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テオドロスの螺旋

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
斜辺である直角三角形までのテオドロスの螺旋

テオドロスの螺旋(テオドロスのらせん、: spiral of Theodorus,square root spiral, Pythagorean spiral, Pythagoras's snail)は、 キュレネのテオドロス英語版の名を冠する、高さが1、底辺が前の直角三角形である直角三角形の渦巻である[1]

構築

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テオドロスの螺旋は、底辺高さが1である直角二等辺三角形から始まる。次の三角形を、底辺が前の直角三角形の斜辺(長さは2の正の平方根)、高さが1である、先の直角三角形の外側にある直角三角形とする。

さらに次の三角形を、底辺が先の直角三角形の斜辺(長さは3の正の平方根)、高さが1である、先の直角三角形の斜辺と高さの間の点を直角とし、外側にある直角三角形とする。

以後、一般に回目の直角三角形の外側に、その三角形の長さの斜辺を底辺、斜辺と高さの間の点を直角とする、高さ1の直角三角形を作り続ける。この連なりをテオドロスの螺旋と言う。例えば16回目の直角三角形は底辺は、高さは1、斜辺はである。

歴史

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テオドロスの功績は失われたが、プラトンの作品であるテアイテトスの回想部で彼の功績が伝えられた。テオドロスは、テオドロスの螺旋を用いて平方数でない3から17の数の平方根無理数であることを示したと言われている[2]

テオドロスが2の平方根の証明に関与していないことはよく知られていたため、プラトンもそれをテオドロスに帰さなかった。テオドロスとテアイテトスは、異なる方法で有理数と無理数を分別した[3]

斜辺

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個目の三角形の斜辺をとすると、自然数の正の平方根となる。

テオドロスに教えられたプラトンは、なぜテオドロスはで止めてしまったのか疑問に思った。一般に、その理由はは直角三角形が重ならない最後の三角形の斜辺であったからであると考えられている[4]

三角形の重なり

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1958年、カレブ・ウィリアムズ(Kaleb Williams)は、テオドロスの螺旋のどの斜辺も重ならないことを示した。また、長さ1の辺の延長は、ほかのどの頂点も通らないことも証明した[4][5]

拡張

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テオドロスは螺旋を斜辺がになるところで止めてしまったが、螺旋を無限に続けることができる。

成長率

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番目の三角形の螺旋の中心がある頂点の角としてである。したがって、は次の式で表せる[1]最初の直角三角形の底辺と、番目の三角形の斜辺の成す角は、1からまでのの和である。これは有理関数を用いて次の様に表せる[1]ただし(オンライン整数列大辞典の数列 A105459)

螺旋の一部

半径

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螺旋の半径の成長は任意のについて次の式で表せる。

アルキメデスの螺旋

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テオドロスの螺旋はアルキメデスの螺旋によって近似できる[1]。アルキメデスの螺旋の2つの渦の距離は数学定数である円周率に近づいていくように、テオドロスの螺旋の2つの渦巻きの距離は無限に近づくにつれて、急速にに近づく[6]

渦の数 渦の距離の平均 渦の距離の平均とπの近似精度
2 3.1592037 99.44255%
3 3.1443455 99.91245%
4 3.14428 99.91453%
5 3.142395 99.97447%

5回目の渦でさえ、その近似率は99.97%である[1]

連続的な曲線

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フィリップ・J・デイヴィスのによるテオドロスの螺旋を解析的につなげたもの。数字は整数である原点との距離。青は反対方向に螺旋を拡張したもの。

離散的なテオドロスの螺旋をどのように内挿して滑らかな曲線にするかという問題は2001年にフィリップ・J・デイヴィスによって提案、解決された。階乗ガンマ関数に内挿するのにオイラーの公式を用いることを類推して、デイヴィスは次の式を用いた[7]実数において、螺旋の複素平面上の座標を表す。ジェフリー・J・リーダー英語版Arieh Iserles英語版はさらにこの関数を研究した。次の関数方程式の解は一意的にのみに定まる。初期条件はかつ、偏角絶対値において、単調増加であることである[8]

解析的なデイヴィスの連続化は原点から反対方向の螺旋へと拡張できる[9]

図に、元の離散的なテオドロスの螺旋の節を緑の円で示してある。青い円は螺旋を反対方向に繋げたもので、整数の範囲で番目の点の極半径がとなっている。破線の円は原点における曲率円である。

関連項目

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出典

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  1. ^ a b c d e Hahn, Harry K. (2007), The ordered distribution of natural numbers on the square root spiral, arXiv:0712.2184 
  2. ^ Nahin, Paul J. (1998), An Imaginary Tale: The Story of , Princeton University Press, p. 33, ISBN 0-691-02795-1 
  3. ^ Plato; Dyde, Samuel Walters (1899), The Theaetetus of Plato, J. Maclehose, pp. 86–87, https://books.google.com/books?id=wt29k-Jz8pIC 
  4. ^ a b Long, Kate, A Lesson on The Root Spiral, オリジナルの11 April 2013時点におけるアーカイブ。, https://web.archive.org/web/20130411230043/http://courses.wcupa.edu/jkerriga/Lessons/A%20Lesson%20on%20Spirals.html 30 April 2008閲覧。 
  5. ^ Teuffel, Erich (1958), “Eine Eigenschaft der Quadratwurzelschnecke”, Mathematisch-Physikalische Semesterberichte zur Pflege des Zusammenhangs von Schule und Universität 6: 148–152, MR96160 
  6. ^ Hahn, Harry K. (2008), The distribution of natural numbers divisible by 2, 3, 5, 7, 11, 13, and 17 on the square root spiral, arXiv:0801.4422 
  7. ^ Davis (2001), pp. 37–38.
  8. ^ Gronau (2004).
  9. ^ Waldvogel (2009).

参考文献

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