デジタル・プラットフォーマー

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デジタル・プラットフォーマー: digital platformer)とは、ユーザーが投稿可能なサイトやアプリといったオンライン・プラットフォームを運営しているIT事業者の総称。プラットフォーム内に載せる広告費収入による収益で、基本的に一部機能・サービス以外は無料で使用出来る仕組みになっていることが多い[1][2][3]

概要[編集]

デジタル・プラットフォーマーは基本的に広告掲載費又は課金制度を利用し、収益をあげる。2ちゃんねるのような電子掲示板タイプ、Googleのような検索サイトタイプ、Amazonのような通販サイトタイプ、Twitter・Instagram・FacebookのようなSNSタイプ、LINEやdiscordのようなコミュニケーションツールタイプなどの様々なタイプがある。どれもオンライン上でやり取りの場を提供することで主な収益を得ている[4]。ただし、なりすまし広告などプラットフォーム上で有料掲載されているネット広告に対する事前審査の甘さが指摘されている板倉陽一郎弁護士は、特定個人や企業になりすます偽広告について、日本では名誉毀損商標権の侵害にあたり、広告クリックでだまされた場合は詐欺罪にもあたる[5]

著名なプラットフォーマーとして、GAFAGoogleAmazonFacebookMETA)、Apple[6][7]TikTokDiscordX(旧Twitter)、「Snapchat」のスナップ(Snap[8]、GAFAの中国企業版BATBaiduAlibabaTencent)などが有名である[6][7]

総務省によると、欧州ではデジタル・プラットフォーマー規制に積極的な一方で、米国は比較的規制に抑制的な対応傾向にあった。しかし、令和2年(2020年)頃から規制議論姿勢に転換がみられる[9]

掲載広告関連への対応問題[編集]

日本ではプラットフォーマーの運営するSNSに掲載させた詐欺広告が問題になっている。これを巡り、2024年4月19日にFacebookやInstagramを運営する米国メタ社は「審査チームには日本語や日本の文化的背景を理解する人を備えている」などと主張した。それに対して、橋下徹弁護士は、プラットフォーマーが顔写真や名前の悪用被害者からの詐欺広告取り下げ申請を受けても取り下げをしない場合は、詐欺広告主からの広告代金を受け取っていることから詐欺幇助として、プラットフォーマーが民事上や刑事上の責任を負うと指摘した[10]

児童性虐待記録物・不同意拡散性的記録物への対応問題[編集]

米国議会にて、ビッグテックのプラットフォーマーらの違法投稿取り締まりに対する非積極的な改善姿勢にしびれを切らし、上院司法委員に属する上院議員らが2024年にメタ(Meta)、TikTok、Discord(ディスコード)、X(旧Twitter)、スナップ(Snap)のCEO(最高経営責任者)らを呼び出し、各々のプラットフォームにおける「ビッグテックとオンライン児童性的搾取の危機(Big Tech and the Online Child Sexual Exploitation Crisis)」」にて、姿勢を問う場を設けた。リンゼー・グラム上院議員は「あなた方の製品は人々を殺している。」「邪悪な側面が放置されたままになっている」と批判している[8]

DiscordのCEOは2024年に初めて公聴会に呼び出されたが[8]、児童虐待や性暴力動画など法的禁止動画のやり取りの場となっていることが問題になってる。discordで未成年の性被害も相次いでいる。ブラジルでは未成年強姦や脅迫、児童ポルノ共有の場となっており、2023年には逮捕者が相次いだ。リオ州市警やサンパウロ市市警によって、Discord内で未成年へ性加害行為、自傷行為強制、動物殺傷強制をさせていたグループなどが摘発されている[11]

辻麻梨子記者によると日本でも、性的写真や動画を勝手に拡散、売買する行為は複数の犯罪に該当するものの、これらを繰り返す加害者、放任しているアプリ運営者、GoogleやAppleといったプラットフォーマーへの取り締まり・捜査体制が不十分となっている[12]。辻記者によるも、被写体が児童のケースを含むハッキング、リベンジポルノ、盗撮、転載などさまざまな方法で集められま性的写真と動画を「性的商品」としてやり取り出来るアプリをGoogleやAppleといった巨大プラットフォーマーがアプリストアから削除せずに放任することで、被害者が増え続ける「地獄の構図」となっている[13]。彼女は、「誰が私を拡散したのか」シリーズにて、性的写真や動画が無許可て「商品」にされており、カネ目当ての投稿者らが「商品」を投稿・拡散し続け、GoogleやAppleといった巨大プラットフォームがこの仕組みを支える構造を無くさないと被害者らに地獄が続くと批判している[14]

