズ・ハブ・アイズ』がホラー映画やスリラー映画のジャンルを好む人々にアピールする作品になるだろうと確信した。カーター家の母親エセル・カーターには、『アポロ13』(1995年)でアカデミー助演女優賞にノミネートされたキャスリーン・クインランを起用した。クインランは「ホラー映画に出演したことがなく、私が唯一まだ手をつけていないジャンルだったので、どうしても挑戦してみたかったんです」と出演動機を語った[注 1][9]:9。
ボブとエセルのキャストが決まった後で、ダグ・ブコウスキー役の俳優を探すことになった。気弱な平和主義者のダグは、後半で怒りに燃える英雄的な変化を遂げ、登場人物の中で最も劇的な成長を見せるキャラクターだった。入念な選考の末に、『X-MEN2』(2003年)のパイロ役で知られるアーロン・スタンフォードが起用された。選考に立ち会ったプロデューサー補のコーディ・ズウィーグは、「家族を取り戻すため手段を選ばない強い男に変貌するダグの役に、アーロンの演技は強く共感できる」と評した[9]:9。アジャが考えていたダグのキャラクター像は、臆病な非暴力主義者で拳銃が嫌いな男だが、赤ん坊を守るためにモラルを捨て、銃を手に取り戦うようになるというものだ[10]。
脚本を読んだスタンフォードは、オリジナル版を現代的にアップデートした内容に感心した。アジャが本作に持ち込んだ視点として、核実験中に砂漠の丘陵地帯に身を隠した鉱夫の家族たち、それに鉱夫のコミュニティの考え方は特に重要だとスタンフォードは感じた。「彼ら(ミュータント)は、自分たちをこんな目に遭わせた人間に対して怒っているんだ。彼らの祖先は自分の土地を追われた者だからね。砂漠の環境は悪いし、常に彼らは飢えている。つまり誰かに八つ当たりしたいのさ」とスタンフォードは語っている[13]。
製作陣はブレンダ役に、知名度が高くなくても将来有望な若手女優を欲していた。そこでアジャは、アメリカの人気テレビドラマ『LOST』(2004‐2010年)で脚光を浴びたエミリー・デ・レイヴィンを見出した。「エミリーはとても魅力的な姿でオーディションの場に現れ、私が求めていた感情の機微を、わずか2分間の芝居で完璧に表現してくれました。ブレンダ役には彼女しかいないと確信しました」とアジャは語る。多くのティーン向けホラー映画を観ていたレイヴィンもまた、ジャンル映画でよく見られる、優柔不断な10代の少女とは一線を画したブレンダのキャラクター設定に惹かれた[9]:9。レイヴィンはこの映画が旧作のリメイクであることを知っていたが、アジャからオリジナル版を事前に観ないように頼まれた。それはオリジナル版から影響を受けないで欲しいという、アジャの配慮からだったと思うとレイヴィンはインタビューで話している[13]。

ダグの妻を演じるヴィネッサ・ショウは、アジャがキューブリックの『アイズ ワイド シャット』(1999年)を観て以来、ずっと一緒に仕事をしたいと思っていた女優だった。しかしホラー映画特有の、恐怖と不安を煽る作品への出演に消極的だったショウは、この映画への出演も最初はためらっていた。「私が演じるリンは家族の仲裁役ですが、赤ん坊を守るために戦わなければならなくなり、その過程で驚くべき強さを発揮することになります」とショウは語った[9]:10。ダグの娘キャサリン役に生後半年ぐらいの赤子を探すのが大変だったが、幸いなことに制作スタッフの知り合いの夫婦が、子どもを撮影に貸し出すことに協力してくれた[10]。
ミュータント一家のキャスティングに関しては、長時間を要する特殊メイクに耐え、フリークスのメイクのままスタントと演技が可能で、なおかつミュータントの獰猛な本能を体現できる役者が必要とされていた。狂暴なジュピター役には『エルム街の悪夢5』(1989年)でスーパー・フレディを演じたマイケル・ベイリー・スミスに白羽の矢を立てた。スミスは、核実験の際にもその地を立ち去らなかった人々の末裔である奇形化したミュータントは、ある意味では非常に絆の強い家族だという設定に魅力を感じた[9]:13。同じくミュータントのリザードには『ランド・オブ・ザ・デッド』(2005年)に出演していたロバート・ジョイ、ゴーグル役にエズラ・バジントン、ミュータントたちのリーダーであるパパ・ジュピターには、多くのSFホラーに出演歴のあるビリー・ドラゴが決まった。ドラゴはオリジナル版『サランドラ』のファンだった[9]:14。ドラゴが演じるパパ・ジュピターには目立った奇形の外見がないが、メイキング映像で彼の左上半身には、大きな寄生型の双子が付着していることが示されている。しかし結果的にこの効果は削除され、ミュータント一家の中で唯一、突然変異の痕跡が(外部からは)見えないキャラクターとなった[2]。
