セルパン
セルパン(フランス語: serpent)は、金管楽器の一種である。19世紀半ば以降は起用されることがほぼなく、古楽器の一つと見なされる。
解説[編集]
セルパンはマウスピースコルネット族の低音・金管楽器である。ホルンボステル (Hornbostel) とザックス (Sachs) は、その楽器分類表で、トランペットの傍にこのセルパンを置いている。蛇に似た形に曲げられた長い円錐形をしており、これが名前の由来である(元々serpentはフランス語で蛇の意)。金管楽器に一般的なバルブではなく木管楽器のような音孔を持つ。木製で素材は主にウォールナット(胡桃)が使われていた。
早期の型ではリコーダーのように音孔にはキーが付けられていなかったが、後のものでは、クラリネットのようなキーを備えている。音域は楽器や奏者に応じて異なるが、概して中央ハ音の上下両オクターヴに及ぶ。しかしながら、18世紀以来のいくつかの文書は、この楽器は中央ハ音の上、2オクターヴ以上の音にまで届くとしている。また、中央ハの2オクターヴ下まで及ぶものもあり、チューバ発明以前は金管の低音楽器としても使用された。
歴史[編集]
セルパンは当初、単旋律聖歌(グレゴリオ聖歌)の音量の補強に用いられたと考えられる。18世紀の中頃、この楽器は軍楽隊で使われ始めた。また、純音楽の分野でも、メンデルスゾーンが交響曲第5番において、金管楽器の低音の補強のために使用している。
しかし19世紀になると、セルパンはオフィクレイドに取って代わられ、さらにオフィクレイドはバルブ化された金管楽器であるチューバ・ユーフォニアムによって取って代わられた。以降、このセルパンやオフィクレイドが実演に用いられることはほとんどなくなったが、多くの原型がいまだ現存しており、古楽の演奏会などで使用されることがある。
『題名のない音楽会』(2010年10月24日放送)で、「絶滅危惧の楽器」として紹介された。
派生楽器[編集]
セルパンの変種には、バス・ホルン (bass horn) またはロシアン・バスーン (russian bassoon) と呼ばれる、本質的に同じではあるが、元々の曲線的な型状よりも単純な、現代式のファゴットのように折り曲げられた管で構成された形状の楽器がある。
より新しい変種には、バスホルンとオフィクレイド (ophicleide) とを掛け合わせたオフィモノクレイド (ophimonocleide) がある。これは一般的でなく、今日ではいくつかの例があるのみである。
また今日では、より大型の「アナコンダ」 (anaconda) という冗談めいた名前を持つ楽器も少ないながら製作されている。
日本のセルパン奏者[編集]
- 橋本晋哉
- 長井和明(ロバの音楽座)
- 東金晃生