プラットフォーマー企業の日本支社はただ日本国内に存在するだけで、意思決定は海外にある本社にある。そのため、日本人被害者の対処要請にも関わらず、私事性的画像記録物(リベンジポルノ)・当事者間のみで撮影と所持許可したが第三者への拡散不同意であるハメ撮り・撮影自体無許可な盗撮といった「不同意拡散性的記録物」の拡散・投稿・販売がインターネット上で蔓延している。デジタル・プラットフォーマー側も明らかに10代後半未満に見える児童性虐待記録物(児童ポルノ)には比較的削除や凍結処分の取り組みを見せる一方で、10代後半前後又は成人に見えるような性的画像記録物へは対処へ積極的ではない。そのため、デジタル・プラットフォームでは無許可拡散・販売犯罪が蔓延しており、彼らの多くはTwitterやdiscordなど特定のアプリ又は掲示板サイト経由で「不同意拡散性的記録物」に関する連絡・取引を行っている。写真袋や「写真箱」は日本で不同意拡散性的記録物の売買プラットフォームとして初摘発され、性的画像や動画の取引で投稿者に利益が還元構造自体が運営者責任問題だと運営側(会社代表と従業員)が有罪判となったものの、プラットフォーマー側への刑罰は執行猶予付きなど軽いことに批判がある。更には一個の「プラットフォーム」がサービス終了しても、Xやネット掲示板経由で投稿・売買している犯罪者らはGoogle(Android)やアップルなどプラットフォーマー・プロバイダーが非積極的姿なため、別の類似アプリ・掲示板サイトなどは削除されていないため、これらに誘導し、取引を続けている問題がある。日本人被害者がプラットフォーム側の落ち度で被害を受け続けているため、日本政府による新法制定などの法的規制強化や厳罰化・「写真袋」や「写真箱」を摘発した「不同意拡散性的記録物」ら摘発専門の警察部門や人員の拡大が求められている[15]。「写真袋」は日本における児童性的虐待や女性盗撮画像が売買されているアプリ運営者の初摘発であり、警視庁・京都府警の共同捜査本部と神奈川県警によって行われた。逮捕された経営者の男は写真袋では広告収入を得る仕組みにしていた一方、写真箱では広告廃止でユーザーの課金で収益を上げる仕組みにしていた。 2015年12月7日付の産経新聞に警視庁側は「もはや公然陳列の場を提供している状況。たまたま児童ポルノが集まったというレベルではない」と語っている。横浜地裁は児童ポルノと猥褻画像の公然陳列の罪で経営者に懲役2年6月・執行猶予4年、罰金400万円の有罪判決がされた[16]ベルギー王国の刑法では、性的コンテンツの不同意拡散罪が制定されている。撮影者と被撮影者が相互に16歳以上で撮影にも合意している上に、当人ら同士のみの所持で第三者にも見せない場合には性的記録物に関して罰しないと定めている。逆に被撮影者が録画など撮影自体に同意していても、性的記録物を被撮影者の許可範囲を越えて他者に見せる行為・第三者がアクセス可能となる投稿や配信行為を含む「不同意拡散」をすると6ヶ月以上5年以下の拘禁刑になると定められている[17]欧州連合(EU)は2020年に、一定規模以上のオンライン・プラットフォーマーに対して、自社サイトにおける自社サービス優遇禁止という事前規制制度を導入すること、違法コンテンツ対応の義務化し、プラットフォーマーの責任範囲を広げることを決めた[18]。欧州連合(EU)の行政を担う欧州委員会は2023年12月に世界最大級アダルトサイトら3つを、デジタルサービス法(DSA)に基づき、規制対象プラットフォームに指定した[19]