撮影
製作陣は撮影場所として、オリジナル版を撮ったカリフォルニア州ヴィクターヴィルに行くのではなく、世界各地に目を向けてロケ地を探した。ナミビア、南アフリカ、ニューメキシコ、カリフォルニア、モロッコなどを巡り、最終的にモロッコのワルザザートに辿り着いた。「360度見渡す限り、切り立った岩肌しか見えないその風景は、この映画に打ってつけで、実に最高のロケーションでした」とアジャが言うように、核実験後の荒野を再現するのには最高の土地を見つけ出した[9]:18。
しかし現実は厳しく、撮影隊とキャストたちは途上国特有の厳しい環境に直面した。気温は時に華氏120度(約49℃)にまで達し、ラテックス製の特殊メイクのマスクが溶けるほどで、連日のように砂嵐が吹き荒れた。主人公ダグ役のスタンフォードは「ワルザザートでの撮影は、キャスト間の絆を築く上でも役立ちました。過酷な条件下の孤立した場所に置かれたことで、私たちは本当の家族のように団結せざるを得なかったからです」と語った[9]:18。
撮影場所にモロッコを選んだのには、ビジネス的な事情もあった。オリジナル版『サランドラ』に比べれば大規模になったとはいえ、ハリウッド映画の基準からすれば低予算映画の本作の場合、製作費が100万ドルほど余分にかかることがある。「100万ドルという金額は予算の大きな部分を占めるので、映画組合の制約が緩くて手数料がかからない、他所の国で作った方が画面にもっとお金が使えるのです。これはアメリカ映画の恐ろしい事実のひとつなんですが…」とクレイヴンは明かした[14]
作中に登場するガソリンスタンドは、アメリカの砂漠地帯にあるスタンドを調査し、廃品置き場やポンプなどの参考写真を沢山調べた。本作のガソリンスタンドは、美術デザイナーのジョセフ・C・ネメックと美術スタッフがモロッコの現地に設置したものだが、あまりにも精巧かつリアルだったため、本当に給油に立ち寄る一般人がいたという[2][10]。
ミュータントたちがカーター家のキャンピングカーを襲撃する場面で、リザードがペットの小鳥の頭を齧みちぎって血を飲むシーンがある。本来この箇所はアジャが、一家が飼っている仔猫をミュータントがミルクと一緒にジューサー・ミキサーにかけて飲む場面として考えていた。しかしクレイヴンは、模倣する者が出るかもしれないという懸念から、アジャの提案を却下していた[2]
スタンフォードが、この映画に一層熱意を注ぐようになったのは、撮影中に見たアジャとルヴァスールの楽し気な姿に触発されたからだった。スタンフォードはこう語っている。「彼らはまるで、お菓子売り場に来た子どものようで、作品に深くのめり込み、心から楽しんでいるようでした。あれほど熱心に映画製作に取り組む人たちを見ていれば、きっと良い映画になるだろうっていう確信が持てますよね」。スタンフォードは監督のアジャにひとつの提案をした。それは撮影本番になるまで、ミュータントのメイクを見ないようにすることだ。そうすることで撮影時に、演技ではない恐怖感を表わせるとスタンフォードは考えた[9]:10。
この映画の制作には、16ヵ国もの違う国籍を持つ人々が集まった。言葉の壁や文化の違いはあったものの、国際色豊かなスタッフが集まったことで、現場には多くのアイデアと創造性がもたらされた。撮影に同行していたプロデューサーのマッダレーナは、以下のように総括した。「私たち全員に共通していたのは、“最高の仕事をしたい”という思いでした。アレックス(アジャ)とグレゴリー(ルヴァスール)が、私たち全員をずっと鼓舞してくれたのです」[9]:18。
興行
この映画は全米映画配給協会MPAAの審査により、「全編にわたる強烈で残虐な暴力描写と恐怖、そして過激な言葉遣い」からR指定を受けた[15]。
2006年3月10日、全国2,620館の劇場で公開された『ヒルズ・ハブ・アイズ』は、初週末には総売上高の37.6%にあたる15,708,512ドルを稼いで興行収入ランキング第3位を獲得した[15]。アメリカ国内だけで41,778,863ドルの興行収入をあげ、1,500万ドルの製作費に対し、全世界で70,355,813ドルもの興行収入を記録して成功を収めた[1][15]。
