ステンドグラスと鳥たち

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ステンドグラスと鳥たち』(ステンドグラスととりたち、フランス語: Un vitrail et des oiseaux)は、オリヴィエ・メシアンが1987年[注 1]に作曲したピアノ独奏と小オーケストラのための楽曲。演奏時間は約10分[2]

作曲の経緯[編集]

アンサンブル・アンテルコンタンポランが演奏するための曲をピエール・ブーレーズから依頼されたのに答えて作曲された[3]。ブーレーズから最初に話があったのはオペラ『アッシジの聖フランチェスコ』初演から間もない1984年1月であったが、曲の構想がまとまらず、すっかり自信を失ったメシアンは1985年秋には契約破棄をブーレーズに打診するほどだった[4]。メシアンが自信を取りもどして実際の作曲を進めたのは1987年になってからだった[5]

曲は1988年11月26日、パリシャンゼリゼ劇場において、ピエール・ブーレーズ指揮のアンサンブル・アンテルコンタンポランとイヴォンヌ・ロリオのピアノによって初演された[6]。この演奏会はメシアンの生誕80年を記念するもので、ほかに『7つの俳諧』・『天の都市の色彩』・『異国の鳥たち』が演奏された[7]

楽器編成[編集]

フルート3、アルトフルートオーボエ3、コーラングレ小クラリネットクラリネット3、バスクラリネットファゴット3、トランペット、独奏ピアノ鍵盤打楽器3(シロフォンシロリンバマリンバ)、打楽器5(1:チューブラーベル、2:トライアングル、3:ウッドブロック木魚6、4:小シンバルサスペンデッドシンバル、5:タムタム2)[2]

構成[編集]

鍵盤打楽器によるサヨナキドリが短い序奏を奏でる。

トランペットとチューブラーベルが非常にゆっくりしたコラールを演奏し、ついで鳥の歌(鍵盤打楽器によるズアオアトリと木管楽器によるズグロムシクイ英語版)、ピアノ・フルート・クラリネットによるカデンツァが順に出現する。以上のひとまとまりが3回くり返されるが、カデンツァのフルートとクラリネットの本数は1回めは1本、2回めは2本、3回めは3本と増えていき、長さも複雑さも増していく。カデンツァはピアノがニワムシクイ英語版、フルートがクロウタドリ・ズグロムシクイ・ニワムシクイ、クラリネットがニワムシクイ・シラヒゲムシクイ英語版ヨーロッパコマドリの歌を演奏する。カデンツァの各演奏者は指揮者の指示によって入り、他の演奏者とテンポを揃えずに自由に演奏する。この技法は『アッシジの聖フランチェスコ』で導入され、『彼方の閃光…』でも使われた[8]

鍵盤打楽器によるサヨナキドリの長い歌に続いて、コラールが全楽器によって再び出現し、輝かしく終わる。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ メシアン本人の解説では1986年の作曲としているが、ヒルとシメオネによると1987年[1]

出典[編集]

参考文献[編集]

  • ピーター・ヒル、ナイジェル・シメオネ 著、藤田茂 訳『伝記 オリヴィエ・メシアン(下)音楽に生きた信仰者』音楽之友社、2020年。ISBN 9784276226029