タマミズキ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
タマミズキ
落葉後の赤い実をつけたタマミズキの雌株、尾張白山、愛知県小牧市にて、2022年2月11日撮影
落葉後の赤い実をつけたタマミズキの雌株
2022年2月、尾張白山愛知県小牧市にて
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : バラ亜綱 Rosidae
: ニシキギ目 Celastrales
: モチノキ科 Aquifoliaceae
: モチノキ属 Ilex
: タマミズキ I. micrococca
学名
Ilex micrococca Maxim.[2]
和名
タマミズキ
品種

キミノタマミズキ I. micrococca Maxim. f. luteocarpa H.Ohba et S.Akiyama[3]

タマミズキ(玉水木、学名:Ilex micrococca Maxim.[2])とは、モチノキ科モチノキ属分類される落葉高木の1[4][5][6][7]和名は玉の果実が美しく、全体の樹形がミズキに似ている[7]ことに由来する[8][6]

特徴[編集]

非常に生長が早く、高さ10-15 mになる[4]。しばしば大木となる[9]。全株無毛[6]樹皮は灰褐色で[4]皮目が目立つ[5]。本年には鈍い稜がある[5]。枝に丸い皮目があり、冬芽は長さ1 mmほどの低い半球形で小さくあまり目立たない[5]。芽鱗は4-6個、葉痕は半球形で、維管束痕は1個[5]互生し、長さ7-13 cm、幅3-6 cmの楕円形または卵状長楕円形で、最大幅は基部寄り[7]洋紙質でなめらかで[6]薄く、先は急に尖り、縁には波状の細かい鋸歯があり[4][5]一見全縁に見え[7]サクラ類に似た形[8][7]。両面とも無毛[5][7]葉柄は長さ1.5-2 cmで、紅色を帯びることが多い[8]葉脈は表面でへこみ、裏面に隆起する[4]

雌雄異株[4][8][6]。本年枝の葉腋から長さ2 cmほどの複散形花序を出し、緑白色のを多数つける[8]。花は直径2-3 mm、花弁は5-8個、長楕円形で長さ約1.5 mm[8]片は5-8個[8]。雄花には完全な雄しべが5-6個と退化した雌しべがある[8]。雌花には雌しべと退化した雄しべがあり、子房は球形、花柱はほとんどなく、柱頭は1個[8]。花期は5-6月[4]。果実は核果で、枝上に群がって[6]密につき、直径約3 mmの球形で10-11月赤く熟す[4][8]。なかに核が6-8個入っている[8]。核は三角状楕円形で長さ約2 mm、表面はなめらか、なかの種子は1個[8]。実は冬も残り、よく目立つ[7]

分布と生育環境[編集]

低山の生育するタマミズキ、赤い実をつけた木は雌株、その周辺の枯木は雄株、金華山岐阜県)にて

中国南部、海南島台湾ミャンマー北部、半島マレーシアベトナム日本に分布する[1][4][5][6]

日本では本州静岡県福井県以西)、四国九州に分布する[5]。やや稀な[7]珍しい樹木であるが、西日本では点々と自生している[5]

暖温帯の低山地[4]、沿海地の常緑樹林[5]照葉樹林内に生育する[7]

分類[編集]

黄色の実をつける品種として、キミノタマミズキ(黄実玉水木:学名:Ilex micrococca Maxim. f. luteocarpa H.Ohba et S.Akiyama[3])が知られている[9]

利用[編集]

生垣樹木などに園芸利用されている。

種の保全状況評価[編集]

国際自然保護連合レッドリストで低危険種(LC)の指定を受けている[1]。日本では環境省による国レベルのレッドリスト受けていないが[10]、以下の都道府県のレッドリストで指定を受けている。

脚注[編集]

  1. ^ a b c Ye, J.; Qin, h.; Botanic Gardens Conservation International (BGCI).; IUCN SSC Global Tree Specialist Group. (2019). Ilex micrococca (英語). IUCN Red List of Threatened Species 2019: e.T147378084A147614210. doi:10.2305/IUCN.UK.2019-2.RLTS.T147378084A147614210.en. https://www.iucnredlist.org/species/147378084/147614210 2023年12月21日閲覧。. 
  2. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2012年5月12日). “タマミズキ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年12月21日閲覧。
  3. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2012年5月12日). “キミノタマミズキ”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年12月21日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j 林弥栄 (2011), p. 405
  5. ^ a b c d e f g h i j k 太田ほか (2000), p. 462
  6. ^ a b c d e f g 牧野・本田 (1982), p. 297
  7. ^ a b c d e f g h i 田中 (2008), p. 662
  8. ^ a b c d e f g h i j k l 太田ほか (2000), p. 463
  9. ^ a b タマミズキ”. 広島大学デジタル博物館. 2023年12月21日閲覧。
  10. ^ 環境省レッドリスト2020の公表について”. 環境省 (2020年3月27日). 2023年12月21日閲覧。
  11. ^ 改訂版 福井県の絶滅のおそれのある野生動植物(2016)・維管束植物” (PDF). 福井県. pp. 351. 2023年12月21日閲覧。
  12. ^ >維管束植物・藻類(平成27年度改訂)、鹿児島県の絶滅のおそれのある野生植物について・選定種一覧(植物)” (PDF). 鹿児島県. pp. 5. 2023年12月21日閲覧。
  13. ^ レッドデータブックくまもと2019-熊本県の絶滅のおそれのある野生動植物・維管束植物・コケ植物” (PDF). 熊本県. pp. 194. 2023年12月21日閲覧。

参考文献[編集]

  • 太田和夫、勝山輝男、高橋秀男、茂木透他『樹に咲く花―離弁花〈2〉』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑4〉、2000年10月1日。ISBN 978-4635070041 
  • 田中啓幾『落葉樹の葉』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑12〉、2008年6月6日。ISBN 978-4635070249 
  • 林弥栄『日本の樹木』(増補改訂新版)山と溪谷社〈山溪カラー名鑑〉、2011年11月30日。ISBN 978-4635090438 
  • 牧野富太郎、本田正次『原色牧野植物大図鑑北隆館、1982年7月。ASIN B000J6X3ZENCID BN00811290全国書誌番号:85032603https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001728467-00 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]