WIREによると、テクノロジー・プラットフォーム同様に、Pornhubの親会社マインドギーク(MindGeek)は不同意投稿によるものだけに限らず、レイプ記録物や児童性的虐待動画まで「儲かる可能性のあるコンテンツ」のほとんどを削除姿勢をとっていない。このようなモノが広範投稿されているアダルト専門プラットフォーマーとして最大なのがpornhubと指摘している[20]

脚注[編集]

  1. ^ 総務省|令和元年版 情報通信白書|デジタル経済におけるデジタル・プラットフォーマーの位置付け”. www.soumu.go.jp. 2024年4月20日閲覧。
  2. ^ デジタルプラットフォーマーへの警戒感を強めるEU-在欧専門家に聞く | 欧州が直面するビジネス環境の変化と中国・同企業の動向 - 特集 - 地域・分析レポート - 海外ビジネス情報”. ジェトロ. 2024年4月20日閲覧。
  3. ^ EUが「世界最大級ポルノサイト」3社に対し規制を厳格化 | Forbes JAPAN 公式サイト(フォーブス ジャパン)”. forbesjapan.com. 2024年4月20日閲覧。
  4. ^ 数字でみる日本の100年 第7版: 日本国勢図会長期統計版 - p459,矢野恒太記念会 2020年
  5. ^ 日本放送協会 (2023年9月24日). “有名人なりすまし“偽の投資広告” SNSで急増 その手口とは | NHK”. NHKニュース. 2024年4月21日閲覧。
  6. ^ a b 日経ビジネス電子版 (2021年10月26日). “GAFAと熾烈な争いを繰り広げる「BAT」を1分で説明できますか”. 日経ビジネス電子版. 2024年4月20日閲覧。
  7. ^ a b 株式会社インプレス. “米国勢GAFAと中国勢BATが繰り広げるデジタルの覇権争い(前編)【第12回】”. デジタルクロス. 2024年4月20日閲覧。
  8. ^ a b c DIGIDAYJAPAN (2024年2月8日). “プラットフォーマー の手は血で汚れているのか。米上院公聴会で起きた糾弾”. DIGIDAY[日本版]. 2024年4月20日閲覧。
  9. ^ 総務省|令和2年版 情報通信白書|デジタル・プラットフォーマーに対する規制”. www.soumu.go.jp. 2024年4月20日閲覧。
  10. ^ 橋下徹氏 著名人かたる詐欺広告、プラットフォーマーの責任に言及「広告取り下げの申し入れを…」 - スポニチ Sponichi Annex 芸能”. スポニチ Sponichi Annex. 2024年4月21日閲覧。
  11. ^ NippouBrasil (2023年6月27日). “ディスコードの犯罪利用相次ぐ=少女ら強姦被害、「ヴァーチャル・レイプ」事件も”. 南米の鼓動をキャッチ! ブラジル日報. 2024年4月20日閲覧。
  12. ^ なぜ警察の摘発は進まないのか(7) | Tansa”. Tansa(特定非営利活動法人ワセダクロニクル) (2023年3月3日). 2024年4月20日閲覧。
  13. ^ 知らぬ間に自分の写真と動画が “性的商品”に…巨大プラットフォームが支える「地獄の構図」”. FRIDAYデジタル (2023年2月18日). 2024年4月21日閲覧。
  14. ^ 誰が私を拡散したのか | Tansa”. Tansa(特定非営利活動法人ワセダクロニクル). 2024年4月20日閲覧。
  15. ^ 2021年12月号「サイゾー」p27-28,株式会社サイゾー
  16. ^ アルバムコレクションと同じ仕組みのアプリ運営者が有罪に(18) | Tansa” (2023年11月23日). 2024年4月20日閲覧。
  17. ^ 末道康之ベルギー刑法における 性犯罪規定全面改正の概要」『南山法学』第46巻1・2号、2022年。 [要ページ番号]
  18. ^ EU、巨大ITに包括規制 20年ぶり抜本策 自社優遇禁じる”. 日本経済新聞 (2020年12月16日). 2024年4月20日閲覧。
  19. ^ 世界最大級の3アダルトサイト、EUが規制対象に 対策や報告義務:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル (2023年12月20日). 2024年4月20日閲覧。
  20. ^ 世界最大のポルノサイトPornhubとの闘い(後編):コンテンツの責任を問う”. WIRED.jp. 2024年4月20日閲覧。