ディキノドン類

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
ディキノドン類
リストロサウルス
リストロサウルスの復元想像図
地質時代
ペルム紀後期 - 白亜紀前期
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
上綱 : 四肢動物上綱 Tetrapoda
: 単弓綱 Synapsida
: 獣弓目 Therapsida
亜目 : 異歯亜目 Anomodontia
下目 : ディキノドン下目 Dicynodontia
学名
Dicynodontia
Owen, 1860
下位分類
本文参照

ディキノドン類Dicynodont あるいは、ディキノドン下目、Dicynodontia)は、四肢動物単弓類絶滅した分類群の一つ。単弓綱 - 獣弓目 - 異歯亜目に属する。双牙類とも呼ばれる。古生代ペルム紀末期及び中生代三畳紀初期において成功した絶滅生物群。その名「ディキノドン(二本の牙)」の通り、口吻部から突き出た二本のが外観上の大きな特徴である[1]リチャード・オーウェンにより名付けられた。

進化史[編集]

ペルム紀中期に現れたディキノドン類は、急速に進化、放散していった。最古のディキノドン類とされる生物は、エオディキノドンである。未だ体長は45cm程度と小型のままであった。吻部に小さな頬歯は残っているものの、発達した二本の犬歯を備えている。[2]この時代以降、ディキノドン類はその勢力を拡げ始めるが、その一つがディイクトドンである。これはホリネズミ的な生態を持つ生物で、氾濫原の土手に穴を掘り、つがいで暮らしていた。彼らはこの中で育児を行っていたと思われる。[3]これが、ディキノドン類が繁栄した一つの要因だと思われる。こうしてディキノドン類は一応の成功はおさめたとはいえ、未だ体長1メートルを超えるものはほとんど存在しなかった。これは、モスコプスなどの大型ディノケファルスが存在していた為と思われる。

やがてペルム紀後期、ディノケファルスらが大幅に数を減じ、それに乗じてディキノドンなどの大型種が現れる。当時、最も成功した陸上脊椎動物であったといえる。この間に大小さまざまな草食動物及び、短い手足で地面に巣穴を掘って暮らすものなど、多種多様な種が現れた。体長数センチの小型のものから、頭骨だけで70センチメートルに達する様な大型のものまで30を超える属が存在し、極めて高い多様性を見せていた。

しかしペルム紀末(P-T境界)、未曾有の大量絶滅が地球を襲う。これにより、地球上の生命の9割が淘汰された。三畳紀初頭、地上は高温にさらされ、酸素濃度は大きく低下した。故に、高温、低酸素の過酷な環境に耐える能力を持った生物のみが地上では生きながらえたのだ。それには穴居性が大きく関わっていると思われる。呼吸が阻害されやすい地下の環境に適応していたことが、低酸素の環境においては有利に働いたのではないかとされる。[4]生き延びたディキノドン類は、こうした穴居性の小型種だったのであろう。

大量絶滅後の三畳紀初頭、いち早く地上に放散したのは、リストロサウルスであった。大量絶滅終了直後には既にパンゲア大陸各地にその姿を見せていた。獣弓類の中でも際立って広く分布し、三畳紀前期の示準化石となっている。また、三畳紀のディキノドン類は大型化の傾向が強い。全長3mのプラケリアス(Placerias)、4mのスターレッケリア(Stahleckeria) や5mのイスキガラスティア(Ischigualastia) などが挙げられる。また、頭蓋などの部分骨格のみであるが、エレファントサウルス(Elephantosaurus) は8mに達するといわれている。彼らは皆カンネメイエリア科及びその近縁な科のメンバーであり、大量絶滅を生き抜いた種がごく僅かであった事が伺える。とはいえ、既に大型草食動物の地位はディキノドン類だけのものではなくなっていた。リンコサウルス類や同じ獣弓類のバウリア類などである。そして三畳紀後期を襲った中規模の大量絶滅により、彼ら共々ディキノドン類は大半が絶滅する事になる。これ以降、大型草食動物の生態的地位は、竜脚形類などの恐竜に引き継がれ、新生代に哺乳類が適応放散するまで、単弓類の系統において現れる事は無かった。

ディキノドン類は三畳紀後期初頭において絶滅したと思われていた。しかし最近、かつてゴンドワナ大陸南部であった現オーストラリアクイーンズランドにおいて、白亜紀前期の地層からディキノドン類と思われる化石が発見されている。[5]

特徴[編集]

骨格の特徴[編集]

頭骨
頭頂孔の周囲に盛り上がりが見られる。側頭窓は拡大し、側頭部の骨の多くは弓状になっている[6]
犬歯以外の歯が退化。初期のものを除いては、上顎犬歯以外の歯は消失する。角質の嘴やパッドに置き換わる。二次的に犬歯か縮小、代わりに顎骨が牙状に突出したプラケリアスの例もある[7]
顎関節
大きく前後にスライドさせる事が可能な構造になっている。「ワイヤー・カッター」と称されるこの構造で、植物を効率よく裁断する事が出来たとされる。[8]
二次口蓋
エオディキノドンの段階で発達が見られる。

生態[編集]

食性
口蓋の構造などから、極初期のグループを除きほとんどが植物食であったと思われる。
小型のもののほとんどが穴居性であったと思われる。二次口蓋の発達は、穴を掘る事への適応だと思われる。ディイクトドンの巣の形状は、新生代中新世前期頃の北米に生息していた陸生ビーバーパレオカストールの「悪魔のコルク抜き」と同様の螺旋構造となっていた[9]
育児
巣穴の中で幼体がかたまって発見された事もあり、彼らは育児を行っていたと考えられている。これは、脊椎動物最古の育児の記録である。既にディキノドン類が哺乳の原型に当たる行動までとっていたという仮説もあるが、検証は難しい。[10]ただし、より古い時代に分岐した初期のディノケファルス類の皮膚化石に汗腺らしきものが確認されている[11]

系統[編集]

下位分類[編集]

脚注・出典[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ 富田幸光 文、伊藤丙雄、岡本泰子 イラスト 『絶滅哺乳類図鑑』 23頁
  2. ^ 金子隆一 著 『哺乳類型爬虫類 : ヒトの知られざる祖先』 146 - 148頁
  3. ^ 金子隆一 著 『哺乳類型爬虫類 : ヒトの知られざる祖先』 150 - 156頁
  4. ^ NHK「地球大進化」プロジェクト編 『NHKスペシャル 地球大進化 46億年・人類への旅 : 4 大量絶滅』 114頁
  5. ^ ThulbornとTurnmer (2003) / 平山廉 著 『カメのきた道』 116頁
  6. ^ エドウィン・H・コルバート、マイケル・モラレス共著『脊椎動物の進化(原著第5版)』 267頁
  7. ^ 金子隆一 著 『哺乳類型爬虫類 : ヒトの知られざる祖先』 179 - 181頁
  8. ^ 金子隆一 著 『哺乳類型爬虫類 : ヒトの知られざる祖先』 146頁
  9. ^ 金子隆一 著 『哺乳類型爬虫類 : ヒトの知られざる祖先』 150 - 152頁
  10. ^ 金子隆一 著 『哺乳類型爬虫類 : ヒトの知られざる祖先』 159 - 163頁
  11. ^ 金子隆一 著 『哺乳類型爬虫類 : ヒトの知られざる祖先』 127 - 128頁

関連項目[編集]

参考文献[編集]