DVDの推定販売数は、最終的に21,197,571ドルに達した[15]。
各国のレイティング
- アメリカ:R(17歳未満保護者同伴必須)
- アメリカ:NC-17(17歳以下禁止)(ノーカット版)
- 日本:R-18(ノーカット版)
- 香港:III(18歳以上のみ鑑賞可)
- 韓国:上映禁止
- シンガポール:M18
- シンガポール:R21(ノーカット版)
- マレーシア:18SG(18歳以上対象)
- イギリス:18
- ドイツ:18
- カナダ(オンタリオ州、ノバスコシア州):18A
- カナダ(ケベック州):16+
- フランス:-16
- オーストラリア:R(18歳未満禁止)
- ニュージーランド:R18
- ノルウェー:18
- アイルランド:18
- アイスランド:18
- フィンランド:K-18
- スウェーデン:15
- イタリア:VM14(14歳未満禁止)
- ポルトガル:M/18
- ブラジル:18
- ハンガリー:18
- オランダ:16
- メキシコ:D(18歳未満禁止)
- アルゼンチン:18
- ポーランド:18
評価
レビュー・アグリゲーターのRotten Tomatoesでは、137人の批評家レビューにより51%の支持率を集め、同サイトの総評は「現代の観客向けにテンポを速めた『サランドラ』のリメイク版は、ハードコアなホラーファン向けにグロテスクな描写をさらに過激にしているが、カジュアルな観客を遠ざけてしまうだろう」というものだった[16]。加重平均を用いるMetacriticは、28件の批評家レビューに基づいて100点満点中52点を与え、「賛否両論または平均的」の評価を示した[17]。IMDbでは5.5/10点と、平均よりやや高いスコアを記録している[18]。
日刊紙『クリスチャン・サイエンス・モニター』は、読者にレビューを届けるため苦痛に耐えて映画を観たと書き、「ロバート・ジョイ、キャスリーン・クインランといった俳優陣も出演していますが、おそらく彼らは別の映画に出たかったことでしょう」として、この映画にC評価を与えた[19]。
映画評論家スティーヴン・ハンターは、『ワシントン・ポスト』のレビューで「ウェス・クレイヴンの旧作のリメイクである本作は出来が良すぎる。『ハイテンション』で血みどろのデビューを果たしたアレクサンドル・アジャは、優れたリメイクの達人だ」と書いた。既存のスタイルを刷新しながらも、同時に新たな発想を生み出しているアジャは、アメリカ映画の初監督作品として巨額の予算を投じており、思いつく限りのことを何でもやっているとハンターは絶賛した。それでも特殊メイクを濃くし過ぎて、俳優本来の表情が見えないのが欠点だと指摘している[20]。
『A.V.クラブ』のネイサン・ラヴィンは「突然変異した人喰い人種たちは『悪魔の毒々モンスター』の親戚のように見え、長く画面に映るほど怖さが薄れて行く」と書き、「70年代映画の定番要素である、延々と続くレイプ描写もある『ヒルズ・ハブ・アイズ』は、確かな演出と素晴らしいキャストのおかげで酷い映画ではないが、不快な作品ではある」と批評した[21]。
ホラー映画情報サイト『ブラッディ・ディスガスティング』編集部は、前年にヒットしたイーライ・ロス監督作『ホステル』(2005年)を傑作だと認めつつも、『ヒルズ・ハブ・アイズ』をああいった拷問ポルノの1作に数える人を馬鹿だと言い、4,000万ドル以上の興行成績をあげた本作は、シネマコンプレックス時代におけるハードコア・ホラーの存在感を確固たるものにしたと肯定的に評した[22]。
『シカゴ・サンタイムズ』の映画評論家ロジャー・イーバートは、「『ヒルズ・ハブ・アイズ』を台無しにしているのは、論理の欠陥ではなく、ドラマの欠陥だ」と否定的なレビューを寄せ、4点満点中1.5点を付けた。「この映画の登場人物たちは、ティーン向けホラー映画を観たことがないので、1人で出かけてはいけない、夜に1人で出歩いてはいけない、走って行った犬を追いかけてはいけないなどの生存に関するルールを知らない。人助けを求めて、怪しいガソリンスタンドまで歩いて戻るのも良い考えではないだろう」と、イーバートはミュータントに襲われる家族の判断の悪さを嘆いている[23]。
