バリオバーン (ケムニッツ市電)

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バリオバーン(ケムニッツ市電)
6NGT-LDE
6NGT-LDZ
バリオバーン
左:ケムニッツ交通
右:シティバーン・ケムニッツ
2015年撮影)
基本情報
運用者 ケムニッツ交通ドイツ語版シティバーン・ケムニッツドイツ語版
製造所 ABBヘンシェル(試作車)
アドトランツ(量産車)
製造年 1993年1998年 - 2000年
製造数 ケムニッツ交通
 6NGT-LDE 14両(601 - 614)
 6NGT-LDZ 10両(901 - 910)
運用開始 1993年
投入先 ケムニッツ市電
主要諸元
編成 5車体連接車
6NGT-LDE 片運転台
6NGT-LDZ 両運転台
軸配置 Bo'2'Bo'
軌間 1,435 mm
電気方式 直流600 V
架空電車線方式
最高速度 70 km/h
車両定員 6NGT-LDE
着席88人
立席111人
6NGT-LDZ
着席68人
立席121人
折り畳み座席5人分
車両重量 6NGT-LDE 36.0 t
6NGT-LDZ 36.4 t
全長 31,380 mm
全幅 2,650 mm
全高 3,350 mm
床面高さ 350 mm
290 mm(乗降扉付近)
(低床率100 %)
車輪径 630 mm
主電動機 誘導電動機
主電動機出力 45 kw
出力 360 kw
備考 主要数値はケムニッツ交通が所有する車両に基づく。
シティバーン・ケムニッツが所有する車両の主要数値についてはバリオバーン (シティバーン・ケムニッツ)を参照[1][2][3][4][5][6]
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この項目では、2020年現在まで複数の企業が生産を実施している超低床電車バリオバーンのうち、ドイツ路面電車であるケムニッツ市電で使用されている車両について解説する。同市電は初めてバリオバーンが導入された路線で、2020年現在は市内の路面電車用車両と郊外へ直通するトラムトレイン用車両、合わせて3つの車種が営業運転に使用されている[1][7][8][9]

概要[編集]

ケムニッツ交通[編集]

東ドイツの民主化やドイツ再統一の動きの中で、東ドイツの都市であったケムニッツ(旧:カール=マルクス=シュタット)の路面電車であるケムニッツ市電の運営権は1990年に従来のカール=マルクス=シュタット地方輸送公社(VEB Nahverkehr Karl-Marx-Stadt、NVK)から市営企業であるケムニッツ交通ドイツ語版(Chemnitzer Verkehrs-Aktiengesellschaft、CVAG)へと移管された。同社は東ドイツ時代に導入されたタトラT3D・B3Dの更新工事を進めた一方、老朽化が進みバリアフリーにも難があったこれらの車両の置き換え用として1990年代以降超低床電車の導入を実施した。これがバリオバーン(Variobahn)、もしくはバリオトラム(Variotram)と呼ばれる車両である[7][8][9]

バリオバーンはドイツABBヘンシェルが開発した路面電車車両で、中間に台車がないフローティング車体を挟んだ連接構造を有する。2020年現在、ドイツのみならず世界各都市に導入されているが、その中でもケムニッツ市電に導入された車両は動力台車・付随台車共に車軸が存在しない独立車輪式台車が用いられており、車内全体の床上高さを350 mm(乗降扉付近は290 mm)に抑えた100 %低床構造を実現させている。そのため、動力台車に設置されている主電動機(水冷式誘導電動機)については、各車輪の外側に1基づつ設置されるハブモーター方式が用いられている[7][8][10][11]

ケムニッツ市電はバリオバーンが最初に導入された路線であり、1993年に試作車の導入が行われた。ただし量産車の導入までには長い時間を要し、ABBヘンシェルが企業再編によりアドトランツとなって以降、1998年からとなった。それ以降、試作車も合わせて2000年までにケムニッツ交通には合計24両のバリオバーンが導入され[注釈 1]、それによる置き換えに加えて利用客減少による余剰もあり、更新工事が行われなかったタトラT3D・B3Dは2002年に営業運転を終了した[8][9][12]

2020年現在、ケムニッツ交通が所有するバリオバーンは以下の2車種である。

  • 6NGT-LDE - 片運転台車両。乗降扉は車体右側のみに存在。試作車(601)を含めて14両(601 - 614)が在籍する[1][2]
  • 6NGT-LDZ - 両運転台車両。乗降扉は車体両側に設置されている。10両(901 - 910)が在籍[1][3][13]

シティバーン・ケムニッツ[編集]

4132015年撮影)

ケムニッツ市電や路線バスなどケムニッツ市内の公共交通はケムニッツ交通によって運営される一方、ケムニッツと郊外を結ぶ近郊鉄道路線や郊外へ向かう路線バスは市営企業のシティバーン・ケムニッツドイツ語版(City-Bahn Chemnitz)によって運営されている。同社ではケムニッツ市電と郊外の鉄道路線を直通するトラムトレインケムニッツ・モデル)の運行も実施しており、そのうち2002年に開通した最初の路線となるケムニッツ市内とシュトルベルクドイツ語版を結ぶC11号線ではアドトランツ[注釈 2]製のバリオバーンが使用されている[4][5][15]

塗装を除いてケムニッツ交通が有する市内線向け車両と類似した外見を有するが、車体の強度や台車の構造、無線機器などは路面電車(BOStrabドイツ語版)と鉄道線(EBOドイツ語版)の双方の規格に適したものになっている他、電圧も路面電車(直流600 V)と鉄道線(直流750 V)双方に対応している。開通に合わせて6両(411 - 416)の両運転台車両(6NGT-LDZ)が2000年から2001年にかけて製造されている[1][4][5]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 1993年時点の発注両数は53両だった[6]
  2. ^ アドトランツは2001年ボンバルディア・トランスポーテーションへ吸収されており、シティバーン・ケムニッツ用車両はそれ以前に製造されたものである[14]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e 鹿島雅美「ドイツの路面電車全都市を巡る 2」『鉄道ファン』第46巻第1号、交友社、2006年1月1日、160-163頁。 
  2. ^ a b Variobahn 6NGT-LDE (Einrichtungswagen)”. CVAG. 2020年10月11日閲覧。
  3. ^ a b Variobahn 6NGT-LDZ (Zweirichtungswagen)”. CVAG. 2020年10月11日閲覧。
  4. ^ a b c Construction work to start for Stage 2 of Chemnitz tram train network”. Urban Transport Magazine (2019年8月21日). 2020年10月11日閲覧。
  5. ^ a b c Variobahn 6NGT-LDZ”. City-Bahn Chemnitz. 2020年10月11日閲覧。
  6. ^ a b Michael I. Darter 1995, p. 137.
  7. ^ a b c Michael I. Darter 1995, p. 8.
  8. ^ a b c d Michael I. Darter 1995, p. 27.
  9. ^ a b c Markus Bergelt & Michael Sperl 2019, p. 47.
  10. ^ Michael I. Darter 1995, p. 34.
  11. ^ Variobahn”. Stadler. 2012年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年10月11日閲覧。
  12. ^ Markus Bergelt & Michael Sperl 2019, p. 48.
  13. ^ Markus Bergelt & Michael Sperl 2019, p. 49.
  14. ^ Guido Berg (2008年12月18日). “Tram-Kauf: Entscheidung noch 2008 Debatte über Stadlers Variobahn-Erfahrungen”. Potsdamer. 2020年10月11日閲覧。
  15. ^ Historie”. City-Bahn Chemnitz. 2020年10月11日閲覧。

参考資料[編集]

  • Michael I. Darter (1995) (英語) (PDF). Report 2: Applicability of Low-Floor Light Rail Vehicles in North America. ISBN 0-309-05373-0. ISSN 1073-4872. http://onlinepubs.trb.org/onlinepubs/tcrp/tcrp_rpt_02.pdf 2020年10月11日閲覧。 
  • Markus Bergelt; Michael Sperl (2019-10). “Tatra Geschichte in Karl-Marx-Stadt”. Strassenbahn Magazin (GeraMond Verlag GmbH): 44-49. 

外部リンク[編集]