脚注
注釈
- ↑ 実際は『トワイライトゾーン/超次元の体験』(1983年)と『イベント・ホライゾン』(1997年)に出演歴がある。
出典
- 1 2 3 “The Hills Have Eyes (2006)” (英語). Box Office Mojo. 2010年4月22日閲覧。
- 1 2 3 4 5 “The Hills Have Eyes Trivia”. IMDb. 2026年7月26日閲覧。
- 1 2 “The Hills Have Eyes Alternate versions”. IMDb. 2026年7月26日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 “ヒルズ・ハブ・アイズ”. 映画.com. 2026年7月26日閲覧。
- ↑ 国内盤DVDパッケージの表記より
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 “ヒルズ・ハブ・アイズ”. allcinema. 2026年7月26日閲覧。
- 1 2 3 “The Hills Have Eyes Full cast & crew”. IMDb. 2026年7月26日閲覧。
- ↑ “The Hills Have Eyes Company credits”. IMDb. 2026年7月26日閲覧。
- 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 “The Hills Have Eyes Production”. 20世紀フォックス. (2007年9月30日) 2026年7月26日閲覧。.
- 1 2 3 4 DVD特典映像『SURVIVING THE HILLS ~THE MAKING OF “The Hills Have Eyes”~』より「
- ↑ “Dimension heading back to ‘Hills’”. バラエティ (2004年2月5日). 2026年7月26日閲覧。
- ↑ “Fox Searchlight ‘Eyes’ pic”. バラエティ (2005年4月7日). 2026年7月26日閲覧。
- 1 2 “'The Hills Have Eyes' Interview”. YouTube (2014年5月15日). 2026年7月26日閲覧。
- ↑ “Wes Craven talks about THE HILLS HAVE EYES 2 (2007)”. YouTube (2023年4月10日). 2026年7月26日閲覧。
- 1 2 3 4 “The Hills Have Eyes (2006)”. ザ・ナンバーズ. 2026年7月26日閲覧。
- ↑ “The Hills Have Eyes”. Rotten Tomatoes. 2026年7月26日閲覧。
- ↑ “The Hills Have Eyes”. Metacritic. 2026年7月26日閲覧。
- ↑ “The Hills Have Eyes Ratings”. IMDb. 2026年7月26日閲覧。
- ↑ “Movie Guide”. クリスチャン・サイエンス・モニター (2003年3月10日). 2026年7月26日閲覧。
- ↑ “'The Hills Have Eyes': Can You Watch, Too?”. ワシントン・ポスト (2003年3月9日). 2026年7月26日閲覧。
- ↑ “The Hills Have Eyes”. A.V.クラブ (2006年3月7日). 2026年7月26日閲覧。
- ↑ “Editorials00’s Retrospect: 2006, the Year PG-13 Got Served”. ブラッディ・ディスガスティング (2009年12月27日). 2026年7月26日閲覧。
- ↑ “The eyes have it”. Roger Ebert.com (2006年3月9日). 2026年7月26日閲覧。
関連項目
シリーズ
- ヒルズ・ハブ・アイズ2(続編)
- サランドラ(本作のオリジナル版)
- サランドラ II(オリジナル版の続編)